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ワンタイムパスワードによる多要素認証とは?活用シーンや導入するメリットを解説

公開日:2025.08.13

更新日:2025.08.13

KDDIウェブコミュニケーションズ

ワンタイムパスワードによる多要素認証とは?活用シーンや導入するメリットを解説

ワンタイムパスワード(OTP)による多要素認証は、オンラインサービスのセキュリティ強化における効果的な手法です。一度しか使えない使い捨てパスワードを活用することで、なりすましや不正アクセスのリスクを大幅に軽減できます。

本記事では、OTPを用いた多要素認証の仕組みや活用シーン、導入メリット、注意点などについて詳しく解説します。自社サービスにログインする際の認証方法を検討している企業の方は、ぜひ参考にしてください。

ワンタイムパスワードによる多要素認証とは

ワンタイムパスワードによる多要素認証とは?活用シーンや導入するメリットを解説

多要素認証とは、以下の3種類の認証要素のうち、異なる2つ以上を組み合わせて本人確認を行う認証です。

  • 知識要素(ID・パスワードなど)
  • 所有要素(スマホ・メールアドレスなど)
  • 生体要素(指紋・顔認証など)

多要素認証は、従来のIDとパスワードだけでは不充分とされるセキュリティを補完する手段として、多くの企業やサービスで採用が進んでいます。

このうち「所有要素」に該当する認証方法のひとつが、ワンタイムパスワードです。OTPは、SMSやメール、認証アプリなどを通じて送信される、一定の条件で使い捨てられる認証コードです。「知識要素」に該当するパスワードと組み合わせることで、多要素認証としての利用が可能です。

オンラインサービスやリモートアクセスなどにおける不正ログインやパスワード漏洩のリスクが高まるなか、OTPを活用した多要素認証は、高度なセキュリティ対策として幅広い分野で活用されています。

多要素認証について詳しく知りたい方は、「多要素認証(MFA)とは?認証方法の例や必要性をわかりやすく解説」の記事をご参照ください。

ワンタイムパスワードによる多要素認証の活用シーン

ワンタイムパスワードによる多要素認証の活用シーン

ワンタイムパスワードは、金融サービスからSNSまで、さまざまな場面で活用されています。ここでは、以下の代表的な活用シーンを詳しく見ていきましょう。

ネットバンキング・ECサイトでの本人確認

銀行のインターネットバンキングや、クレジットカードを利用するECサイトでは、不正利用を防ぐためにワンタイムパスワードが広く活用されています。ログイン時の本人確認に加えて、振込や高額決済などの重要な取引時に、追加認証としてOTPを求めることも一般的です。

OTPを利用すれば、たとえIDやパスワードが漏洩したとしても、第三者が不正にアクセスや決済を行うリスクを大幅に軽減できます。

クラウドサービスへのログイン

クラウドサービスのアプリ等にログインする場面では、ワンタイムパスワードが積極的に活用されています。個人情報や業務データをオンライン上でやりとりするサービスでは、ID・パスワードだけの認証では不充分とされるケースもあり、追加の本人確認が有効です。

ファイル共有や外部アクセスのタイミングで再認証を求めるなど、重要な操作と連動させたOTP活用も見られます。このような活用法は、データの機密性を保ちながら、利便性も確保できる認証方式として定着しています。

SNS・会員制アプリなどへのログイン・新規登録

SNSや会員制アプリなど、個人情報を取り扱うオンラインサービスでは、アカウントの不正利用を防ぐ手段として、ワンタイムパスワードを利用した多要素認証の仕組みが採用されています。

特に、ログイン時や新規登録時にOTPを求めることで、なりすましや複数アカウントの不正取得抑止に効果的です。アカウント転売や悪質なアクセスを防ぎ、サービスの健全性を保つ効果も期待できるでしょう。

ユーザーにとっても、重要なアカウントを安全に管理できるという安心感につながります。

社内システムへのアクセス

企業の社内システムや業務用アプリへのアクセスにおいても、ワンタイムパスワードによる多要素認証は有効です。従業員一人ひとりの本人確認を強化することで、アカウントの乗っ取りや内部からの情報漏洩といったリスクを低減できます

