
コールセンターでは、個々のオペレーターのスキル差によって対応品質にばらつきが生じてしまうケースが少なくありません。特に新人オペレーターの場合、クレームなどの難しい問い合わせを適切に処理できないことも多いでしょう。
そういった課題を解決するのに有用なのが「モニタリング」です。オペレーターの応対品質を客観的に評価・分析して改善につなげる重要な手段であり、適切に実施すれば最終的に顧客満足度の向上を図ることもできます。
本記事では、コールセンターにおけるモニタリングの概要や目的、効果、実施手順、ポイントなどを詳しく解説します。これから導入を検討している方はもちろん、モニタリングの成果が出ていないと感じる方もぜひ参考にしてください。
コールセンターにおけるモニタリングとは、オペレーターと顧客のやり取りの一部始終を記録する行為を指します。
主にオペレーターの応対業務の品質をチェックするためのもので、「どのくらいのトークスキルを有しているか」や「トークスクリプトに基づいた対応ができているか」、「顧客の要望に適切な対応がとれているか」といった観点で評価することができます。
モニタリングを活用することで、効率的にオペレーターの教育ができ、応対品質の向上や均質化につながります。また業務内容の分析にも活かせるため、オペレーションの改善や最適化にも効果を発揮するでしょう。
モニタリングの最大の目的は、顧客満足度の向上を図ることです。
電話は基本的に、オペレーターと顧客が1対1かつリアルタイムでやり取りするツールです。そのため、ほんの少しの言い間違いや声のトーンによって相手の受け取り方が異なったり、説明不足から認識のすれ違いが発生したりする恐れがあります。このようなことが続けば、顧客満足度を下げる大きな要因にもなりかねません。
モニタリングで会話の内容を録音すると、電話対応後に分析が可能になります。「電話対応に問題はなかったか」「どのようにすれば改善できたのか」といった点を検討することで、ボトルネックを解消して応対品質の向上を図れるでしょう。
オペレーターの応対品質を高めることで、顧客満足度の向上へと発展が可能です。
コールセンターでモニタリングを行うとどのような効果が期待できるのか、それぞれ詳しく見ていきましょう。
オペレーターのスキルには差があり、得手不得手も異なります。中には経験が浅い新人や知識の少ないオペレーターもいるでしょう。そういった個人に対して教育を行わずに放置した場合、オペレーターごとにパフォーマンスの差が生まれ、部門全体の底上げがしにくくなります。
このような際に役立つのがモニタリングです。モニタリングではチェック項目に基づき、各オペレーターの電話対応を客観的に検証・評価します。すべてのオペレーターが共通の目的・目標のもとスキルアップを目指すため、応対品質の均質化やスキル差のばらつきを抑制できます。
またモニタリングにより、各オペレーターの検証・評価結果を収集できます。言葉遣いから話し方のスピードまで詳細に分析することで、理想的な電話対応の方法が見えてきます。そうした分析結果をもとにマニュアルやトークスクリプトなどを作成すれば、さらに高いレベルでのスキル均一化が可能です。
モニタリングは、オペレーターの適正な評価にも寄与します。
モニタリング結果を人事評価に取り入れれば、恣意性を排除した客観的な判断が可能になります。共通の目標・目的であるチェックリストを活用しながら評価を行うことで、チェック担当者の主観が反映されるリスクを最小化できるのです。
自身の頑張りが適正に評価されるため、オペレーターにとっても納得感があり、モチベーションの維持・向上も期待できるでしょう。
特にコールセンター業界の離職率は、日本の平均離職率に比べても高い数字となっています。オペレーターの定着率を高めるためにも、モニタリングによる公正な評価制度を整え、モチベーションの維持・向上を図ることが重要です。
コールセンターにおけるモニタリングは、オペレーターの自己評価とスキルアップを促し、EX(従業員体験)を向上させることにもつながります。
音声ログやチェックリストを通じてオペレーター自身の対応を振り返り、フィードバックを受けることで、成長の機会が増加します。さらにモニタリングによって長所や課題が明確になるため、具体的な目標を設定しやすくなり、業務への集中力も高まるでしょう。
目標が明確であれば、改善の方向性が定まり、効率的なスキルアップも可能です。モニタリングを通じた自己成長の実感はやりがいにもつながり、結果としてオペレーターの満足度向上、ひいては顧客満足度の向上も期待できるでしょう。
