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混同されがちな「SDK」と「API」は何が違う?初心者にもわかりやすく解説

公開日:2022.07.07

更新日:2024.12.03

KDDIウェブコミュニケーションズ

混同されがちな「SDK」と「API」は何が違う?初心者にもわかりやすく解説

アプリケーションの開発現場で、「SDK」や「API」といった用語を耳にしたことはありませんか?

これらはどちらも他社サービスの機能を利用したり、その機能を自社サービスと連携させたりする場面で使用するツールです。同じような用途で利用されるため混同されがちですが、それぞれ異なる特徴を持っています。

この記事では「そもそもSDKがどのようなツールであるか」を紹介するとともに、開発の効率化に役立つ「SDK」や「API」について、それぞれの意味や違いを詳しく解説します。

SDKとは

SDKとは

SDKは「Software Development Kit」の略称で、ソフトウェアを開発する際に必要なプログラムやAPI・文書・サンプルなどをまとめてパッケージ化したものです。日本語ではソフトウェア開発キットとも呼ばれています。主にWEBサービスやアプリケーションソフトウェアの開発場面において利用されています。

これまでWebサービスやアプリケーションを開発する際には、開発者が自分で一からソースコードを書いたりプログラムを構築したりする必要がありました。そのため開発には高度なプログラミング知識が必要なうえ、作業にも膨大な時間がかかっており、開発者の大きな負担となっていました。

一方でSDKにはサンプルコードやドキュメント、APIやライブラリなど、「Webサイトやアプリケーションに特定の動作をさせる」ためのツールが内包されています。これにより開発者は、ソースコードを構築する工数を削減したうえで、欲しい機能を簡単に自社サービスに実装できるのです。

SDKを提供している企業は、自社のアプリケーションを容易に使ってもらうためにSDKを配布しています。たとえば世界中で利用されているAmazon Web Serviceでも、希望する開発言語やプラットフォームでAWSにアクセスして管理できるよう、9種類のSDKを用意しています。

APIとは

APIの仕組み

APIは「Application Programming Interface」の略称で、ソフトウェアやサービスと、その機能を使いたい開発者をつなげる窓口のような役割を担います。

ソフトウェアやサービスを利用して欲しい企業側は、APIを通じて利用者が自社の製品を導入する環境を整えられます。そして利用者にとっては、開発中のサービスに他社の機能を簡単に埋め込むことができるようになります。

作りたい機能のAPIを他社から取得すれば、その部分は改めて自社で開発をおこなう必要がありません。効率性を高め、短期間で完成度の高い製品を提供できるでしょう。

APIについて詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事もご参照ください。

SDKとAPIは何が違うの?

SDKとAPIは何が違うの?

SDKとAPIはどちらもアプリケーション同士を連携させるために利用されるため、同じものだと考えてしまっている人も多いようです。しかしSDKとAPIは、根本的に異なるものです。

APIは前述したように、既存のサービスやソフトウェアの一部を公開・提供することで、さまざまなサービスやアプリケーションとの連携を促すものです。あくまでインターフェースを提供しているだけにとどまるため、開発時に直感的に利用しづらいことがあります。正常なレスポンスを受けるためには、リクエストの内容を利用者側できちんと作成する必要があります。

これに対して、SDKは開発キットとして提供されています。SDKの中にはAPIへの問い合わせデータを作成したり、データフォーマットをチェックしたりするなど、開発を補助してくれるツールなども含まれます。またSDKを利用するためのドキュメントやサンプルも付随しており、利用者が開発を進めやすいよう総合的にサポートしてくれます。SDKに従って開発することで、難しい機能でもスムーズに実装できるのです。

SDKには何が入っている?

SDKには何が入っている?

前述したように、SDKの中には、開発をサポートしてくれるさまざまなツールが含まれています。ここでは代表的な内容について紹介します。

コンパイラや実行環境

SDKを利用するためには、プログラムの作成後にコンパイラを使ってプログラムをコンパイルしたり、専用の実行環境を導入したりする必要があります。

デバッガ

プログラムの中に記述ミスなどの不具合(=バグ)が含まれている場合、正常に動きません。デバッガはそのような不具合の原因を探して、原因を取り除くサポートをしてくれるツールのことを言います。

動かしている最中のプログラムを一時的に停止させたり、実行途中のデータを書き出したりなど、作業をおこなう上で役に立つ機能を提供しています。

API

プログラムを利用するためのAPIが配布されるケースもあります。利用するOSやプログラミング言語に合わせて、環境ごとに異なるバージョンのファイルが配布されることが多いです。

これらのほかにも、SDKのマニュアルを含んだドキュメントやライブラリ、OSに組み込むためのドライバなどを含めて、1つのSDKとして公開されています。

SDKとAPI、ライブラリの違いは?

SDKとAPI、ライブラリの違いは?

プログラム開発の場面で、もうひとつ、SDKやAPIに近い用語として頻出するのが「ライブラリ」です。これらはそれぞれ密接に関わっているものですが、それぞれ違った特徴を持っています。

続いてはSDKとAPI、ライブラリの特徴を利用者の観点からそれぞれ見てみましょう。

SDK

SDKは、APIなどのツールを使うために必要なパーツや補助ツール、デバッグツールなどをまとめた開発キットです。特定の目的を持ったプログラムの開発に役立つツールがパッケージにまとめられています。

API

APIは、提供元からアプリケーション機能の一部として与えられるものです。利用者がAPIに対して決められた形式で問い合わせすると、提供元の一部機能を使った結果が返されるという取り決めがあります。

SDKのように開発のためのツールは用意されていないため、APIへの問い合わせ内容は利用者自身で適切に作成する必要があります。

ライブラリ

ライブラリは、特定のアプリケーション等には依存しない、汎用性があるプログラミングのパーツをまとめたツールセットのような位置付けです。

例えば「ファイルにログを残す」「フォルダから特定のファイルを探し出す」といったプログラミング中によく使われる処理をまとめておくことで、利用者は面倒な作業を簡単に処理できます。

ライブラリは特定の機能を提供していることが多いため、さまざまなプログラムに組み込まれて利用されます。

SDKとAPIはどう使い分ける?

