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多要素認証(MFA)とは?認証方法の例や必要性をわかりやすく解説

公開日:2022.02.14

更新日:2025.07.07

KDDIウェブコミュニケーションズ

多要素認証(MFA)とは?認証方法の例や必要性をわかりやすく解説

近年、サイバー攻撃や不正アクセスの被害が深刻化しており、自社サービスのセキュリティを向上させるために多要素認証(MFA)を導入する企業が増えています。

多要素認証は不正アクセス対策として有効な手段であり、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)でも導入が推奨されています。企業が多要素認証を導入することは社会的責任を果たす上でも重要です。

本記事では、多要素認証の基本から代表的な認証方法、導入時の注意点まで、わかりやすく解説します。

多要素認証(MFA)とは

多要素認証とは?

多要素認証とは、2つ以上の異なる認証要素の組み合わせによって本人確認を行う方式のことで、MFA(Multi-Factor Authentication)とも呼ばれます。たとえばIDとパスワードに加えて、ワンタイムパスワード(OTP)や指紋認証を用いることで、認証の精度と安全性を高めることが可能です。

従来のパスワード認証は、定期的な変更や管理の手間がかかりました。結果「0000」や「abcd」など安易な文字列を設定したり同一のパスワードを複数のサービスで使い回したりするユーザーが増えてしまい、そのパスワードの脆弱性を突いた情報漏洩も後を絶ちません。

そこで、ワンタイムパスワードや生体認証を組み合わせた多要素認証を導入すれば、利便性とセキュリティの両立が可能です。

多要素認証で使われる要素は主に「知識要素」「所持要素」「生体要素」に分類されますが、近年では新たな認証要素も登場しています。各要素の詳細は後述します。

二要素認証との違い

二要素認証とは、多要素認証の一種で、異なる2つの認証要素を組み合わせる方法です。

<二要素認証の例>

  • パスワード+ワンタイムパスワード
  • パスワード+指紋認証

二要素認証は、導入のしやすさと高い効果から多くの企業やサービスで利用されています。二要素認証について詳しく知りたい方は、「二要素認証(2FA)とは?必要性や具体的な認証方法を解説」の記事をご参照ください。

二段階認証との違い

二段階認証は、その名称のとおり、認証プロセスを2段階に分けて行う方式です。あくまでも、「段階(プロセス)」に焦点があてられるため、同じ要素でも2段階に分かれていれば、二段階認証となります。

一方、多要素認証は「使用される要素の種類」に着目しているため、どんな手順であっても、異なる種類の要素を用いる必要があります。

たとえば「パスワード入力」に続いて「メールで届いた合言葉を入力する」場合、どちらも知識要素であるため二段階認証ではありますが、多要素認証には該当しません。

このように、手順が2段階であっても、要素の種類が同じであれば二要素認証にはならない点に注意が必要です。両者は混同されがちですが、セキュリティ対策の設計においては明確に異なります。

多要素認証の重要性が高まっている背景

リモートワークやクラウドサービスの普及に伴い、企業ネットワークの境界が曖昧になりつつあります。その結果、従来の認証方式では防ぎきれない脅威が増加しており、多要素認証の重要性が日に日に高まっています。

セキュリティ脅威の拡大・パスワード認証の限界

警察庁が検知した不審なアクセス件数(1日・1IPアドレス当たり)

出典:令和6年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について

近年、サイバー攻撃の手口はますます巧妙化しており、セキュリティ対策の重要性も増しています。マルウェアやフィッシング、DDoS攻撃に加え、サプライチェーン攻撃やランサムウェアの被害も拡大しています。

その標的は大企業だけとは限らず、自治体や中小企業などあらゆる組織にも広がりを見せているのが実情です。

そうした状況では、従来のパスワード認証だけでセキュリティ脅威を防ぐことはもはや不可能です。特に、単純なパスワードを設定している場合や複数サイトでパスワードを使いまわしている場合、ひとつのパスワードが漏洩しただけで他のサービスにも不正アクセスが起きてしまうでしょう。

このような背景により、強固な認証手段として多要素認証の導入が求められています。

二要素認証を狙った攻撃の高度化

なぜ多要素認証(MFA)が必要なのか?

