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コールセンター業務に欠かせない「自動着信呼分配装置(ACD)」とは?

公開日:2022.02.28

更新日:2024.07.31

KDDIウェブコミュニケーションズ

コールセンター業務に欠かせない「自動着信呼分配装置(ACD)」とは?

日々多くの問い合わせを受けているコールセンターでは、同じ時間帯に複数の着信があることが当たり前です。それらの着信を複数名のオペレーターで分担して対応していますが、この「同時にかかってくる着信をオペレーターに振り分ける」機能を自動着信呼分配装置(ACD)と呼びます。

ACDはコールセンターの業務に必要不可欠なシステムです。しかし名前を聞いたことはあっても、具体的にどのように振り分けられているのかは知らないという方も多いのではないでしょうか。

本記事ではACDの基本機能や、利用することのメリットについて詳しくご紹介していきます。

自動着信呼分配装置(ACD)とは?

自動着信呼分配装置(ACD)とは?

自動着信呼分配装置(ACD)は、顧客からコールセンターにかかってきた電話を、あらかじめ設定されたルールに沿ってオペレーターに分配するシステムです。

コールセンターには日々たくさんの顧客から着信があります。ACDは各オペレーターの対応状況や業務スキルなどの基準をもとに、これらの着信を効率よく振り分けています。

コールセンターの規模が大きくなるにつれて、対応する電話の件数もオペレーターの人数も多くなります。ACDを利用することで業務効率化が実現でき、サービスレベルや顧客満足度の向上につながるため、多くのコールセンターで必要不可欠な機能とされています。

自動着信呼分配装置(ACD)でできること

自動着信呼分配装置(ACD)でできること

ACDには着信の効率的な管理を目的とした機能が数多くあります。ここではACDの代表的な機能について解説します。

待ち呼(あふれ呼)ガイダンス

すべてのオペレーターが別件の対応中であるために応答できず、対応待ちとなっている着信を待ち呼(あふれ呼)といいます。ACDではこの待ち呼に対して、音声アナウンスを流すことができます。

企業のコールセンターへ電話をかけたときに、「ただいま電話が大変混みあっております。つながるまでしばらくお待ちください」というような案内を聞いたことがある人も多いでしょう。これが待ち呼ガイダンスです。

単にコール音や保留音を流し続けるだけでは、状況が伝わらないため、「ちゃんとつながるの?」「いつまで待たせるの?」と顧客に不安やストレスを与えてしまいます。音声ガイダンスで電話が混雑していることを伝えるだけでも、相手の気持ちを落ち着かせる上で効果的なのです。

待ち呼(あふれ呼)に対する詳細設定

先述の待ち呼ガイダンスは、流す内容を自由に設定できます。そのため待ち呼に対して単純に「オペレーターへつながるまで待つ」ようにお願いするだけでなく、時間をおいてかけ直すように誘導するなど、さまざまなを対応を設定しておけます。

  • 「後ほどおかけ直しください」とアナウンスして通話を切断する
  • 留守番電話サービスのようにメッセージを受け付ける
  • 他の対応窓口へ転送する
  • コールバックの予約を受け付ける
  • HPの問い合わせフォームなど、別の手段での問い合わせに誘導する

上記のような対応をすることで、顧客の待ち時間を作ることなく、効率的に着信を処理できます。オペレーター目線でも架電の集中を防げるというメリットがあります。

待ち時間順ルーティング

待ち時間順ルーティングとは、オペレーターへの着信振り分け設定の一つです。複数のオペレーターが待機状態(着信待ち)となっている際に新たな着信があった場合、待ち時間を基準として、待っている時間が長かったオペレーターへ優先的に着信を割り振ります。

すべてのオペレーターに対して均等に着信を割り当てられるため、「特定の人に対応が集中している」というオペレーター間の不満が起きにくくなります。

着信回数優先ルーティング

着信回数優先ルーティングとは、先述の「待ち時間順ルーティング」と同じ、オペレーターの着信振り分け設定の一つです。複数のオペレーターの待機中に着信があった場合、それまでの対応数を基準として、着信回数の少ない順に対応が割り振られます。

