
コールセンターは、顧客と企業の重要な接点の一つです。そのため、顧客がコールセンターを利用した際の体験の価値を示す指標であるCX(カスタマーエクスペリエンス)を向上させることは、企業の持続的な成長において欠かせません。
本記事では、コールセンターにおけるCXの意味や重要性、CX向上によって得られる効果、具体的な方法などについて詳しく解説します。
コールセンターにおけるCX(カスタマーエクスペリエンス)とは、顧客がコールセンターを利用した際に得る体験の価値を示す指標です。電話の操作性、オペレーターにつながるまでの待ち時間、応対の丁寧さや正確さ、アフターサービスの質などさまざまな要素が含まれます。
CXは顧客の感情にも大きく影響を与えます。例えば、オペレーターの対応が不適切だと、顧客は不快感を覚え、その企業の商品を再購入しないかもしれません。一方で、オペレーターの接客態度が良ければ、企業への信頼感が高まり、リピート購入につながることもあります。
CXを調査することで、顧客がサービスをどのように評価しているのかを把握でき、購買意欲の向上や商品の付加価値を高める施策を講じることが可能になります。
情報やモノがあふれている現代において、顧客との直接的な接点となるコールセンターのCX向上は、企業の持続的な成長に欠かせません。
かつての消費行動は、商品の品質や機能性を重視する「モノ消費」が主流でしたが、近年では体験や利用に価値を見出す「コト消費」や「トキ消費」へと移行しています。コト消費は、形として残らないものの、体験や経験として心に刻まれる消費活動を指します。トキ消費とは、その瞬間でしか味わえない特別な「時間」を楽しむことを意味し、現在 注目されている消費スタイルのひとつです。このような消費スタイルの変化により、顧客が得る体験の質が購買行動に大きな影響を与えるようになりました。
一方、IT技術の発展やコロナ禍における外出自粛を背景に、現代ではネット通販が広く普及しています。顧客と企業の接点も、店舗や営業などの対面式から、WEBサイトやSNSを介した非対面化へシフトしています。その結果、モノ以外で他社との差別化が難しくなっているのが現状です。
そのなかで、コールセンターは、商品購入前の不安解決や、アフターサポートなどをとおして、顧客と直接接点を持てる数少ない部署です。WEBサイトやネット広告など多数の消費者に向けた情報発信ではなく、対個人として顧客一人一人に寄り添った課題解決および声掛け・気遣いができます。人ならではの細やかな対応を行うことで、高品質な顧客体験を提供できれば、商品の付加価値を高め、企業全体の価値向上にも寄与するでしょう。
顧客との直接的な接点となるコールセンターのCX向上は、単なる顧客対応の質を高めるだけでなく、企業の競争力を強化する重要な戦略のひとつといえます。
コールセンターのCX向上によって得られる主な効果としては、以下が挙げられます。
それぞれの効果について詳しく見ていきましょう。
顧客が企業や商品・サービスに対して信頼や愛着を持つことを「顧客ロイヤルティ」といいます。ロイヤルティが高い顧客は、繰り返し商品を購入しやすく、結果としてリピート率の向上や顧客単価の増加につながります。
新規顧客を獲得するには多くのコストがかかるため、顧客ロイヤルティを高めて既存顧客を定着させることは、収益安定化において重要な戦略です。また、顧客ロイヤルティの向上は、商品やサービスでの差別化が難しい市場において、顧客が自社を選ぶ理由にもなるでしょう。
特に新規顧客の割合が高い企業では、同じ商品を購入してもらったとしても、集客コストがかかるため利益率が低くなる傾向があります。そのため、コールセンターでの対応を通じて顧客ロイヤルティを高め、リピーターとなる優良顧客を増やすことが、長期的な収益向上に大きく貢献します。
企業にとって、他社との差別化を図り、既存顧客が競合他社へ流出することを防ぐことは非常に重要です。しかし、近年は類似する商品やサービスがあふれているうえに、先述した非対面化もあり、他社との差別化は簡単ではない状況といえます。
