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コールセンターのASA(平均応答時間)を改善するには?概要、悪化理由、短縮方法など

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KDDIウェブコミュニケーションズ

コールセンターのASA(平均応答時間)を改善するには?概要、悪化理由、短縮方法など

応対品質の向上や業務の効率化を図り、顧客満足度を高めることを目的に、コールセンターやコンタクトセンターではさまざまな指標がKPI(リンク)として設定されています。そのうちのひとつが「ASA」(平均応対時間)です。ASAは顧客からの電話に対してオペレーターが応答するまでにかかった時間の平均を指す指標で、コールセンター・コンタクトセンターの「電話のつながりやすさ」を表すものとなります。

本記事では、ASAの算出方法や重要性、悪化してしまう原因やその改善策について詳しく解説します。コールセンターの業務改善に関わる担当者様は、ぜひ記事の最後までご参照ください。

コールセンターにおけるASA(平均応答時間)とは?

コールセンターにおけるASA(平均応答時間)とは?

コールセンターにおけるASA(Average Speed of Answer)とは、顧客の入電があってからオペレーターが応答するまでの平均時間のことを指します。

つまりASAが短ければオペレーターがすぐに問い合わせの電話に応答できている、ということであり、逆に長ければそれだけ電話に出るのが遅い、ということになります。ASAが長いと、顧客は「ここの窓口はなかなか電話がつながらない」という悪印象やストレスを抱いてしまいます。顧客満足度の低下や企業に対するイメージダウンにつながることから、多くのコールセンター・コンタクトセンターではASAを重要な指標の1つとしてKPIに設定しているのです。

SL(サービスレベル)との違い

ASAと混同されやすい品質指標として、SL(サービスレベル)が挙げられます。

SLは「顧客からの入電に対し、事前に設定した目標時間内にオペレーターが応対・処理できた割合」のことを指す指標です。ASAと同様にコールセンター・コンタクトセンターのつながりやすさを表すものになりますが、ASAはあくまで応対までにかかった時間を指すのに対し、SLは「目標時間内にどれだけ応対ができたか」の達成率を指します。

ASA 顧客からの入電に応答するまでにかかった時間の平均
SL 顧客からの入電に対し、目標時間内に応答できた件数の割合

 

たとえばASAを「入電から20秒以内」と設定し、SLを「20秒以内に応答できた入電が全体の80%以上」と設定しているコールセンターがあったとしましょう。その中で応答速度にばらつきが生まれた場合、「全体で100件あった問い合わせのうち、80件は20秒以内に応答できたためSLは達成」と「100件の応答時間を平均した結果20.5秒になったためASAは未達」といった状況になり得ます。

どちらか一方の指標だけで判断すると、重要な課題を見逃してしまう恐れもあります。そのため応対品質を見る指標として2つを組み合わせて、正確な状況把握ができるようにするとよいでしょう。

ASA(平均応答時間)の数値が大きくなってしまう原因

ASA(平均応答時間)の数値が大きくなってしまう原因

なぜASAの数値が大きくなってしまうのか、ここでは原因として考えられるものをいくつか紹介します。

オペレーター不足

コールセンター・コンタクトセンターでは、毎日寄せられる大量の問い合わせに対し、常に適切な対応をすることが求められます。通常業務だけでも多忙なうえ気を遣うのに、時にはクレームやカスタマーハラスメントといった、精神的負荷の大きい問い合わせにも対応しなければなりません。

こうしたストレスフルな業務内容により離職率が高まり、残された現場のオペレーターの業務負担がさらに大きくなるという悪循環に陥っているのです。人手不足が発生してオペレーターに多大な負荷がかかってしまっているコールセンターでは、ASAの数値も大きくなりがちです。

オペレーターのスキル不足

問い合わせの内容に対してオペレーターがすぐに適切な回答をできない場合も、ASAの数値が大きくなります。顧客から聞かれたことについてほかのオペレーターに質問したりマニュアルを調べたりしているうちにひとりに対する対応時間がどんどん延びていき、結果としてほかの顧客からの着信をなかなか取れなくなってしまうからです。

