次世代AIコンタクトセンターとは
テクノロジーの進化とともに、コンタクトセンターの役割や対応方法はより複雑なものになってきています。
顧客からの電話問い合わせに対応する組織として誕生したコンタクトセンターですが、今では商品・サービスの品質や購入前後の体験を創出し、顧客満足度を向上させて売上に貢献する部門として、企業にとって重要な位置を占めるようになりました。
SMSやメール、ビデオ通話などのチャネルを跨いだ高品質な対応が求められ、オペレーターの負担が増加しています。ほかにも少子化や高離職率による人手不足、人材育成の難しさなど、コンタクトセンターはさまざまな課題を抱えています。
そういった問題を解決するためのものとして注目を集めているのが「次世代AIコンタクトセンター」です。次世代型のコンタクトセンターではオムニチャネル化はもちろん、チャネルごとの応対品質の維持や在宅などリモート環境での運用、さらにAIによる業務サポートやオペレータの育成が可能になります。
コンタクトセンターの歴史
1980年代、顧客から製品に関する相談や苦情などの問い合わせが電話を介して寄せられるようになったことから、企業は対応の効率化を図るために電話窓口の一本化を開始しました。これが「コールセンター」の始まりです。
それからコールセンターは、サポートセンターやお客様窓口、カスタマーセンターなどのInbound Callを主体とした用途から、電話セールスやテレアポイントといったOutbound Callを主体とする用途まで、多岐にわたる役割を持つようになりました。
1990年代CTI(Computer Telephony Integration)の誕生による技術革新
1990年代からはCTIが導入され、PBX(構内交換機)のデジタル化によりコンピューターとの連携が可能に。
これまで手作業で行われていたものがシステム化され、コールセンターは大きな技術革新を迎えます。
システム化された主な機能
- ACD(Automatic Call Distributor):
着信を振り分ける機能 - 発信者番号による顧客情報の検索:
ナンバーディスプレイ機能を用いた発信者番号による顧客情報の検索 - IVR(Interacitive Voice Response):
自動音声応答など
1990年代後半CRM(Customer Relationship Management)の登場
1990年代後半から2000年代にかけてCRMが登場したことで、コールセンターの立ち位置も大きく変わります。これまでは問い合わせやクレームへの電話応対業務が主な役割であったのが、「顧客を正確に理解して良好な関係を作り上げていく」という顧客中心のビジネス展開により、利益の最大化を目指す窓口としての役割を担うようになりました。
2010年代クラウドPBXの登場
2010年代にはクラウドPBXが登場します。それまでのオンプレミスPBXは、機器購入費・設置費・人件費など大きなコストがかかるという課題を抱えていました。しかしクラウドPBXは、インターネットの活用により場所を選ばずに利用できることから、その懸念を解消できます。これにより、多くの企業が気軽にPBXの導入を進められるようになりました。
1990年代からの技術革新を経てCRMが登場したことにより、コールセンターが担う主な役割は「問い合わせやクレームへの電話応対」から「顧客を正確に理解して良好な関係を作る、企業利益の最大化を目指す窓口」となっていきました。
コールセンターからコンタクトセンターへ
これまで顧客と"電話"で応対する窓口として機能していたコールセンターは、最近ではコミュニケーション手段の多様化に伴い、さまざまなチャネルで顧客対応を行うコンタクトセンターへと変化してきています。
Point!
近年、インターネットを活用した情報収集の機会が増加しており、顧客と企業はいつでもどこでも接点を持つことが可能となりました。このため商品やサービスの品質だけでなく、購入前後の体験などのプロセスにも価値を求められるようになっています。
コンタクトセンターは以前とは異なり、コストセンターではなくプロフィットセンターとして捉えるべきだと考えます。顧客対応を担当して、企業の顔として重要な役割を果たすこの部門は、顧客からのフィードバックを収集し社内で共有したり、新たな顧客ニーズを把握して商品やサービスを開発・改善したりする、企業の売上や収益に貢献できる可能性があります。
国内におけるコンタクトセンターの現状と課題
コンタクトセンターは顧客接点において重要な部門と言えるものになりました。その役割の大きさゆえの課題も少なくはありません。
高離職率が影響する人手不足や人材育成の影響
少子高齢化の影響により、製品知識やサービス知識、オペレーションに必要なスキルを持つ人材の確保が難しくなっています。一方で消費者のニーズの多様化に伴ってオペレーター業務はますます複雑化しており、在籍するオペレーターに多大な業務負担とストレスがかかってしまっています。この結果、離職率が上昇しています。