テレワークの普及によって、社員の自宅をはじめ社外からのアクセス機会が増えたため、近年ではセキュリティ強化の必要性が高まっています。職員に配布している端末にOTPを送信する方法であれば、手軽に強固な認証環境を構築することが可能です。

このように、利便性と安全性を両立させる手段として、多くの企業で導入が進んでいます。

ワンタイムパスワードによる多要素認証の仕組み

ワンタイムパスワードには、コードの生成方法や受け取り方法によって複数の種類があります。代表的な認証方式とパスワードの受け取り方法について詳しく見ていきましょう。

認証方式

ワンタイムパスワードの生成方式は、主にTOTP(Time-based One-Time Password=時刻同期認証)とHOTP(Hash-based Message Authentication Code based One-Time Password=カウント同期型)の2種類に分類されます。それぞれの特徴を理解し、自社のサービスに適した方式を選択しましょう。

TOTP(時刻同期認証)

ワンタイムパスワードによる多要素認証とは?活用シーンや導入するメリットを解説

TOTP(Time-based One-Time Password)は、現在時刻をもとに一定間隔でパスワードを自動生成する方式です。たとえば、スマートフォンアプリの「Google Authenticator」などがこれに該当します。

ユーザーのデバイスとサーバーが同じ時刻を共有していることで、都度異なる使い捨てパスコードが生成される仕組みです。パスコードの有効期限が1分前後で切れるため、第三者に不正利用されにくく、高いセキュリティを確保できます。

時刻同期の精度が高いため、HOTPよりも広く採用されています。

HOTP(カウント同期型)

ワンタイムパスワードによる多要素認証とは?活用シーンや導入するメリットを解説

HOTP(HMAC-based One-Time Password)は、時刻に基づく方式であるTOTPとは異なり、ユーザーの操作回数に基づいてパスワードを生成する方式です。たとえば、専用の物理デバイスであるワンタイムパスワードトークンなどで、ボタンを押すたびに新しいコードが表示される仕組みが該当します。

この方式では、カウント値がサーバー側とも同期され、認証のたびに更新されます。ただし、ユーザー側の誤操作等により意図せずカウントがずれてしまうケースもあるため、前述のTOTP方式が広く採用されているのが現状です。

パスワードの受け取り方

パスワードの受け取り方

ワンタイムパスワードの受け取り方法は多様化しており、サービスの特性やユーザー層に応じて選択できます。それぞれの受け取り方法について詳しく見ていきましょう。

メール

メール認証は、事前に登録したメールアドレス宛にワンタイムパスワードを送信する方式です。

メールアドレスさえあれば誰でも利用でき、特別なアプリや機器も不要なため、導入・運用のハードルが低い方式といえます。また、パソコンやスマートフォン、タブレットなど、複数の端末で確認できる柔軟性も特長です。

一方で、迷惑メールフィルターの影響で届かないケースや、サーバー遅延によって到着が遅れる可能性がある点に注意が必要です。こうしたリスクを防ぐには、安定した受信環境の確保が求められます。

SMS

SMS認証は、登録された携帯電話番号宛にワンタイムパスワードを送信する方式です。

携帯電話を持っていれば誰でも利用でき、特別な設定が要らないため、多くのWebサービスやアプリで広く採用されています。通知によって受信に気づきやすく、メールと比べて迷惑メールフィルターやサーバー遅延などの影響を受けにくいのが利点です。

ただし、携帯電話を持っていない方は利用できないほか、受信設定によってはメッセージが届かないケースもあります。そのため、バックアップ手段として他の認証方式も併用すると安心です。

Vonageでは、SMSや電話、メールでの通知方法を組み合わせたフェイルオーバーの仕組みを実装可能です。多段階構成による到着率の最大化が期待できます。

 