かつては価格競争による差別化が主流でしたが、価格を下げ続けることには限界があります。あまりに価格を下げすぎてしまうと、十分な品質の商品やサービスを提供できず、結果的に顧客離れを引き起こしてしまうリスクもあるでしょう。
そこで、コールセンターにおける「人ならではのCXの提供」により、商品やサービスの利用に加えて付加価値を感じてもらうことは効果的な施策となりえます。問い合わせへの丁寧な対応や、不安や悩みに寄り添った声掛け・気遣いは、顧客からの信頼を高めるでしょう。
これにより、同じ商品・同じ価格が並んだ際に「この店で購入したい」と思ってもらえるようになり、ブランドイメージの向上につながります。
CXが向上し、顧客が期待を超える体験を得られると、自然と高評価の口コミが増加します。SNSの普及により、誰もが手軽に情報を発信できる現代において、商品やサービスに対する好意的な投稿は強力な宣伝効果をもたらします。
コールセンターでの対応が好印象であれば、顧客はその体験をSNSやレビューサイトでシェアしやすくなるでしょう。新規顧客を獲得するために自社で広告や宣伝を行うと、多くの時間とコストがかかりますが、口コミによる宣伝効果を活用できれば、それらの負担を大幅に軽減することが可能です。
このように、コールセンターにおけるCXの向上は、リピーターの増加にとどまらず、新規顧客の獲得にも大きく寄与します。
コールセンターのCXを向上させるための具体的な方法として、以下の4つを紹介します。
それぞれの方法について詳しく見ていきましょう。
コールセンターでのCX向上では、オペレーターの応対スキルが顧客の満足度に直結します。
コールセンターは採用が難しく、離職率も高い傾向にあり、人手不足が深刻化しがちです。人手不足の状況では教育に割く時間を確保しづらく、応対品質低下を招きかねません。その結果、お客様は不満を感じてしまうでしょう。
採用難や離職防止への対策はいくつかありますが、業務の難易度の高さが原因となっている場合、以下のようなサポート施策が有効です。
近年ではAIを活用した感情分析・トーク分析機能が搭載されたシステムもあります。人の手による教育の工数を削減しながら、オペレーターの業務効率化や、回答の最適化を図れるため、スキルの向上に貢献します。
コールセンターのCXを向上させるには、あふれ呼の発生を防ぐことが重要です。あふれ呼とは、電話の回線数よりも入電数が上回ることで、顧客がオペレーターにつながらず、待たされてしまう状態を指します。
トランスコスモス社の調査によると、顧客がカスタマーサポートにストレスを感じる理由の約60%が「待たされること」であるという結果がでています。そのため、あふれ呼の発生は顧客体験低下に大きな影響を及ぼすといえるでしょう。
あふれ呼の防止・時間短縮のためには、着信時に再生する自動音声をあらかじめ設定し、用件に応じて着信先を振り分ける「IVR設定」が有効です。電話取次の手間を簡略化することで、効率的な対応が可能になり、あふれ呼状態の発生防止・短縮につながります。
また、対応可能数以上の着信が入った場合、対応できない着信を待機中にし、オペレーターを呼び出すまでの間、顧客へ音声メッセージを流せる「キューイング機能」の活用も効果的です。「なぜだかわからないが通話がつながらない」「いつまで待てばいいかわからない」といった顧客のストレスを軽減できます。
コールセンターで収集したデータを活用した取り組みを行うことで、CXの向上を図れます。
例えば、問い合わせ内容を、「ポジティブな意見」「ネガティブな意見」「疑問・要望」といったカテゴリに分け、それぞれどのサービスに関するものが多いのか、どういったやり取りが課題解決や満足につながったのかを分析します。
この分析結果をもとに対応フローを構築すれば、顧客の特性に寄り添った対応をしやすくなるでしょう。また、上手くいった対応を元にモデルケースを構築すれば、オペレーターの負担軽減や、応対スキルの均質化および向上にも効果的です。
このようなデータ活用の循環を生み出すことで、顧客満足度と業務効率の両方を向上させることができます。
