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音声感情分析とは?コールセンターにおけるメリットやツールの選び方を解説

公開日:2024.12.12

更新日:2024.12.12

KDDIウェブコミュニケーションズ

音声感情分析とは?コールセンターにおけるメリットやツールの選び方を解説

音声感情分析は、人間の音声をAIが分析して、声に含まれている感情を読み取る技術のことを指します。ビジネスの分野でも広く活用されていますが、コールセンターに取り入れることで、応対品質の向上や成約率のアップ、業務の効率化に役立ちます。

音声感情分析を最大限に活用するには、AIの仕組みや強み、利用上の注意点を理解したうえで、自社で解決したい課題と照らし合わせながら検討することが大切です。この記事では音声感情分析の概要やメリット、注意点を紹介します。

音声感情分析とは

音声感情分析とは

音声感情分析とは、AIが人間の声から感情を読み取る技術のことです。音声の周波数を解析することで、楽しさや怒り、悲しみといった人間の感情を識別します。言葉だけではとらえにくい感情のニュアンスも読み取れるという特徴があります。

特にコールセンターやコンタクトセンターでは、顔が見えない相手とのやりとりが一般的です。そのため、音声感情分析の導入が特に有効と言えます。

音声感情分析の仕組み

音声感情分析の仕組み

音声感情分析は、音声の周波数や音量、ピッチ(音の高さ)などをAIが解析し、話し手の感情を読み取る仕組みです。

まず、音声の周波数成分を細かく分析し、感情に関わる特徴を見つけ出します。そして、その特徴をもとに「喜び」「悲しみ」「怒り」などの感情に分類します。音声処理と分析を繰り返すことで、基準となるデータが蓄積され、データが増えるほど感情の認識精度も高まります。

音声感情分析ツール・システムの種類

音声感情分析ツール・システムの種類

音声感情分析ツール・システムには、「コールセンターシステム搭載型」「音声認識サービス搭載型」「API対応型」の3つのタイプがあります。それぞれの特徴を紹介します。

コールセンターシステム搭載型

コールセンターシステムは、顧客から寄せられる問い合わせ対応や顧客情報の管理、アウトバウンドコールなどをスムーズに行うためのシステムです。昨今のコールセンターシステムにはAIが搭載されているものも多いため、リアルタイムでの通話録音や自動文字起こしといった機能が備わっている場合もあります。

 音声感情分析機能が搭載されているものであれば、従来の機能と組み合わせて、より精度の高い応対や管理に活用できます。 

音声認識サービス搭載型

音声認識サービスとは、音声認識AIを用いて通話中の音声をテキスト化する機能を有するサービスのことです。このサービスに音声感情分析機能が加わることにより、音声のテキスト化と同時に感情の分析も行えるようになります。

音声認識技術と音声感情分析を組み合わせることで、会話のリズムや言葉遣いから「静かな怒り」のような、日本人特有の抑えた感情の判別も可能になります。

API対応型

音声感情分析ツールやシステムは、APIを活用して既存のシステムやアプリケーションにも連携できます。API(Application Programming Interface)とは、ソフトウェアの一部機能を共有する仕組みです。APIは連携の柔軟性が高く、コールセンターシステムがAPI連携に対応している場合、追加コストを抑えながら機能を拡張できます

コールセンターシステムと感情分析システムを組み合わせて利用することもできるでしょう。

コールセンター・コンタクトセンターで音声感情分析を利用するメリット

コールセンター・コンタクトセンターで音声感情分析を利用するメリット

コールセンターやコンタクトセンターで音声感情分析を利用するとどのようなメリットを得られるのか、それぞれのメリットを紹介します。

セルフコーチングやオペレーター指導に役立てられる

どのようなやり取りによって顧客が喜んだのか、あるいは怒ったのかなど、音声感情分析で得られた情報はセルフコーチングやオペレーター指導、対応品質の向上に役立ちます。顧客の感情をリアルタイムで分析し、スコアとして定量的に表示すれば、改善点を早期に発見して迅速かつ効果的なセルフコーチングも可能です。

また蓄積した感情分析の結果を通話データと合わせて振り返ることで、顧客の不安解消に効果的なフレーズや声色、反対に不満を抱かれやすい要因も明らかにできます

さらに分析結果から得られた好事例を集めることで、オペレーターの育成教材としても活用でき、コールセンターやコンタクトセンター全体の品質向上にも役立ちます。

成約率の向上につながる

オペレーターが顧客の感情を把握しながらセールスを行えることも音声感情分析のメリットです。スーパーバイザーも感情分析の結果をもとに、ウィスパリング機能などを用いてオペレーターにクロージングを促す的確な指示が出せるようになります。