こうした人手不足や高い離職率の影響により、人材教育の体制を整備することが難しい状況となっています。オペレーター育成のための充分な時間を作れないのはもちろん、そもそも教育を担当するスーパーバイザーを育成すること自体も困難です。さらに24時間対応のコンタクトセンターを運用する場合、各時間帯の問い合わせ件数の違いを考慮しながら人材を確保・配置する必要があるため、よりいっそう環境整備が困難になります。
通話時間と業務量
コンタクトセンターを運営する際、重要な業績評価指標(KPI)のほとんどは、顧客対応にかかる時間全体に設定されています。
現在、国内の平均通話時間は約7分(着信1件あたり)、後処理時間を含めると10分以上かかります。この状況では、1時間あたりの対応件数はオペレーター1人あたり6件となります。 もちろんオペレーターが対応に時間をかけるほど消費者の満足度は向上しますが、その分だけ待ち呼や放棄呼が発生するため、総合的な顧客満足度は低下してしまいます。
確保するべき対応時間と求められる業務量の間でオペレーターが板挟みになっているのも、コンタクトセンターが抱える課題のひとつです。
待ち呼・放棄呼の増加
問い合わせた際の待ち時間(待ち呼)が長引くと、顧客は我慢できずに電話を切ってしまい、「放棄呼」が発生してしまいます。放棄呼により「対応品質が低い」という印象を与えてしまうと、顧客満足度の低下につながる恐れがあります。コンタクトセンターのテクノロジーは日々進化していますが、放棄呼率は改善されておらず、今なお半数以上の企業が10%以上の放棄呼率を抱えています。
待ち呼や放棄呼を防止するには人員を増やす必要がありますが、人材確保の課題だけでなく、採用費や通信費の増加も懸念されます。そのため、コンタクトセンター業界において解決が難しい大きな問題となっています。
在宅勤務やテレワークによるセキュリティ
これまでにBCP対策や繁忙期の雇用対策など、在宅勤務やテレワークでのコンタクトセンター運営が検討されてきましたが、多くの企業が導入に至っていませんでした。しかしコロナ禍により、在宅勤務やテレワークにおけるセキュリティリスクや対応品質の迅速な検討が必要とされました。今後のパンデミックや天災に備え、企業はハイブリッドな環境を構築し、コンタクトセンターを物理的に離れた場所でも運用できる体制を整える必要があります。
繁忙期と閑散期の業務量の違い
コンタクトセンター業務は繁閑差が大きくなりがちです。特にInbound Call型の業務では呼量を調整することが難しいため、コンタクトセンター設備の柔軟さも必要とされます。
複雑化するシステム
電話を中心としたコンタクトセンターにおいても、リアルタイムの音声認識、感情分析、FAQの自動表示、会話の要約、そしてチャットとの組み合わせなど、システムが肥大化して1席あたりのコストが上昇しています。これらの要素が複雑に連携しているため、保守運用もますます困難になっています。
社内の情報連携
顧客のニーズを収集することもコンタクトセンターの大切な役割です。収集した情報を適切に活用し、企業の利益を最大化するためにも、社内での情報共有は重要な課題となります。
セールス部門による丁寧なアフターフォローや企画・開発部門による製品改善など、企業内部で連携し、顧客のニーズに応えることで顧客満足度を向上させることが期待されます。企業の利益向上にもつながるでしょう。
コンタクトセンターに求められている4つの進化
課題解決のために、コンタクトセンターにはさらなる進化が求められます。
- 生成AIの活用
- 生成AIでの最適化
- アフターコロナにおけるコンタクトセンターの運用とセキュリティ
- これからの時代に合ったコンタクトセンターの運営
01生成AIの活用
生成AIが登場したことで、自然言語処理テクノロジーがコンタクトセンター業界へも大きな影響をもたらすと考えられます。
コンタクトセンターのトレンドとしても、「FAQやナレッジの自動生成」「チャットボットやボイスボットによる応対」に続き、生成AIによる自動化やテキストマイニングによるVOC分析、音声認識など、自然言語処理テクノロジーの活用意識が高まってきています。
FAQの
自動生成
会話要約
チャットbot
対応
メール対応
文章の生成
オペレーター
育成
コールセンターにおける興味・関心のあるソリューション
コールセンターにおける生成AIの活用用途ランキング
企業の生成AIへの関心は高く、すでにオペレーションに取り入れている企業も少なくありません。2024年以降も生成AIの普及が本格的に進むと思われます。
02生成AIでの最適化
生成AIの最適化を行うことで、より効果的な業務の改善を可能にします。
生成AIによるFAQ・ナレッジの生成
消費者の問い合わせ内容やオペレーターの回答内容をもとに生成AIが自動的に問い合わせのデータを収集し、分類・作成・効果検証を行うことで、消費者目線でわかりやすく高精度なFAQを自動生成できます。大量の項目があっても作成時間や手間を削減できるため、オペレーターの負担軽減にもつながります。
生成AIによる顧客対応
チャットボットやボイスボットなど、自動化されたソリューションは数多く存在し、すでに多くの企業が導入しています。しかし生成AIは、従来のチャットボットやボイスボットより複雑な処理を可能にします。