複雑な内容の問い合わせが多い

顧客からの問い合わせ内容が複雑で、類似事案があまりないような場合、ヒアリングの時間が必要になります。そのため解決方法を探すのが難しかったり、そもそも解決方法自体が手順を踏む必要があって入り組んでいたりすると、顧客ひとりにかける対応時間もそれだけ長くなってしまいます。結果としてほかの顧客の入電に対応できず、ASAが悪化してしまうでしょう。

ワークフローや業務プロセスが最適化されていない

問い合わせ内容もさほど複雑ではなく、オペレーターの人数も不足していないのにASAが大きい場合は、コールセンター・コンタクトセンター全体のフロー設計や業務マネジメントが適切ではない可能性があります。

たとえば顧客からの着信振り分け設定が不充分だったとしましょう。すると問い合わせ内容に対応できるオペレーターが応答するまでに取次や転送の手間が発生していたり、新人オペレーターに入電が集中してしまっていたりして、コールセンター・コンタクトセンター全体の業務効率が悪化してしまうのです。

ASA改善を目指す場合には、業務フローや設計を見直してみましょう。ACDを搭載したコールセンターシステムを導入するのもひとつの手段です。

コールセンターのASAを改善するには?

コールセンターのASAを改善するには?

それぞれの原因に対応した改善を行うことで、ASAを改善できます。どのような対策が有効なのか、先述の原因と照らし合わせて見ていきましょう。

オペレーターの教育を行う

オペレーターのスキル向上を目的として応対マニュアルを作成したり、研修を実施したりします。これによりさまざまな問い合わせに対してスムーズな提案を行えるようになり、顧客ひとり当たりにかかる通話時間を短縮できるでしょう。また応対後の事務処理を素早くできるようになれば、業務効率も改善され、顧客からの入電をより多く受けられるようになります。

FAQページを用意する

顧客からの問い合わせを分析し、どのような内容のものが多く寄せられているのか傾向を把握しましょう。そのうえでよくある質問と回答をまとめたFAQページを用意することで、顧客に自己解決を促せるようになります。これによりコールセンターへの問い合わせ数を減らし、オペレーターの業務負担を軽減すれば、ASAの数値も改善されるでしょう。

また顧客向けのFAQだけでなくオペレーター向けのFAQも用意しておくと、オペレーターがよりスムーズに応対できるようになります。業務ナレッジやマニュアルとしてまとめておくとよいでしょう。

ワークフローや業務プロセスを見直す

コールセンターのワークフローや業務プロセスを見直し、無駄な作業が発生している部分がないか、また効率化できる部分はないかを確認しましょう。

たとえば顧客との通話後に発生するデータ入力などの事務作業を短縮するなら、通話内容を自動文字起こし・自動要約できるツールの導入を検討するとよいでしょう。また顧客の入電を問い合わせ内容に応じて最適なオペレーターへ回す振り分け設定を行ったり、通話中リアルタイムにマニュアルやFAQページを閲覧できるシステムを導入したりすることで、顧客応対にかかる時間を削減できます。

また適切な業務運営を行うために、WFM(Workforce Management)を実施するのも効果的でしょう。WFMは特定の業務量をこなすためにどれだけの従業員が必要なのかを算出・調整するためのマネジメント手法です。コールセンターにおいては過去の入電数や応対実績をもとに、将来的にどれだけの入電数があるのか、またそれをこなすにはどれだけのオペレーターが必要なのかを算出します。

WFMを適切に実施することで、必要最低限のオペレーター数でコールセンター運営ができるようになります。現在では多くのクラウド型WFMツールが提供されているため、導入を検討するのもよいでしょう。

