コールセンター業務において、お客様との会話は企業の印象を大きく左右します。しかし多数のオペレーターが対応する環境では、経験やスキルの差によって品質にばらつきが生じやすく、顧客満足度の低下やクレームにつながることもあります。
こうしたリスクを抑え、安定した応対品質を実現するために有効なのが「トークスクリプト」です。応対の流れを標準化することで、誰が顧客対応をしても安定した品質を保てるようになります。また教育ツールとしても役立ち、組織全体のスキルの底上げも期待できます。
この記事ではコールセンターのトークスクリプトを構成する要素や、作成の手順を解説します。トークスクリプトの例文もご紹介しますので、これから作成を考えている方はぜひ参考にしてください。

コールセンターで使われるトークスクリプトとは、顧客対応の流れや会話例をまとめた「台本」のような資料を指します。決められたセリフを記載するだけでなく、問い合わせにスピーディーに対応し、顧客と円滑にコミュニケーションを取るためのガイドラインとしての役割を担います。
コールセンターでは、オペレーターの経験やスキルによって応対品質に差が出やすい傾向があります。特に、入ったばかりの新人や経験の浅いオペレーターと、ベテランオペレーターでは品質の差が顕著です。経験の浅いオペレーターは言葉遣いを誤ってしまうことで、クレームを受けるリスクがあります。そこでトークスクリプトを活用すれば、オペレーターが誰であっても、安定した品質での対応が可能になります。
また、トークスクリプトは教育ツールとしても有効です。対応の流れを可視化することで、新人でも短期間で必要なスキルを習得しやすくなり、早期の戦力化が期待できます。応対の標準化と教育効率の向上を同時に実現し、コールセンター全体の生産性の底上げにもつながるでしょう。
トークスクリプトは、大きく分けて以下の3つの要素で構成されています。

それぞれの要素について詳しく見ていきましょう。
オープニングトークは、電話応対における最初に行う会話を指します。挨拶や自己紹介を行い、メイントークへスムーズに移行する流れを作ります。
第一印象を決めるパートになるため、どちらの場合も明るく謙虚な姿勢を心がけることが求められます。また単一の定型文にせず、サービス内容に合わせて柔軟に選べるようにするとよいでしょう。
メイントークは、電話応対の主旨となる最も重要な部分です。顧客の用件を的確に捉え、知りたいことや困っていることを復唱して確認し、適切な解決策を提示することが求められます。
このパートでは、相手の話にしっかり耳を傾けること、要点を整理して簡潔伝えること、相手の理解度や状況に応じて説明の深さを調整することがポイントです。単に回答するのではなく、不安や疑問を解消し、安心感や納得感を与えることを意識すると応対品質を高められます。
クロージングトークは、応対の締めくくりにあたるパートです。感謝を伝え、最後まで丁寧な対応を意識してください。
対応が完了した後は、「何かご不明な点はございませんか?」などと確認し、安心してやり取りを終えられるよう配慮しましょう。また「本日はありがとうございました。〇〇が承りました」といったように、担当者名を再度伝えるとより丁寧な印象を与えられます。

各手順について詳しく見ていきましょう。
初めに、トークスクリプトを活用する目的や活用して達成したいことを定め、作成における軸を決めてください。具体的には、「顧客対応の品質向上」や「営業アポイントの獲得」、「新人教育の効率化」といったものが挙げられます。
また、目的が定まっていれば、内容やトーンを決めることが容易になり、スクリプト全体の方向性がぶれにくくなるでしょう。
商品やサービスの情報や、電話応対時の社内ルール、よくある質問といった電話応対で必要となる情報を整理しましょう。情報をまとめる際は、顧客情報や商品のターゲット層などから、詳細なペルソナを設定することが重要です。
このようなアプローチにより、より実践的なフレーズや想定問答を組み込みやすくなります。
過去の問い合わせ履歴や営業トークの実例を参考にして、顧客からよく聞かれる質問や反応をできるだけ多く洗い出しましょう。
インバウンドでは商品やサービスの仕様・価格・契約内容に関する質問が主になります。一方、アウトバウンドでは断り文句や検討中という反応を想定しておくことが大切です。
このように、事前に起こり得るやり取りに対して準備しておくと、実際の会話に近いスクリプトの作成が可能になります。
想定した質問に対して、どのように返すのが適切かを具体的に検討していきます。たとえば「価格が高い」と言われた場合の切り返しや、クレーム対応時に顧客の不安を払拭する言い回しなどを考えましょう。
過去の応対履歴も参考にしながら、状況別に複数の対応パターンを準備しておくと安心です。過去の対応履歴をもとにパターンを洗い出したい場合は、録音・文字起こし機能が付いた通話ツールの利用をおすすめします。