IDとパスワードに加えてワンタイムパスワード(OTP)を組み合わせる二要素認証は、従来の認証方式よりもセキュリティを強化できる手段として、すでに多くのオンラインサービスや企業システムで導入が進んでいます。

しかし近年では、「スミッシング」や「SIMスワップ」など、二要素認証の構成要素を狙う攻撃手法も高度化しており、もはや二要素認証でさえも安全な認証方法とはいえません。

特に、機密性の高い情報を扱う業務や、リモートワーク環境のように社外ネットワークからのアクセスが多い場面では、3つ目の認証要素を加えた多要素認証がより有効です。

実際に、NIST(米国国立標準技術研究所)やPCI-DSS(カード業界のセキュリティ基準)など国際的な機関でも、多要素認証の導入を推奨しています。

ゼロトラストモデルのように、信頼を前提としないアクセス管理においては、多要素認証を取り入れた多層的なセキュリティ対策が不可欠と言えるでしょう。

多要素認証における認証要素

多要素認証は、異なる性質を持つ複数の認証要素を組み合わせて本人確認を行います。一般的には、「知識要素」「所持要素」「生体要素」の3つに分類されます。さらに近年では、「行動要素」や「環境要素」など、新たな認証要素も登場しています。

知識要素

知識要素とは、ユーザー本人しか知り得ない情報のことです。例としては、以下が挙げられます。

  • ログイン時に入力するパスワード
  • PINコード
  • 秘密の質問への回答

知識要素は一般的な認証方式として広く使われており、導入しやすい点が特徴です。ただし、情報が盗まれたり、他人に推測されたりするリスクがあるため、他の要素と組み合わせることが推奨されます。

所持要素

所持要素とは、ユーザー本人が所持しているものを利用した認証情報です。たとえば、以下のようなものが該当します。

  • デバイス(スマートフォンなど)
  • 認証アプリ
  • ICカード
  • セキュリティトークン

所持要素は、物理的にユーザーが所持している必要があるため、「なりすまし」が難しい点が特長です。ただし、紛失や盗難といったリスクもあるため、管理方法に課題があります。

所持要素にはさまざまな手法があり、代表的な例として以下があります。

認証方式

概要

ワンタイムパスワード(OTP)

  • メールやSMS、認証アプリで一時的なコードを送信して認証する方法
  • ECサイト、ネットバンキング、業務システムなどで活用される
  • 一般的に30秒〜数分程度の時間制限がある点に注意が必要

ハードウェアトークン

  • USB型セキュリティキーやICカードなど物理デバイスの所持によって認証する方法
  • 社内ネットワーク、端末起動などで活用される
  • 紛失・故障リスクへの備えが必要となる

プッシュ通知型認証

  • スマートフォンに届く通知を承認することで認証する方法
  • 業務用SaaS、クラウドサービスなどで活用される
  • 利便性が高い一方、スマートフォンの所持が必須となる点に注意が必要

生体要素

生体要素とは、ユーザーの身体的な特徴を利用した認証要素のことです。例としては、以下があります。

  • 指紋認証
  • 顔認証
  • 虹彩認証
  • 声紋認証
  • 静脈認証

スマートフォンのロック解除や、アプリのログイン、社用PCへのアクセス、入退室管理システムなど、個人利用から企業利用まで幅広く活用されています。

生体要素は本人固有の特徴であるため、流出しても他者が再現するのは困難とされ、高い安全性を誇ります。ただし、認証精度にバラつきがあることや、プライバシー保護に充分な配慮が必要です。

行動要素

行動要素とは、ユーザーの行動パターンや操作習慣をもとに本人を識別する認証要素です。たとえば、以下が挙げられます。

  • 文字入力の速度やリズム
  • マウスの動かし方
  • スマートフォンのタップの仕方

個人の行動パターンは他人が簡単に真似できないため、本人確認の手段として有効です。特に、ログイン後も継続的にユーザーを識別できることから、不正アクセスをリアルタイムで検知したり、不審な挙動をするアクセスを自動でロックしたりといった、高いセキュリティを実現します。