スマホアプリ

スマートフォンに専用アプリをインストールして、ワンタイムパスワードを生成・表示する方式です。

この方式では、アプリ内に表示されるパスコードをそのまま入力するだけで認証が完了します。SMSやメールのようにコードの受信を待つ必要がなく、アプリ内の操作だけで完結するため、スムーズにログインできる点が特徴です。

ただし、アプリのインストールや初期設定が必須であるため、人によっては導入の妨げになる可能性もあります。特に、スマートフォンに不慣れな方や高齢者などには、サポート体制の整備も重要となるでしょう。

電話音声

登録済みの電話番号に対して、自動音声でワンタイムパスワードを読み上げる方式です。

SMSやメールが届かない場合の代替手段として活用されることがあり、フィーチャーフォン利用者にも対応しやすい点がメリットです。文字より音声のほうが認識しやすいというユーザーにとっても有効な手段といえます。

ただし、通話品質や周囲の騒音によっては、パスコードが聞き取りにくい可能性があります。そのため、利用環境に応じた配慮が欠かせません。

トークン

ワンタイムパスワード専用の物理デバイスであるハードウェアトークンを使ってパスコードを取得する方式です。利用者がトークンのボタンを押すと、その都度使い捨てのパスワードが画面に表示され、それを入力して認証を行います。

インターネット回線やスマートフォンに依存しないため、セキュリティリスクが低いのが強みです。特に、金融機関など高い安全性が求められる現場で採用されています。

一方で、トークンそのものを紛失したり、電池切れ・故障などのリスクがある点には注意してください。

多要素認証にワンタイムパスワードを活用するメリット

多要素認証にワンタイムパスワードを活用するメリット

ワンタイムパスワードを多要素認証に組み込む主なメリットについて、詳しく見ていきましょう。

ユーザビリティを確保しながら安全性を高められる

ワンタイムパスワードは、毎回異なるコードを自動生成して使用するため、多要素認証の中でも高い安全性を発揮します。たとえコードが一時的に第三者に知られても、時間や回数に応じて無効になるため、再利用されるリスクが少ないです。

さらに、認証時には届いたコードをそのまま入力するだけで済むので、ユーザーが新たなパスワードを記憶したり、定期的に変更したりする手間もありません。顔認証や指紋認証のように、端末性能や環境に左右されることもなく、直感的でストレスの少ない操作を行えます。

セキュリティとユーザビリティの両立のためにも、OTPによる多要素認証は有効な手段といえるでしょう。

Vonage VerifyはSMS・音声通話に対応しており、ユーザーにとって馴染みのある手法で認証フローを構築できます。フェイルオーバーの仕組みにより認証率の向上も実現可能です。

導入・運用の負担を抑えられる

ワンタイムパスワードは、メールやSMS、音声通話などの通信手段を通じて認証を行います。生体認証のように専用のハードウェアや複雑な設定は不要です。これは、事業者にとって手軽に導入できる大きなメリットとなるでしょう。

特に、メールやSMSは多くの方が日常的に使い慣れているツールのため、ITリテラシーの高低に関わらず、幅広い層に受け入れられやすいです。そのため、サービスへの導入時の説明や認証方法の問い合わせ対応など、運用面でのサポート負担を抑えながら、スムーズな認証フローの構築が可能となります

多要素認証にワンタイムパスワードを活用する際の注意点・ポイント

多要素認証にワンタイムパスワードを活用する際の注意点・ポイント

ワンタイムパスワードには多くのメリットがある一方で、導入・運用時に注意すべきポイントも存在します。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

受け取り端末の安全性に依存する

ワンタイムパスワードは「所有要素」に分類される認証方式であるため、その安全性はスマートフォンやトークンといった受け取り端末に依存します。もし端末が盗難や紛失、マルウェアに感染した場合には、OTP自体が第三者に読み取られてしまう恐れがあるのです

たとえば、SIMスワップ攻撃では、攻撃者が通信事業者を騙して対象者の電話番号を自分のSIMカードに移し替えます。これにより、SMSや音声通話で送られるOTPを自分の端末で直接受け取れてしまうのです。こうした攻撃は、OTPの仕組みそのものでは防ぎきれません。