質問と、その対応が決まったら、会話の構成を組み立てる作業に入ります。オープニングトーク、メイントーク、クロージングトークの3要素をベースに、大まかな流れを整理しましょう。インバウンドとアウトバウンドで主な流れと必要な情報は異なるため、実際の対応フローに即した形で整理するのが望ましいです。
構成が固まったら、顧客の反応に応じた分岐を設計していきます。たとえば、「本人が対応可/多忙/不在」や「課題あり/なし」、「資料送付可/不可」など、応対の分岐パターンを洗い出しましょう。それに応じた対応文を準備することで、トークスクリプトが完成します。
最終段階として、組み立てた構成や対応パターンをもとに、実際の会話で使うセリフとしてトークスクリプトに落とし込みます。そのまま読めば対応できるように、丁寧な話し言葉で構成するのがポイントです。
耳で聞いてすぐに分かるように、長すぎる文や専門用語の多用は避けましょう。また、補足情報や注意点をコメントとして添える、レイアウトを見やすく整えるといった工夫も、トークスクリプトの実用性を高めます。
完成後は実際の運用のなかでフィードバックを受け取りながら、さらなる改善を重ねていきましょう。

コールセンター業務は大きく「インバウンド」「アウトバウンド」の2種類に分けられます。
ここでは、業務形態ごとにトークスクリプトの例文をご紹介していきます。
インバウンドとは、コールセンターにおいて、お客様から受けた問い合わせや注文・申し込みへの対応を行う業務形態のことです。問い合わせ対応では、お客様からの質問や要望に対し、的確な受け答えや満足度を高めるクオリティが求められます。
対応内容は商品の購入から契約内容の確認まで幅広く、想定されるパターンを事前に洗い出しておくことが大切です。ここでは、商品購入のケースを例に、オペレーターの発言例とその際に意識すべきポイントを整理しました。
【商品・サービスの購入の場合の例】
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フェーズ |
オペレーター例文 |
ポイント・注意点 |
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オープニングトーク |
「お電話ありがとうございます。〇〇株式会社の□□でございます。本日はどのようなご用件でしょうか。」 |
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メイントーク |
「◯◯でのご注文ですね。数量はおいくつをご希望でしょうか?」 |
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顧客が個数を答える |
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「ありがとうございます。お客様情報をご登録いたしますので、お名前・ご住所・お電話番号をお伺いします。」 「情報を登録させていただきますので、少々お待ちください。」 |
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顧客がお得な情報がないか尋ねる |
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「はい、現在キャンペーン中で、まとめてご購入いただくと割引が適用されます。」 |
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クロージングトーク |
「そのほかご不明な点はございますか?」 「本日はお忙しいところご連絡いただき、誠にありがとうございました。□□が承りました。失礼いたします。」 |
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アウトバウンドとは、顧客に対して架電し、商品やサービスの提案、既存顧客へのリピート案内などを行う業務形態のことです。
インバウンドと違い、相手の都合に左右されやすく、押し付けがましい印象を与えるとすぐに電話を切られてしまう可能性があります。そのため、オープニングでの印象づけや、顧客に有益な情報を簡潔かつ丁寧に伝え提トークが重要です。
ここでは、新規顧客への商品提案を例に、オペレーターの発言例と文言設定時のポイントを解説します。
【新規顧客に対する商品提案の場合】
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フェーズ |
オペレーター例文 |
ポイント・注意点 |
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オープニングトーク |
「お忙しいところ恐れ入ります。〇〇株式会社の□□でございます。株式会社××様のお電話でしょうか。」 |