たとえば、見込み客の感情が「興味」や「期待」といったポジティブな状態であれば、オペレーターは商品の魅力を積極的に伝え、セールスを進めやすくなります。またスーパーバイザーが「クロージングに向けて〇〇を行ってください」と具体的なアドバイスを提供することも可能です。

通話中のリアルタイムな音声感情分析により、見込み客の感情に合わせて臨機応変に対応できます。成約率の向上にも貢献できるでしょう。

顧客満足度の維持・向上につながる

音声感情分析を活用すると、通話中に顧客や見込み客のネガティブな感情を検知して、スーパーバイザーにアラートを表示できます。これにより、顧客の不満が高まる前に迅速な対応ができ、顧客満足度の維持にも効果的です。

また、過去の問い合わせ内容を振り返ることで、顧客が満足している点や不満を感じている点も簡単に把握できます。得られた情報をふまえて改善施策に反映させると、顧客満足度の向上にも役立ちます。

スーパーバイザーの作業を効率化できる

スーパーバイザーは、各オペレーターの会話状況を常に把握する必要があるため、業務負担が大きくなりがちです。音声感情分析を活用すると、顧客やオペレーターの精神状態がリアルタイムで把握できるようになり、状況に応じたサポートも素早く行えます。

さらに、音声感情分析でオペレーターの「不安」「ストレス」「考え中」といった感情をモニタリングすることで、各オペレーターが苦手とする問い合わせ内容の特定も可能です。このデータをもとに、必要な分野に対して集中的な教育やフォロー体制の強化も図れます。

スーパーバイザーがオペレーターの対応方法を細かくチェックする必要が減れば、少人数のスーパーバイザーでも効率的な業務監視とサポートも行えます

スムーズなVOC収集につながる

VOCとは「Voice Of Customer」の略称で、顧客から収集した意見や問い合わせ内容などを指します。コールセンターでは顧客の要望やクレームが寄せられる以外に、アンケートへの回答やSNSにおけるレビューなどが含まれることもあります。

VOCを収集する際は、音声データを読み取るのが一般的ですが、その際も音声感情分析が有効です。

具体的には、文字起こしのデータと音声感情分析のデータを組み合わせることで、問い合わせ時に顧客がどのような悩みを抱えているのか、どういう感情なのかといった情報も正確に読み取れます。

そのため、自社の商品・サービスの改善につながるヒントを見つけたいときにも最適です。

音声感情分析を活用する際の注意点

音声感情分析を活用する際の注意点

音声感情分析を活用する際は、いくつかの注意点があります。ここでは、あらかじめ考慮しておきたいことを4つ紹介します。

正確に感情を読み取れない可能性がある

音声認識技術は、まだ発展途上の段階にあります。現状、すべての人の感情を100%正確に読み取れるとは限りません。背後に聞こえる騒音や話者の発音のクセにも影響を受けやすく、分析の質を高めるには高度な技術が必要です。

そのため、解析結果に誤りがあったり、データ同士の因果関係が間違っていたりと、重大なエラーが起きる可能性も否定できません。導入を考えているなら、分析結果を鵜呑みにしすぎず、AIと人間による分析を組み合わせるといった工夫が必要になります。

システムやツールの導入コストがかかる

AIを活用した音声感情分析を導入するには、ある程度のコストが発生します。したがって、目的や活用範囲を明確にしたうえで、必要なシステムやツールを絞り込むことが重要です。

また効果を最大限に引き出すためには、導入前に費用対効果を検証し、目標とする成果指標を明確にしておくことも求められます。

具体的には、どのような効果があれば「成果」と見なせるかを定め、KGI(重要目標達成指標)やKPI(重要業績評価指標)を設定し、それらとコストを比較することで、より効果的に活用できます。

システムやツールの保守管理が必要となる

AIは蓄積されたデータをもとに分析・予測を行いますが、間違った方向に学習が進んでしまう場合もあります。そのため、定期的にメンテナンスを行い、必要に応じて適切な軌道修正をすることが重要です。

システムやツールの保守管理は、ベンダーやサービス提供者によって内容が異なります。メンテナンス業務をすべてベンダーに一任できる場合もあれば、自社で対応しなければならないケースもあります。

ベンダーのサポート内容を確認し、自社での対応が必要な場合は、人材の活用や人員配置の見直しも必要です。

ルールやマニュアルを見直す必要がある

音声感情分析に用いるAIは、使い方次第でトラブルを引き起こす可能性があるため、明確な運用ルールが必要です。また、現場担当者が機能を充分に使いこなせなければ、せっかくのメリットを活かしきれないこともあります。