これまでのチャットボットやボイスボットが行っていた予約状況や営業時間の案内、在庫確認などの基本的な作業に加えて、生成AIは消費者の意図を解釈し、最適な回答を提供する能力を持っています。たとえば「〇〇はありますか?」という質問に対して「商品を注文したい」という意図を読み取り、購入画面に誘導するといったことが可能です。
生成AIによる対応範囲の拡大により、人材配置や営業時間の最適化などの効率化が図れます。
生成AIによるオペレーター支援
生成AIはテキストデータだけでなく、音声や画像などのデータを認識・分析する能力に長けています。たとえば音声認識機能を活用して消費者を特定したり、感情の起伏を読み取ったりすることが可能です。
さらに、顧客が提供したスクリーンショットや写真を自動認識して、問い合わせ対象の商品を特定したり、商品の故障状況を分析したりすることもできます。
必要な情報の分析を生成AIに任せることで、オペレーターの業務負担を軽減し、空いた時間を消費者との対応に最大限活用できるようになります。さらに、対応内容をリアルタイムでテキスト化したり、テキストデータを自動要約したりすることも可能です。
これにより対応時の支援はもちろん、後処理業務の時間や負担も軽減できます。通話品質を維持しながら待ち呼や放棄呼を減らすことが可能です。
03アフターコロナにおけるコンタクトセンターの運用とセキュリティ
コロナ禍を経た今、将来起きうる有事に備えてコンタクトセンターをクラウド化する必要性が強まってきています。クラウド型のPBXやCTIを活用することで、場所に左右されないコンタクトセンターの運用が可能となります。
一方で在宅勤務のようなオフィス外でコンタクトセンターを運用する場合、セキュリティ面も意識する必要があります。
「ルール」「セキュリティ意識」「環境の構築」の観点での対策が必要です。
ルール=在宅・テレワーク用のルールの策定
オフィス内を想定したセキュリティルールでは、在宅やテレワーク環境において充分なセキュリティを担保できません。
在宅やテレワーク用の新たなセキュリティ基準を定める必要があります。
人=セキュリティ意識
いくらルールや設備を設けても、オペレーターのセキュリティ意識が低ければ充分な効果を発揮できません。在宅やテレワークでコンタクトセンターを運用するには、教育や情報共有によるセキュリティ意識の向上も大切です。
技術=環境の構築
ルールや人で対応しきれない部分は、環境による対策も必要になります。ウイルス対策やデータの機密性などについて、技術や環境構築を用いて事前に準備しておくことが必要です。またシステムの管理方法についても考慮しておきましょう。たとえば、さまざまなシステムにまたがって管理するのではなく、CRMやSFAなどに個人情報を一元管理することで漏洩する可能性のある箇所を限定できます。これにより、漏洩対策も行いやすくなるでしょう。
04これからの時代に合ったコンタクトセンターの運営
問い合わせの多様化やテクノロジーの進化に伴い、消費者からコンタクトセンターへのニーズも高まっています。
いまや9割を超える世帯がスマートフォンを保有し、1日あたり5時間ほど利用しています。さらにスマートフォンを使っているユーザーの9割以上が、日常的にスマートフォンアプリを利用しています。もはやスマートフォンは現代人の生活に必須の存在であり、コミュニケーションの手段としても、スマートフォンを利用することが大半であると言えます。
つまり30年以上の歴史を持つコールセンター/コンタクトセンターも、電話を中心とした従来の仕組みから、スマートフォンファーストなコンタクトセンターへシフトすることが必要になってきているのです。
サービスのご紹介
AIによる顧客対応やオペレーターを支援するコンタクトセンター
- 自社アプリ運用企業様
- 大企業・中堅企業
モバイルファースト時代のCX/EXを向上できる
次世代のコンタクトセンターソリューション
UJETのモバイルSDKをアプリに組み込むことで、アプリからコンタクトセンターへ発信できるほか、スマートフォンアプリが持つ生体認証や位置情報、カメラなどの機能を活用できます。オペレーターとの通話中でもシームレスに消費者の状況・情報を画像や動画によって連携可能です。
またAIによるチャットボットやボイスボットによる自動応答、通話内容のリアルタイムな文字起こしや感情分析、自動要約が可能です。これによりエージェントの平均対応時間(AHT)を大幅に削減できます。
AIによるオペレーターの育成や通話後の処理の削減が可能なコールセンター
- 電話応対中心の企業様
- 中小企業
電話営業や顧客応対を可視化する
音声解析AI搭載型のクラウドIP電話
電話営業や顧客応対を自動録音してAIが文字起こし、解析・可視化します。これにより顧客と担当者が「何を」「どのように」話しているか分からない、というブラックボックス問題を解消し、商談獲得率・成約率の向上やセルフコーチングを後押しします。
また受電・架電のリモートワークにも対応。在宅勤務でもオペレーターの活動量を可視化して、発信数や着信数などを個人ごとに正確に把握できるようにします。