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【「はい」の場合】 「ありがとうございます。本日は弊社の◯◯についてご案内させていただきたくお電話しました。今、数分ほどお時間いただいてもよろしいでしょうか。」 |
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【「いいえ」の場合】 承知いたしました。お忙しいところ申し訳ございませんでした。 また改めてお電話いたします。失礼いたします。 |
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メイントーク |
「御社では□□のようなお悩みや課題はございませんか。」 |
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顧客が「心当たりがある」と回答する |
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「〜でしたら、弊社の◯◯がお役に立てるかと思います。現在キャンペーン中で、今月末までにご契約いただくと特別価格が適用されます。もしご興味があれば、資料をお送りしてご検討いただくことも可能です。いかがでしょうか?」 |
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顧客から同意を得る |
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「ありがとうございます。それでは資料送付先を確認させていただきます。」 |
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クロージングトーク |
本日は貴重なお時間をいただき誠にありがとうございました。 今後とも変わらぬご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。 何かご希望やご質問等がございましたら、お気軽にご連絡ください。 担当〇〇が承りました。 ありがとうございました。失礼いたします。 |
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実用的かつ効果的なトークスクリプトを作成するポイントは、以下のとおりです。
それぞれ見ていきましょう。
トークスクリプトは、電話対応時のお手本となるものです。そのため、作成時は新人よりも、豊富な現場経験を持つオペレーターの対応をベースにするのが効果的です。
たとえば、新規契約を獲得できたトークや顧客に安心感を与えた言い回しなど、成果につながった実例を反映するとよいでしょう。このようなアプローチにより、実用的で信頼性の高いトークスクリプトを作れます。
また、トーク分析機能が搭載されたツールを活用すれば、話し方の傾向や成功パターンを数値で可視化することが可能です。定量的なデータをもとにすることで、誰が対応しても同じ成果が出やすく、再現性の高いトークスクリプトの設計がしやすくなります。
トークスクリプトの作成後は、必ずロールプレイングを行い、読みやすさや自然さをチェックしてください。実際に口に出すことで、不自然な言い回しや言いづらいフレーズに気づき、修正につなげられます。
また、ロールプレイは、見落とした表記ミスや、レイアウト上の見づらさなど、視覚的な課題の発見にも有効です。運用を開始する前には、複数人でロールプレイを行い、使用感を確かめておきましょう。
トークスクリプトは、作って終わりではありません。運用開始後は、現場での活用を通じた継続的な改善が大切です。オペレーターが実際に使用して感じた課題やフィードバックをスーパーバイザーと共有し、更新する仕組みを作りましょう。
たとえば、想定していなかった質問が増えたり、言い回しの工夫で応対満足度が向上したりといったケースは、トークスクリプトに反映させます。このような改善により、完成度や実用性を継続的に高められます。
コールセンターのトークスクリプトは、オペレーターの応対品質を標準化し、顧客満足度の向上を実現するために不可欠なツールです。作成の際は、オープニングトーク、メイントーク、クロージングトークの3つの構成要素を意識しましょう。目的設定から具体的な会話文の作成まで体系的に進めることで、実用性の高いトークスクリプトを作れます。
また、経験豊富なオペレーターの対応を参考にし、ロールプレイングによる検証、継続的なPDCAサイクルの実施により、さらなる品質向上が期待できるでしょう。
「MiiTel」は、自動録音、文字起こしおよび感情分析・トーク分析が可能な通話ツールです。実際の応対履歴を参考にしながら、より実用性の高いトークスクリプトを効率的に作れます。
トークスクリプトを用いての応対履歴もデータとして保存し、分析することで、さらなるブラッシュアップにも活用可能です。これにより、コールセンター全体のスキル向上および顧客満足度の向上に寄与します。