そのため、一定期間に異常なリクエストが続いた場合に、OTP送信を自動で停止できるなど、不正防止システムを備えたサービスを導入するのが望ましいでしょう。万が一の際にも、不正ログインの兆候を早期に検知し、被害の拡大を防ぐことが可能です。

操作ミス・認証失敗によるコスト増加の懸念がある

ワンタイムパスワードは時間制限付きのコードを用います。ユーザーが入力に手間取ったり、コードの到着が遅れたりすると認証に失敗してしまうケースも少なくありません。

特に、SMSや音声通話による認証では1回の送信ごとに費用が発生します。そのため、認証が完了しないまま何度も再送されると、想定以上のコストがかかってしまうことがあります。また、大規模サービスやBtoC向けシステムでは、失敗による認証コストの膨張が導入判断のハードルになるケースもあるでしょう。

コスト負担を軽減するためには、認証成功時のみ課金が発生する完全認証成功型プランのようなサービスの活用がおすすめです。これにより、無駄な送信コストを抑えながら、安定した認証運用を実現できます。

コミュニケーションAPIサービス
「Vonage」のご紹介

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Vonageは、電話やSMS・ビデオ・チャット・SNSなど、さまざまなコミュニケーションチャネルをWeb・モバイルアプリケーションやビジネスへ組み込めるクラウドAPIサービスです。自動電話発信や電話転送、対話型IVR、自動SMS通知や二要素認証など、多岐にわたるサービスを実現できます。

コミュニケーションに関わる機能を自社で1から開発するのには多大な工数がかかります。通信の暗号化といったセキュリティ対策など考慮せねばならない点も多く、そのために実装を諦めてしまう企業も少なくありません。

しかしVonage APIと連携すれば、それらの工数をすべてVonage側が担ってくれます。お客様側でのインフラ開発はもちろん、ネットワークの構築・維持コストも必要ありません。ただ数行のコードを書き加えるだけで、自社サービスをマルチチャネル化できるのです。

Vonage Verify

Vonage Verifyはワンタイムパスワードの生成から送付、正誤判定までをワンストップで提供している二要素認証(2FA)APIです。Vonage Verifyを利用することで、自社で1から開発することなく、二要素認証のシステムを自社サービスに導入できます。

Vonage Verify ではマルチチャネルな配信ロジックを組むことも可能で、国内外を問わず高いワンタイムパスワード到達率を誇ります。また認証成功時に料金が発生する仕組みのため、不要なコストがかかりません。

自社で二要素認証のシステムを開発する場合、インフラプラットフォームの費用やPINコードの管理が必要になったり、不正アクセスの防止策や失敗試行の検出方法を考慮したりと、大幅な導入・運用コストがかかります。

しかし Vonage Verifyなら、認証成功率が一定の値を下回ったりや認証回数の閾値を超えたりした場合、パスワード送付を自動で停止します。不正行為を防止する仕組みがあらかじめ備わっているため、認証成功時の利用料金だけでセキュリティ対策を実施できるのです。

まとめ

ワンタイムパスワードによる多要素認証は、使い捨てパスワードの特性を活かし、高いセキュリティを実現しながらユーザビリティも確保できる優れた認証方式です。ネットバンキングやECサイト、クラウドサービス、社内システムなど、幅広い分野で活用されており、不正アクセスやなりすましのリスクを大幅に軽減できます。

一方で、受け取り端末の安全性への依存や、認証失敗によるコスト増加といった課題もあるため、適切な対策が不可欠です。

Vonage Verifyなら、不正防止システムによる異常検知機能と、認証成功時のみ課金される完全認証成功型プランにより、これらの課題を解決しながら、SMS・音声通話・メールを組み合わせた柔軟な多要素認証を実現できます。

執筆者情報

KDDIウェブコミュニケーションズ
KDDIウェブコミュニケーションズ
2013年に、日本ではまだ黎明期であったCPaaSの取り扱いを開始。CPaaSやCCaaSなどコミュニケーションのDXの専門家として、「コミュニケーションの多様性」を活用するための記事をお届けします。


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