コールセンターには、オペレーターの人材不足やクレーム対応などの問題も存在します。モニタリングを通じて課題を可視化すると、センター運営におけるさまざまな問題を解決へ導くことができます。
モニタリングでオペレーター個々のスキルやセンター全体の強み・弱みを明確にすることで、研修制度の見直しやシステム導入を的確に実施できます。その結果、応対品質の向上やコスト削減につながるでしょう。
また通話内容のデータを蓄積することで、問い合わせが集中する代表的な質問や、それに対する最適解などを洗い出すことができます。結果としてトークスクリプトや対応マニュアルの改訂・刷新を実現でき、組織全体の教育体制や管理体制を改善できるでしょう。
コールセンターにおけるモニタリングの進め方について見ていきましょう。
目的を明確にすることは、モニタリングを効果的・効率的に実施するための重要なポイントです。「業務改善」「応対品質向上」といった曖昧な目標ではなく、できるだけ具体的に定められるとよいでしょう。
【例】
目的をはっきりと示すことで、モニタリングの評価基準が明瞭になります。
モニタリングを実施する際は、チェックシートによるスコアリングが欠かせません。
スコアリングとは、特定の条件を満たすたびにポイントを加算する評価手法です。複数のチェック項目を設けたうえで、その条件を達成できたかどうかをモニタリングによって明らかにします。
チェック項目の一例は、次のとおりです。
項目の決め方としては、コールセンターの運営目的や、先に挙げたモニタリングの目的から決定するのが一般的です。あるいは業界の標準モデルを参考にするのもよいでしょう。
なお、チェック項目は一度作って完成ではなく、モニタリングの過程で適宜更新を行うことが大切です。網羅できているか、評価しにくい内容が含まれていないか、主観が反映されやすいものはないかなど随時確認し、改善を行いましょう。
モニタリングの結果をオペレーターに対してフィードバックします。問題が発見された場合はもちろん、良かった点についてもフィードバックを行うことが大切です。
フィードバックの方法は、企業によって違いがあります。代表的な方法としては、通話ログを共有する、改善点と良かった点を口頭で伝える、オペレーターが自己評価を行うなどが挙げられます。
単に管理者側から一方的に改善点を伝えるだけでなく、オペレーターの自己評価や意見を聞くことで、モチベーションの低下を防ぎやすくなります。
モニタリングは一度実施して終わりではなく、繰り返し検証を重ねることが重要です。
モニタリング・フィードバック・改善・再モニタリングといった形でPDCAサイクルを回転させることで、問題点の解消や改善が進みます。その結果として、より高品質なサービス提供へとつながるのです。
またモニタリングを継続的に実施することで、新たな問題やボトルネックを発見できる場合もあります。
特に人材の入れ替わりが激しいコールセンターにおいては、応対品質が変化しやすいのが課題です。継続的なモニタリングの実施およびチェック項目の更新を行うことで、品質維持・向上を図れます。
コールセンターにおけるモニタリングの効果を最大限に高めるには、継続的な実施と公平性・信頼性の確保が重要なポイントになります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
顧客への応対品質を高めるためには、継続的なモニタリングによって常に最適な施策へと改善することが欠かせません。最低でも1ヶ月に1回ほどのペースで行うのが良いでしょう。
また、モニタリングは改善の必要な問題箇所が少なくなってきても継続するのが望ましいです。応対品質はオペレーターの入れ替えや提供する商品・サービスの変化、トークスクリプトの更新などに容易に影響されるため、定期的に行って対応品質を担保できるとよいでしょう。
日々評価・検証を行い、現状の良い点を把握しておくとともに、改善点の洗い出しやブラッシュアップを実施するのが大切です。
モニタリングを行うにあたり、具体的な評価方法を現場に周知徹底することも重要です。
評価方法や基準を伏せたままモニタリングを実施した場合、オペレーターが不信感を抱くリスクがあります。評価時の公平性が失われることで、組織全体のモチベーションが低下する可能性も考えられるでしょう。
そのため、可能な範囲で評価基準を公開することが大切です。「顧客の疑問や不安を正しく理解し、適切に解決策を提示できているか」「マニュアルやスクリプトから逸脱した対応をとっていないか」など具体的に挙げると、オペレーターの納得感が生まれます。
