
コールセンターの稼働率は、オペレーターの業務効率や顧客満足度を左右する重要な指標です。適切な稼働率を維持することで、コスト削減と品質向上の両立が可能となります。
本記事では、稼働率の概要から、計算方法、適正値、改善のためのポイントなどについて、詳しく解説します。自社の稼働率を算出したい方や、稼働率が適正な水準か確かめたい方は、ぜひ参考にしてください。
コールセンターにおける稼働率とは、オペレーターが勤務時間のうち、実際に顧客対応に充てている時間の割合を示す指標です。具体的には、以下が含まれます。
稼働率は、コールセンターの効率を測る重要な指標です。人員配置の適正度を測る「占有率」や電話のつながりやすさを測る「応答率」と並び、運営を評価する際の代表的な数値と言えるでしょう。
稼働率を計算し、オペレーターがどの程度稼働しているかを数値化すれば、業務負荷や人員配置の妥当性を客観的に評価できます。さらに、数値から現状を理解することで、人件費などのコスト最適化や、顧客の待ち時間短縮といったサービス品質の改善にも活用できるでしょう。
ただし、稼働率が高すぎても低すぎても問題を招きます。現状を把握したうえで、適正な水準を保つことが大切です。
稼働率と混同されやすい用語として、占有率や応答率があります。
それぞれの違いを詳しく見ていきましょう。
稼働率が「休憩を含む勤務全体の時間」を基準に算出されるのに対し、占有率はオペレーターが対応可能な時間(待機時間+対応時間)をベースに計算されます。つまり、対応可能な時間のうち、実際に顧客対応を行っていた割合を示す指標です。
占有率(%)=対応時間÷(待機時間+対応時間)✕100
占有率の適正な目安は76〜87%とされています。これを上回ると、オペレーターが常に応対に追われ、心身に大きな負担を抱えている可能性があります。逆に、この範囲を下回ると、顧客対応をせず待機している時間が多い状態といえるでしょう。
応答率は、着信数に対する対応件数の割合です。コールセンターに寄せられた電話の中で、オペレーターが応答できた比率を示します。稼働率や占有率がオペレーター側の稼働状況を測るのに対し、応答率は顧客にとっての電話のつながりやすさを表す数値です。
応答率=(対応件数÷着信件数)✕100
一般的には、応答率は90%程度が適正水準とされています。数値が過度に高いと、オペレーターに業務負担が集中している可能性があり、逆に著しく低い場合は、人員配置やシフト計画に課題があると考えられます。
コールセンターの稼働率は、「顧客対応にかけた時間」を「勤務時間」で割ることで求められます。
稼働率(%)=顧客対応の時間 ÷ 勤務時間✕100
たとえば、オペレーターが1日8時間勤務し、そのうち6時間を顧客対応に費やしたとすると、1日の稼働率は以下のとおりです。
6時間(顧客対応の時間)÷8時間(勤務時間)× 100 = 75%
コールセンターの稼働率には適正な範囲があり、この範囲を外れるとさまざまな問題が発生する可能性があります。コールセンター(コンタクトセンター)の国際的な運営規格である「COPC CX規格」では、月平均86%を指標値と定めています。
日本の多くのコールセンターでも、80〜85%が適正値とするケースが多いです。一方、70%未満は人員過多によるコスト増やスキル低下、90%以上はオペレーターへの過度な負担や離職リスクを高めるなど、基準から外れることでさまざまな問題の発生が懸念されます。
稼働率 | 状況 | 状態 |
90%以上 | 危険水準 |
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85〜90% | 注意ライン |
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80〜85% | 適正ライン |
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70%未満 | 低すぎる |
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稼働率が90%を超える状態は、一見すると無駄のない効率的な運営に思えます。しかし実際には、オペレーターの過重労働やストレスの増大、応対品質の低下、さらには離職率の上昇といった問題を引き起こすリスクがあります。ここでは、高すぎる稼働率がもたらす具体的な課題を解説します。
稼働率が90%を超えるなど高すぎる状態では、オペレーターは休憩をほとんど取れないまま、常に業務に追われていることになります。こうした状況は心身の疲労やストレスを増幅させ、燃え尽き症候群や体調不良を引き起こすリスクがあるのです。
また、「評価されていない」「働き過ぎている」と感じさせてしまい、仕事に対する意欲や組織への信頼感を損なう恐れもあります。
疲労やストレスが溜まった状態では集中力が続かず、応対の丁寧さや正確さが損なわれる恐れがあります。その結果、対応ミスが増えたり、受け答えがぶっきらぼうになったりして、顧客満足度の低下につながるかもしれません。
電話やチャットが絶え間なく続くと、処理スピードの低下や確認不足など二次的なトラブルも起こりやすく、クレーム増加のリスクも高まるでしょう。
過剰な業務負担はオペレーターのモチベーションを奪い、離職や欠勤の要因となります。特に、コールセンター業界は慢性的に人材不足であるため、一人が抜けるだけで現場の負担はさらに増し、悪循環に陥る懸念があります。
また、採用コストや教育コストがかさみ、経営を圧迫する点にも注意が必要です。
稼働率が高すぎる状況では、新人研修やスキルアップ研修などに割ける時間の確保が困難です。教育の機会が失われた場合、オペレーターは経験に頼って業務を行わなければなりません。
知識やスキルの定着が不十分なまま顧客対応に臨むことになるため、結果として対応品質が不安定化する恐れがあります。長期的にはセンター全体のパフォーマンスを低下させるリスクがあるでしょう。