音声感情分析のメリットを最大限に引き出すためには、システム導入時のマニュアル作成に加え、現場が混乱しないように、事前の周知や使い方の説明も求められます。

音声感情分析ツール・システムを選ぶポイント

音声感情分析ツール・システムを選ぶポイント

ここからは、選定時に確認しておきたいポイントを紹介します。

どのような感情に対応しているか

音声感情分析では、「平常」「喜び」「怒り」「悲しみ」「元気度」といった指標で感情を表します。しかしシステムやツールによって読み取れる感情は異なるため、導入を検討しているツールがどの感情に対応しているか、事前の確認が必要です。

また細かく分類しすぎると感情の把握や分析が難しくなります。感情の分類が5つ程度であれば、分析結果が表形式でまとめやすく、確認もしやすいでしょう。

付加機能は充実しているか

音声感情分析システムやツールによっては、複数の機能を備えていることも珍しくありません。たとえばコールセンター向けシステムの場合は、IP電話や通話録音、文字起こしなどの機能に加えて音声感情分析機能を搭載しているといったパターンがほとんどです。

多機能だからといって自社が必要とする機能が充分に搭載されていなければ、業務の効率化や顧客・従業員の満足度向上には直接つながりません。

また機能が増えるほどコストが高くなりやすいため、導入前に要件定義を行い、各機能の必要性を充分に検証することが大切です。

安全性が高いか

音声感情分析システムやツールの運用では、顧客の個人情報を扱う場面も少なくありません。万が一情報が外部に流出した場合は、企業イメージの低下や信用失墜といった重大なトラブルに発展する恐れがあります

導入を検討しているなら、システムやツールの安全性も確認しておくと安心です。

具体的には、多要素認証やデータ暗号化、ログ監視などの主要なセキュリティ機能が備わっているかがポイントです。システムのセキュリティポリシーや認証資格、導入実績なども併せて確認しておくと、導入前の段階で充分に安全性を検証できます。

外部システムと連携しやすいか

音声感情分析は、外部のシステムやツールと連携することで最大限に活用できます。

たとえば、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールと連携すると、音声感情分析のデータをグラフや表として可視化でき、レポート形式で出力することも可能です。

また、CRM(顧客情報管理)ツールやIVR(自動音声応答)と組み合わせることにより、カスタマーサービスの効率を高められます。こうした外部システムとの連携のしやすさも、システム選定時の重要なポイントとなります。

サポートが充実しているか

サポート体制が充実していると、予期せぬトラブルに対しても冷静に対処しやすくなります。たとえば、学習データに誤った情報が含まれている場合、想定外の分析結果が表示されるケースが考えられます。

こうした問題に迅速に対応するためには、ベンダーのサポート体制が整っていることが大切です。サポートの充実度を確認する際は、サポートチャネルの種類や問い合わせ窓口の対応範囲、提供される支援内容などをチェックすると良いでしょう。

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「ujet.cx」は、スマートフォンの普及によって大きく変わったコミュニケーション手段に適応する、スマートフォンの機能をフル活用できるコンタクトセンターソリューション(CCaaS)です。モバイル端末の機能を最大限に活用し、シームレスで優れたカスタマー・エクスペリエンスを提供します。

音声通話、メール、チャット、SMS、SNS(WhatsApp)などを利用したマルチチャネルに対応しており、消費者のニーズに合わせた自然なコミュニケーションを行えます。またGoogleが提供する各種AIにより、チャットボットやボイスボットによる自動応答、通話内容のリアルタイムな文字起こしや感情分析、さらには自動要約も可能です

まとめ

音声感情分析を活用することで顧客の感情を理解し、顧客満足度や対応品質の向上、業務効率化につながります。ただし、正しい効果を得るためには、自社の課題や目的に合ったツールやシステムを選定したうえで、適切な運用が求められます。

音声感情分析に対応したコールセンター向けシステムをお探しなら、UJETがおすすめです。UJETは、リアルタイムな通話品質分析や感情分析、オペレーター支援など、コールセンターの業務効率化や品質向上に役立つ機能が充実しています。

自社のコールセンターに課題を感じているなら、ぜひUJETをご検討ください。

執筆者情報

KDDIウェブコミュニケーションズ
KDDIウェブコミュニケーションズ
2013年に、日本ではまだ黎明期であったCPaaSの取り扱いを開始。CPaaSやCCaaSなどコミュニケーションのDXの専門家として、「コミュニケーションの多様性」を活用するための記事をお届けします。


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