コールセンターにおけるモニタリングの実施には、いくつかの課題も存在します。ここでは、時間確保の難しさと評価基準設定の2点について解説します。
コールセンターで行うモニタリングの課題として、時間を確保する難しさが挙げられます。
モニタリングには、音声の繰り返し確認や詳細な評価が不可欠なため、膨大な時間と労力が必要です。しかし多くの評価担当者は、オペレーターのスケジュール管理や目標設定などの業務を兼任しています。日常業務に忙殺され、モニタリングの時間を確保できないケースも珍しくありません。
モニタリングは慎重さが求められます。「不適切な評価によってオペレーターのモチベーションが低下してしまうかもしれない」といったリスクもあり、精神的負担も大きい業務です。特に人手不足が続くコールセンター業界においては、オペレーターの数が増えるほど担当者の負担は増えてしまいます。
モニタリングを実施するためにも、評価担当者の業務負担を減らしたり、モニタリング自体を効率的に行えたりするような仕組みづくりが重要です。
モニタリングの評価基準がちゃんと定まっていないというのも、課題の1つとして挙げられます。
臨機応変な対応が求められるコールセンター業務では、業務品質基準を定量的に判断するのは難しいです。しかし評価基準が不明瞭だと、オペレーターは「自分がどのような点で評価されているかわからない、納得できない」状況に陥り、モチベーションが低下する可能性も考えられます。
均一な評価のためには、スキルや評価ポイントを数値化し、定義づけることが大切です。
効率的にモニタリングを実施するには、ツール活用を検討するのも一案です。業務効率性を高めることでモニタリングの工数を抑え、予算管理や業務プロセス管理といったコア業務に注力できる時間が増えます。
まずは、モニタリング機能を搭載したコールセンターシステムへの移行などを検討するのがよいでしょう。過去の通話履歴から会話の内容を呼び出し、音声ファイルを聞き直せるため、チェックシートをもとに会話内容を評価できます。また感情分析機能やトーク分析機能を搭載したシステムであれば、オペレーターと顧客のやり取りを分析して、データとして蓄積しておけるでしょう。
そのほか、AIを活用したシステムやツールを活用して、通常業務を効率化するという視点も大切です。顧客対応に役立つナレッジを通話中リアルタイムに表示させたり、通話内容を自動で文字起こし・自動要約させたりすることで、評価担当者の業務工数が削減されてがモニタリングに割く時間を確保しやすくなります。
MiiTelは音声解析AIを搭載したクラウドIP電話&クラウドコールセンターサービスです。PCとヘッドセット、インターネット環境さえ整っていれば、固定電話いらずでどこからでもクリアな音質で通話できます。
また独自機能として、音声解析AIを活用した通話内容の録音、文字起こし、内容要約、感情分析をすべて自動で行えます。これにより担当者が顧客と「何を」「どのように」話しているのかを解析・可視化でき、電話応対の課題であるブラックボックス化を解消できます。
さらに応対記録を自動でデータ化できるため、議事録作成や報告といった事務作業の工数を減らせます。担当者がコア業務へ注力できるほか、蓄積されたデータをもとにしたセルフコーチングも可能です。さらに成績優秀者の話し方を分析してマニュアル化することで応対品質の向上や均一化も実現。生産性はもちろん、商談獲得率や成約率の向上にもつながるでしょう。
クラウドコールセンターの導入を検討されている方は、ぜひ一度MiiTelをお試しください。
本記事では、コールセンターにおけるモニタリングの概要や目的、効果について詳しく解説してきました。
モニタリングは、オペレーターの応対品質の改善や顧客満足度の向上を図るうえで欠かせない取り組みです。しかしモニタリングを効果的に実施するには手順を守る必要があり、時間の確保や明瞭な評価基準の設定といった課題も多く存在します。そのため、外部のツールを活用するのも有効な手段です。
コールセンターソリューションを提供しているMiiTelは、AIによる文字起こしや要約、感情分析などの機能を搭載しており、モニタリングの実施をサポートします。また引き継ぎ対応をはじめとした、コールセンターにおけるさまざまな課題を解決に導きます。
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