環境要素

環境要素とは、ユーザーが認証を行う際の環境に関する情報をもとにした認証方式です。たとえば、以下が挙げられます。

  • アクセス元のIPアドレス
  • ログインの時間帯
  • 使用しているネットワーク(社内LANか公共Wi-Fiか)
  • 端末の地理的な位置情報

これらの情報に基づき、通常とは異なるアクセスと判断された場合に追加の認証を求めたり、アクセスを制限するといった対応が可能です。

環境要素は単体で使われることは少なく、「リスクベース認証(RBA)」として他の要素と組み合わせて動的にセキュリティレベルを調整するのが一般的です。これにより、ユーザー体験を損なわずに柔軟なセキュリティ対策を実現できます。

多要素認証を導入する際の注意点

多要素認証(MFA)で使う3つの認証要素

多要素認証は高いセキュリティ効果をもたらす一方で、以下のような注意点も存在します。

  • 導入・運用にコストがかかる
  • 認証方法によってはユーザーの手間が増えてしまう

安全性を確保しつつ、利便性を損なわないためには、導入前にメリットとデメリットの両面を正しく理解し、最適な方法を選定することが重要です。

導入・運用にコストがかかる

多要素認証の導入には、初期費用だけでなく継続的な運用コストも発生します。使用する認証要素によっては、専用デバイスの購入やシステムの大規模な構築が必要になることもあります。

近年では、クラウド型の認証サービスをサブスクリプション形式で提供する企業も増えており、無料または低コストでの導入が可能な選択肢も広がっています。しかし、導入規模の拡大や新機能の追加に応じて、ランニングコストが上昇するケースも少なくありません。

そのため、必要なセキュリティ強度と自社の予算とのバランスを見極めながら、慎重に検討することが求められます

認証方法によってはユーザーの手間が増えてしまう

多要素認証を導入すると、ログイン時に複数のステップを踏む必要があるため、操作の手間が増える可能性があります。その結果、ユーザーが煩わしさを感じてしまい、利用意欲の低下につながるおそれがあります。

ただし、認証手段によっては、操作性を維持しながらセキュリティを強化することも可能です。たとえば、モバイル認証アプリによるワンタップ承認や、スマートフォンの顔認証を活用すれば、パスワード入力よりもスムーズにログインできます。

導入時には、セキュリティの高さとユーザー体験のバランスを慎重に検討し、誰にとっても使いやすい認証フローを設計することが重要です。安全性と利便性の両立こそが、多要素認証の成功のカギを握ります

多要素認証でセキュリティレベルを向上させよう

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サイバー攻撃が巧妙化している昨今。もはや従来のパスワード認証だけでは被害を防げない時代となりました。このような状況下において、多要素認証の導入は企業にとって不可欠なセキュリティ対策といえるでしょう。

一方、多要素認証の導入には、導入コストや操作性の担保といった課題も存在するため、自社に適した認証方式を選ぶことが重要です。

そこでおすすめなのが「Vonage Verify」です。Vonage Verifyは、SMSや音声通話を通じた高精度なワンタイムパスワード認証を実現できるAPIサービスです。自社で多要素認証を開発することなく、ワンタイムパスワードの生成から送付、正誤判定までをワンストップで提供します。

国内外問わず高い到達率を誇る上、認証失敗時は送信料しかかからないため、最適なコストパフォーマンスを発揮します。

多要素認証の導入を手軽かつ安全に進めたい方は、ぜひ以下のリンクからVonage Verifyの詳細をご覧ください。

 

まとめ

この記事では、多要素認証の特徴や必要性について解説し、導入するために考慮すべきポイントや比較されやすい類似用語との違いについてご紹介しました。  

多要素認証は、セキュリティレベルが高く、ユーザーの情報を守るためにこれから必須の認証方式と考えられています。  

みなさんも多要素認証を理解することで、より安全で使いやすいサービスの提供を検討してみてください。

執筆者情報

KDDIウェブコミュニケーションズ
KDDIウェブコミュニケーションズ
2013年に、日本ではまだ黎明期であったCPaaSの取り扱いを開始。CPaaSやCCaaSなどコミュニケーションのDXの専門家として、「コミュニケーションの多様性」を活用するための記事をお届けします。


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