顧客が自身の都合に合わせてチャネルを選べるように、電話やメール、チャット、SNSなど複数の問い合わせチャネルを設けている企業も少なくありません。
しかし、チャネル間の連携が不十分だったり、チャネルごとに対応できる内容に制限があるケースも依然として多いのが現状です。顧客は別チャネルへ問い合わせるたびに、同じ説明を繰り返さなければならず、「たらいまわしにされた」「何度も同じ話をして無駄な時間を使った」と不満を感じる恐れがあります。
顧客体験を損なわずスムーズな課題解決を実現するためには、チャネル間の連携を強化して、シームレスな情報管理を行うことが重要です。
具体的な方法として、CRMやSFAとコールセンターシステムを連携させることが挙げられます。顧客の基本情報や対応状況を一括管理することで、データをもとにどのチャネルからでも等しく対応が可能になります。
チャネル間を跨ぐことによって顧客の説明の手間を省略でき、顧客のストレスが軽減され、企業への信頼度や満足度の向上につながるでしょう。
コールセンターにおけるCX改善のための施策は、短期間で成果が現れるものではありません。施策ごとにKPIを定め、長期間にわたって改善を継続することが大切です。
コールセンターのCX向上に関わるKPIの例は以下の通りです。
業務効率や生産性に関するKPI |
● 平均通話時間(ATT) オペレーターと顧客の通話時間の平均値 ● 平均後処理時間(ACW) 顧客との通話終了後、オペレーターが後処理にかかる時間の平均値 ● 平均処理時間(AHT) 平均通話時間と平均後処理時間をあわせ他数値 |
応対品質や顧客満足度に関するKPI |
●平均応答速度(ASA) 着信が発生してから電話を取るまでの平均時間 ●応答率 コンタクトセンター全体の着信に対して、実際に電話がつながった割合 ●放棄率 着信に対して電話がつながらなかった割合 |
マネジメントに関するKPI |
●稼働率 オペレーターの勤務時間において顧客への対応時間が占める割合 ●欠勤率 オペレーターの勤務日数に対する欠勤日数の割合 ●離職率 一定期間においてどれくらい退職者が発生したかを表す割合 |
KPIに対する成果を細かくチェックすることで、顧客体験向上に影響する良い点と悪い点を特定でき、施策の改善に活用できます。
また、市場や業界のトレンドにも目を向けましょう。顧客のニーズや市場の動向に敏感に反応し、自社の商品やサービスにその変化を取り入れることが重要です。
市場環境にあわせて柔軟にKPIを更新しつつ、定期的な評価・分析により改善を継続しましょう。
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さらに応対記録を自動でデータ化できるため、議事録作成や報告といった事務作業の工数を減らせます。担当者がコア業務へ注力できるほか、蓄積されたデータをもとにしたセルフコーチングも可能です。さらに成績優秀者の話し方を分析してマニュアル化することで応対品質の向上や均一化も実現。生産性はもちろん、商談獲得率や成約率の向上にもつながるでしょう。
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本記事では、コールセンターにおけるCXの意味や重要性や、CX向上によって得られる効果、具体的な方法について解説しました。情報やモノがあふれる現代において、顧客との直接的な接点となるコールセンターのCX向上は、企業の持続的な成長に欠かせないものです。
CX向上によって、顧客ロイヤルティの向上によるリピーター獲得、ブランドイメージの向上による他者との差別化、顧客満足度の向上による宣伝効果などが期待できます。
ただし、CX改善のための施策は短期間で成果が現れるものではありません。施策ごとにKPIを定め、長期的な視点で継続的に取り組むことが重要です。市場環境の変化にも柔軟に対応しながら、PDCAサイクルを回し、改善を積み重ねていくことが求められます。
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