AIツールを活用する

昨今のコールセンターシステムでは、AI機能を搭載したものも数多く提供されています。そうした機能が充実しているものを導入して活用するのもよいでしょう。

たとえばクラウドコールセンター、クラウドコンタクトセンターには、外部CRM(顧客管理システム)との連携が可能になっています。これにより顧客から入電があった瞬間に過去の応対履歴が表示されたり、CRMに登録された顧客の電話番号をクリックするだけで電話を発信できたりします。これにより業務効率を改善し、ASAを短縮できるでしょう。

また通話の自動録音や自動起こし機能を利用すれば、応対後の議事録入力などに役立てられます。こちらもASAの数値を改善するのに効果的です。

そのほか、IVRやボイスボットを活用して一部の問い合わせを自動化するのも有効です。オペレーターが応対せずとも解決できる問い合わせや簡単な手続きを無人対応できるようにしておくことで、入電数自体を減らしてオペレーターの業務負担を軽減できます。結果としてASAも改善できるでしょう。

ASA(平均応答時間)を改善するにあたっての注意点

ASA(平均応答時間)を改善するにあたっての注意点

ASA改善の施策は積極的に行っていくべきですが、注意すべき点もあります。ここではASAを改善する取り組みに関する注意点をいくつか紹介します。

応答品質を下げないようにする

ASA改善を行う中で陥りがちなのが、スピードや効率化を重視しすぎてしまうことです。とにかく応答時間さえ短くすればいい、業務時間内にたくさんの問い合わせを捌けばいいと思って業務をしていると、応対品質が低下してしまいます。結果として顧客満足度の低下も招いてしまうでしょう。

顧客がコールセンターに求めているのは、あくまで疑問や課題の解決です。もちろん良質な顧客体験を考えるうえで「顧客を待たせない」「すぐに電話がつながるようにする」というのも大切な要素ではありますが、そもそもとして問い合わせた内容を適切に解決できなければ意味がありません。雑な対応をされた、結局解決しないまま電話を切られた、という印象を顧客に与えてしまうと、企業のイメージも低下してしまいます。

特に今は新しい商品やサービスがハイスピードで生み出され、飽和している時代です。顧客は単純な商品・サービスのよさだけでなく、企業イメージや購入時・サポート時に得た体験も重視するようになっています。顧客との直接的な接点が持てる窓口部署として、コールセンター・コンタクトセンターはASA改善と応対品質向上の両立を目指していくべきでしょう。

オペレーターに過度な負担をかけない

ASA短縮を目指すうえで、オペレーターの負担が増えないようにすることも大切な視点です。1件1件の応対時間を短くするために厳しい目標やノルマを課してしまうと、オペレーターに強い業務負荷やストレスがかかってしまいます。結果として離職率が上がってしまったり、それによる人手不足でさらなる悪循環を招いてしまったりする可能性があります。

問い合わせの内容によっては、どうしても応対時間が長くなってしまうこともあるでしょう。現場の状況を正しく把握して、オペレーターの業務負担を取り除くなど、効果的な施策を実行することが重要です。

まとめ

コールセンターの顧客満足度や生産性の向上を図るうえで、ASAは重要な指標となります。日々の業務から短縮することを意識して、オペレーターの課題解決速度やコールセンター全体の効率を改善できるとよいでしょう。

ただしASAは、ただ数値が小さければよいというものでもありません。応対時間を短くすることに意識を割くあまり、応対品質が下がってしまっては本末転倒です。素早い応対と適切な案内を両立できるよう、オペレーター教育に尽力したり、作業負担を減らせる仕組みづくりをしたりするのがおすすめです。

昨今ではAIを活用したツールやサービスも多く登場しています。オペレーターの業務負担を軽減するうえで、ツール活用も視野に入れるとよいでしょう。本記事でおすすめしたサービスについても、ぜひ導入をご検討ください。

執筆者情報

KDDIウェブコミュニケーションズ
KDDIウェブコミュニケーションズ
2013年に、日本ではまだ黎明期であったCPaaSの取り扱いを開始。CPaaSやCCaaSなどコミュニケーションのDXの専門家として、「コミュニケーションの多様性」を活用するための記事をお届けします。


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