オペレーターの対応件数を均一にすることで、オペレーターごとの業務負荷を均一化して公平性を保てます。加えて全員が一定件数の対応経験を積めるため、オペレーターのスキルの全体的な底上げにも期待できます。

スキルベースルーティング

スキルベースルーティングとは、オペレーターの着信振り分け設定の一つです。オペレーターの専門性やスキル、言語などによって振り分けルールを定め、問い合わせを適したオペレーターにつなぎます

顧客の悩み・問い合わせ内容に応じたスタッフが対応することで、最短時間で的確な問題解決を目指せるでしょう。スキルベースルーティングは先述の「待ち時間順ルーティング」「着信回数優先着信ルーティング」とは異なり、顧客満足度の向上を目指す振り分け方法であると言えます。

ランダムルーティング

ランダムルーティングとは、顧客からの着信をランダムに振り分ける方法です。ラウンドロビンルーティングとも呼ばれています。

複数のオペレーターが待機状態にあった場合、システムがランダムに担当者を選択して新規の着信を割り振ります。特別な規則性がないため設定は簡単ですが、問い合わせ内容と担当者が持つスキルのミスマッチなども考えられるため、あまりおすすめできる方法ではありません。

オーバーフロー転送

オーバーフロー転送は、設定した待ち呼の待ち時間や、コールセンター全体で対応可能な着信数を越えた場合に、別の窓口へ転送する機能のことをいいます。

長時間の待ち呼は、顧客に大きな不満を抱かせることから、顧客満足度の低下に直結してしまいます。別の窓口のスタッフが対応することで、待ち時間を短縮したり人的リソースを有効活用したりして、顧客へのフォローが可能になります。

別の窓口で対応する場合には要件のヒアリングをして、後ほどコールセンター側から改めて顧客へかけ直すよう、手筈を整えておくとよいでしょう。

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自動着信呼分配装置(ACD)のメリット

自動着信呼分配装置(ACD)のメリット

ACDを導入することで、コールセンターの運営に大きなメリットがもたらされます。ここからはACDの代表的なメリットを3つご紹介します。

メリット①:オペレーター業務の効率化

ACDを活用することで、お問い合わせの内容や難易度に適したオペレーターへ電話をつなげられます。これによってスムーズかつ適切な対応を行えるため、対応時間の短縮も期待できるでしょう。

またACDでは、スキルレベルだけでなく、空き状況を加味した着信の振り分けも設定できます。これによって特定のオペレーターだけに着信が集中する状況を解消できるため、オペレーター間の不公平感や不満を払拭することも可能でしょう。

働くスタッフの不満を解消することは、職場における人間関係のトラブルや離職といったリスクを抑制することにもつながります。ACDによるオペレーター業務の効率化には、コールセンターの運営側にとって大きなメリットがあるのです。

メリット②:顧客満足度の向上

コールセンターにおける業務で何よりも重要なのは、顧客からの問い合わせに対して、迅速かつ適切な対応を行うことです。

  • 電話をかけているのにいつまでもつながらなくて待たされる
  • 複数のオペレーターをたらい回しにされる
  • 対応内容に不備がある

このようなことがあると顧客はストレスを感じ、企業に対してマイナスなイメージを抱いてしまいます。ACDを活用して着信を適切な担当者へ振り分け、応答時間や対応時間を短縮することで、顧客満足度の向上につながっていくでしょう。

メリット③:新人教育にも活用できる

ACDの導入によって、習熟度の低い新人に対して難易度の低い問い合わせを重点的に割り振ることも可能になります。

簡単な問い合わせを割り振り、場数を踏んでもらうことで、新人オペレーターの業務習熟を促します。経験を積みながら徐々に知識やスキルを身に着ければ、次第に難しい問い合わせにも対応できるようになっていくでしょう。