SDKとAPIはどう使い分ける?

SDKもAPIも、どちらも変わらず開発に役立てられます。明確な使い分けの基準があるわけではありません。それぞれの特徴や違いをよく比較し、ご自身の開発環境・開発状況にあったツールを選ぶとよいでしょう。

たとえばSDKは一般的に各プログラミング言語で提供されていますが、利用したい言語のSDKが提供されていない場合は、APIを利用して開発することもあります。APIはWEBの通信規約にのっとって提供されているため、プログラミング言語に依存せずに利用できるからです。

基本的に開発に組み込む際はSDKを利用しますが、希望する言語のものが用意されていない場合にはAPIを利用するといいでしょう。

また、すでにシステムができている場合はSDKを組み込めないため、外部の機能を利用したい場合はAPIで連携させる必要があります。その他にも外部に公開しない、内部でのシステム連携の際は、開発コストの観点からAPIでの連携がおこなわれます。

SDKのメリット

SDKのメリット

続いては、SDKを使うことにどのようなメリットがあるかを具体的に見ていきましょう。

メリット①:Web開発者の負担を軽減する

SDKの最大のメリットは、「Webサービスやアプリケーションの開発を効率化できる」ことです。

先述の通り、SDKにはライブラリやドキュメント、仕様書など開発に必要なさまざまなツールが入っています。これを利用することで、開発者は必要な情報を集める手間も、一からコードを書いて構築する手間も省けるのです。SDKが提供する機能を、簡単かつスムーズに自社サービスへ組み込めます。

自社で機能を作りこむ場合に比べて、大幅に開発コストを削減できるでしょう。

メリット②:サイトの読み込み速度が遅くなるのを防ぐ

データが重くなったり非効率な設計になったりすることでサイトの読み込み速度が落ちると、ユーザーからの満足度が下がり、離脱率や機会損失につながってしまいます。

しかしSDKで提供されている機能には多くの使用実績があります。処理の内容が洗練されているほか、セキュリティに配慮した強固な作りになっていることが期待できます。

自社製作と比較して無駄な処理を減らせるケースも多いため、サイトの読み込み速度が遅くなるのを防げるでしょう。

メリット③:さまざまな機能を一気に実装できる

多くのSDKでは、データの登録や読み込み、一覧表示するためのツールなど、複数のさまざまな機能がパッケージ化されています。これらの機能を活用すれば、自社のサービスに対して多くの機能を一括で追加することも可能です。

たとえばインターネット通販のサービスサイトを作るとして、「ユーザー層の分析をおこないたい」「会員制にしたいから登録・認証機能をつけたい」「決済機能が欲しい」「エラー検知を自動でできるようにしたい」など、さまざまなニーズが生まれます。このとき欲しい機能がまとまっているSDKを利用すれば、一つずつバラバラに追加する場合と比べて、効率的にサイト開発をおこなうことができます。

SDKの種類は豊富にあるため、複数のものを併用したり機能の豊富なタイプを利用することで、さらに開発の幅を広げられます。フル活用できれば、実装可能な機能が増えるだけでなく、短縮できた時間を使ってさらなる機能追加を検討する余裕も生まれるでしょう。

SDKの提供側にもメリットが!

SDKを開発して公開することは、提供側の企業にもメリットがあります。

最も大きなメリットは、自社のサービスを利用してもらう敷居が低くなることです。初めてサービスを導入する開発者にもわかりやすいドキュメントを整備し、迷うことなく機能を追加できるライブラリを準備すれば、長期的に利用される可能性が高まります。

また多くの開発者に取り入れてもらうことで、自社のサービスに不足している機能について意見をもらうことができたり、不具合を見つけてもらえたりする可能性があります。品質向上につなげることもできるのです。

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音声通話、メール、チャット、SMS、SNS(WhatsApp)などを利用したマルチチャネルに対応しており、消費者のニーズに合わせた自然なコミュニケーションを行えます。また自社で展開しているアプリにモバイルSDKを組み込むことで、スマートフォン側の動画/静止画を共有できるほか、スマートフォンが持つ生体認証機能や位置情報/OS情報なども取得・活用できます。これにより効率的な顧客応対が実現可能です。

オムニチャネルを構築することで顧客とオペレーターとの自然なコミュニケーションが可能になり、顧客満足度の向上に貢献します。またGoogleが提供するAI機能を搭載しており、オペレーターへのルーティングや問い合わせ内容の要約を自動化できます。これによりオペレーターの負担を軽減することも可能です。

まとめ

この記事では、アプリケーション同士の連携に利用されるSDKやAPIについて、それぞれの特徴と違いについて詳しく紹介しました。 

SDKとAPIは、どちらも同じようなシーンで用いられるため、混同されることも少なくありません。しかし、詳しく見てみると、それぞれ異なるツールであるとわかるでしょう。 

ツールごとの特徴を理解し、どちらがこれから開発するアプリケーションに向いているか、検討するときの参考にしてみてください。

執筆者情報

KDDIウェブコミュニケーションズ
KDDIウェブコミュニケーションズ
2013年に、日本ではまだ黎明期であったCPaaSの取り扱いを開始。CPaaSやCCaaSなどコミュニケーションのDXの専門家として、「コミュニケーションの多様性」を活用するための記事をお届けします。


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