稼働率が低すぎる状態では、人員コストの無駄やオペレーターのモチベーション低下を招き、長期的にはサービス品質の悪化にもつながります。ここでは、稼働率が低すぎる場合に起こり得る具体的な課題を解説します。
稼働率が70%を下回る状態は、オペレーターが十分に稼働していないことを意味します。一見ゆとりがあるように見えても、実際には人員を必要以上に配置していることで、一人あたりの業務量が減り、人件費やリソースの無駄につながります。
こうした状況が長引けば、業務効率の低下を招き、経営全体への大きな負担となる恐れがあります。
稼働率が低く、暇な時間が多くなると、オペレーターは「自分は必要とされていない」と感じやすく、モチベーションが低下する恐れがあります。さらに、対応機会が少ないことでスキルが磨かれず、既存のスキルさえ鈍っていくでしょう。
結果としてサービス品質が不安定になり、顧客満足度を下げるリスクがあります。
稼働率を適正な範囲に保つためには、データに基づいた継続的な改善が必要です。具体的なポイントは以下のとおりです。
ひとつずつ見ていきましょう。
稼働率を適性に保つためには、まず各オペレーターの稼働状況を正確に把握することが重要です。
オペレーターが、「通話中」「待機中」「後処理」「休憩中」といった状態を記録すれば、稼働率を算出できるだけでなく、業務負荷の偏りも見えてくるでしょう。その結果、待機が多い人には別業務を割り当てたり、応対時間が長い人には会話の流れを見直す機会を与えたりなど、状況に即した改善策の検討が可能となります。
ただし、ステータス項目があまりに多すぎると、運用が手間となり長続きしない可能性があります。そのため、ステータス項目は10個程度に抑える、システムを活用するなど、無理のない運用体制を整えることが大切です。
オペレーターごとの稼働状況を正確に記録したら、次はそのデータを活用してセンター全体の繁閑の傾向を分析しましょう。
たとえば、「この曜日は入電が集中するのに人が足りていない」「この時間帯は落ち着いているのに人が多すぎる」といった状況も、集めたデータを横断して全体像をとらえることで気づけます。
こうした繁閑の傾向を把握することが、精度の高い人員配置やシフト設計につながり、結果として稼働率の安定化につながります。
データ分析によって把握した繁閑の傾向をもとに、人員配置を見直しましょう。繁忙期にはあらかじめ人員を厚くし、閑散期にはシフトを短縮するなど、予測に基づいた対応が効果的です。
さらに、日々の稼働率の変動に応じた調整も欠かせません。稼働率が低い場合は、シフトの見直しや短時間勤務で余剰人員を防ぎます。逆に高すぎる場合は、増員や、リモート勤務、柔軟な勤務時間、インセンティブ設計といった、他社との差別化につながる採用条件を整え、人手を確保することが肝心です。
自社だけで調整が難しいのなら、アウトソーシングを活用して柔軟に補うのも一案です。
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稼働率を最適化するためには、入電が少ない時間帯や閑散期をオペレーターのスキルアップに充てるのもおすすめです。たとえば、新人向けのロールプレイ研修や、過去の通話内容を用いた振り返り学習、商品知識の勉強会などに活用するとよいでしょう。
待機時間を教育へと変えることで、応対スピードやトーク精度の向上につながり、稼働率の安定化にも寄与します。さらに「成長の機会がある」と感じられ、モチベーション維持や離職防止といった効果も期待できます。
稼働率の安定化には、管理者が現場の状況を把握し、適切なフォロー体制を構築することが欠かせません。定期的なフィードバックやこまめなコミュニケーションを通じて、メンタルケアとモチベーション維持を図れば、オペレーターのストレスを大きく軽減できます。
また、モニタリングシステムを活用して応対中の状況をリアルタイムで確認すれば、難易度の高い対応時に即座に支援が行えるため、安心感が高まるでしょう。こうしたサポートは、応対品質や生産性の向上につながり、結果として稼働率の安定化に貢献します。
効率的に稼働率安定化を実現したい場合は、ソリューションの活用が効果的です。
たとえば、IVR(自動音声応答システム)を導入すれば、音声ガイダンスにより問い合わせ内容を振り分けられます。オペレーターがすべての電話を一次対応する必要がなくなり、業務効率の向上が見込めます。
また、AIによる自動文字起こしや要約機能の利用により、通話後の事務作業を大幅に効率化し、稼働率の改善に役立つでしょう。さらに、トーク分析やスコアリングといった機能があれば、組織全体のスキルの底上げも期待できます。
こうした機能を搭載したサービスを導入することで、日々の業務効率と応対品質の双方を高め、長期的な稼働率の安定化が実現します。
コールセンターの稼働率は、オペレーターの業務効率と顧客満足度を両立させるための重要な指標です。適正値である80〜85%を維持することで、コスト効率と品質の最適化が可能となります。
稼働率は、高すぎるとオペレーターの負担増加や品質低下を招き、低すぎるとリソースの無駄やモチベーション低下につながります。そのため、各オペレーターの稼働状況を正確に把握し、データに基づいた人員配置の見直しや教育機会の活用が欠かせません。
また、IVRやAI機能を搭載したソリューションの導入も、より効率的な稼働率の改善に効果的です。長期的な視点で稼働率を安定化させることが、コールセンター運営の成功をもたらすでしょう。
クラウドコールセンターシステム「Miitel」は、稼働状況の可視化やAIによるトーク分析、自動文字起こしなどの機能を搭載。稼働率の改善とともにオペレーターの負担軽減や応対品質の向上を後押しします。効率化と顧客体験向上を実現したい方は、ぜひ「Miitel」の導入をご検討ください。