ACDによる着信振り分けは、業務効率化を図るだけでなく、新人教育としても活用できるのです。

自動着信呼分配装置(ACD)の注意点

自動着信呼分配装置(ACD)の注意点

コールセンターに欠かせない機能として注目されているACDですが、導入する上で注意しなければならない点もあります。ここではACDの注意点について紹介します。

適切な振り分け設定ができているか

着信の割り振りはシステムが行うため、あらかじめ定められた内容がそのまま反映されます。そのため、たとえばオペレーターに紐づけられたスキルレベルが間違っていると、意図しない振り分けが行われてしまう可能性があるのです。

またスキル設定が適切にできていたとしても、肝心の割り振りフローに偏りがあると対応が属人化しかねません。特定のオペレーターに負担が集中するほか、コールセンター全体の習熟度に偏りが出るリスクもあるため、振り分け設定はしっかり行うようにしましょう。

振り分け設定の管理ができているか

オペレーターの稼働状況によって、理想的な振り分け設定はその都度で異なります。「担当オペレーターが退職した」「新人オペレーターの習熟度が上がって難易度の高い問い合わせも受けられるようになった」など、状況の変化にあわせて柔軟にACDの設定変更をしなくてはなりません。

常にブラッシュアップさせていかないと、問い合わせとオペレーターのミスマッチが起きたり、特定のオペレーターに対応が集中してしまったりする恐れがあります。

しかしACDの設定は、複雑であればあるほど管理が難しくなります。ACDを最大限に活かすためには、コールセンターの運営状況を適切に把握し、定期的にオペレーターのスキルレベルの割り当てや振り分けルールの見直しができる管理者が必要です。

コミュニケーションAPIサービス
「Vonage」のご紹介

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Vonageは、電話やSMS・ビデオ・チャット・SNSなど、さまざまなコミュニケーションチャネルをWeb・モバイルアプリケーションやビジネスへ組み込めるクラウドAPIサービスです。自動電話発信や電話転送、対話型IVR、自動SMS通知や二要素認証など、多岐にわたるサービスを実現できます。

コミュニケーションに関わる機能を自社で1から開発するのには多大な工数がかかります。通信の暗号化といったセキュリティ対策など考慮せねばならない点も多く、そのために実装を諦めてしまう企業も少なくありません。

しかしVonage APIと連携すれば、それらの工数をすべてVonage側が担ってくれます。お客様側でのインフラ開発はもちろん、ネットワークの構築・維持コストも必要ありません。ただ数行のコードを書き加えるだけで、自社サービスをマルチチャネル化できるのです。

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Vonage Voice APIは録音や音声認識、IVRなど、通話に必要なあらゆる機能をプログラムでコントロールできるAPIです。

世界中の電話番号を用いたPSTN(公衆回線網)やSIP、Web RTCでの発着信機能を利用できます。また日本国内を含む約80カ国の電話番号を提供しており、ダッシュボード上から簡単に番号取得のお申し込みが可能です。

料金は通話秒数に応じた従量課金制です。また通話の録音・保存や日本語での音声認識、テキストの読み上げなどは無料で利用できます。そのため、不要なコストをかけずに音声通話のコミュニケーションチャネルを自社サービスに連携させられます。

まとめ

本記事では自動着信呼分配装置(ACD)について、コールセンターに導入することでどのようなことができるか、またそのメリットは何かを詳しくご紹介しました。

コールセンターの業務改善は、企業が顧客からの信頼を得るための重要なミッションです。ぜひACDの機能を活用して、コールセンターの品質向上に役立ててくださいね。

執筆者情報

KDDIウェブコミュニケーションズ
KDDIウェブコミュニケーションズ
2013年に、日本ではまだ黎明期であったCPaaSの取り扱いを開始。CPaaSやCCaaSなどコミュニケーションのDXの専門家として、「コミュニケーションの多様性」を活用するための記事をお届けします。


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