ブログ

コールセンターで行うべきカスハラ対策7選|対策の重要性や事例についても紹介

公開日:2025.09.11

更新日:2025.09.11

KDDIウェブコミュニケーションズ

コールセンターで行うべきカスハラ対策7選|対策の重要性や事例についても紹介

昨今、コールセンターでは、顧客が企業に対して行うカスタマーハラスメント(カスハラ)が深刻な問題となっています。顧客からの理不尽な要求や暴言により従業員の業務パフォーマンスが低下したり、ストレスからメンタルヘルスの不調が引き起こされたりした結果、離職リスクの増加につながる恐れがあるからです。

人材流出は企業にとっても大きな損失となります。従業員を守って生産性を維持しつつ、健全な顧客関係を構築するためにも、カスハラ対策を講じることが必要です。

本記事ではコールセンターで講じるべき具体的なカスハラ対策や、事例を解説します。

コールセンターで起こるカスハラとは

コールセンターで行うべきカスハラ対策7選|対策の重要性や事例についても紹介

カスハラとは、顧客が従業員に対して、理不尽・過剰な要求や暴言・威圧的な態度をとる行為のことです。

コールセンターで起こるカスハラの例として、以下のようなものが挙げられます。

  • 長時間にわたる一方的なクレーム
  • 繰り返しの電話・同様の要求のエスカレート
  • 担当者を名指しで非難・人格を否定する暴言
  • 「責任者を出せ」と執拗に迫る
  • 無理な謝罪や補償を要求される
  • 私的な連絡先を聞き出そうとするなどのプライバシー侵害
  • 業務と関係のない説教や中傷、差別的な発言

コールセンターではオペレーターと顧客が顔を合わせないため、実店舗よりも顧客が攻撃的になりやすいといわれています。従業員を守るためにも、企業として適切なカスハラ対策が欠かせません。

コールセンターで講じるべき7つのカスハラ対策

コールセンターで講じるべき7つのカスハラ対策

コールセンターにおけるカスハラ対策は企業全体で取り組まなければならない重要な課題です。従業員を守り、健全な顧客関係を構築するためには、具体的かつ効果的な対策を講じる必要があります。

ここでは、コールセンターで策定すべき主要なカスハラ対策として、以下の7つをご紹介します。

  • 組織内で「カスハラ」の定義を明確にする
  • カスハラへの姿勢を明文化・発信する
  • カスハラ対応マニュアルを作成する
  • SV・上司へのエスカレーション体制を整備する
  • カスハラに対して毅然とした姿勢を示す
  • 情報の記録・共有体制を整備する
  • 相談窓口を設置する

一つずつ見ていきましょう。

組織内で「カスハラ」の定義を明確にする

対策の第一歩として、社内で「カスタマーハラスメント」を明確に定義しましょう。特に、コールセンター業務では、正当なクレームと悪質な要求の線引きが曖昧になりやすいため、定義を共有することで現場の判断力が高まり、対応の一貫性を保ちやすくなります

厚生労働省が公開している「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、以下のように定義づけられています。

measures-against-customer-harassment-8

画像出典:カスタマーハラスメント対策企業マニュアル作成事業検討委員会

上記を参考にしながら、実際の事例やオペレーターとのヒアリングをもとに、通話時間やフレーズなど、より具体的な基準に落とし込んでいくと良いでしょう。また、定義した内容は、マニュアルや研修資料にも明記し、全従業員に浸透させることが欠かせません。

カスハラへの姿勢を明文化・発信する

「カスハラを許さない」という企業の姿勢を社内外に明確に打ち出すことで、カスハラを未然に防ぐ効果が期待できます。

例えば、ホームページなどにトップのメッセージとしてカスハラへの対応方針を掲げることで、顧客に対して適切な線引きが可能になり、現場の安心感にもつながります。

また、姿勢を具体的に示す手段として、「通話内容は品質向上および迷惑行為防止のため録音しています」という音声ガイダンスを活用することも有効です。

トビラシステムズ株式会社が実施した「電話によるカスタマーハラスメントに関する調査レポート」によると、約40.7%の企業が「通話前の録音告知メッセージ」が役立ったと回答しています。

通話録音の存在をあらかじめ知らせることで、不当な言動の抑止効果が期待でき、カスハラの未然防止に寄与します。

参考:電話によるカスタマーハラスメントに関する調査レポート|トビラシステムズ株式会社

カスハラ対応マニュアルを作成する

よくある迷惑行為や不当要求への対応方法をマニュアルとしてあらかじめ整備しておけば、カスハラに直面した際に現場の混乱を防ぐことができます

対応パターンをフローチャート化したり、「望ましい対応・望ましくない対応」の具体例を示したりすることで、経験の浅いスタッフでも迷わず対応できるでしょう。また、被害時の記録方法についてもルールを定めておけば、証拠保全や対応の透明化につながります。

さらに、整備したマニュアルを実践で活用し、研修やロールプレイングの実施も効果的です。正当なクレームとカスハラを見極め、初期対応を体得できる機会を設けましょう。

SV・上司へのエスカレーション体制を整備する

カスハラ対策では、実際に対応を行うオペレーターが一人で抱え込まない体制を整えておくことも重要です。顧客から理不尽な言動があった際に、速やかに上司やSVへエスカレーションできる体制が整っていれば、精神的な負担軽減につながります

また、対応を引き継ぐ条件や判断基準をあらかじめ明文化しておけば、組織全体として一貫した対応ができるでしょう。迅速な問題解決によって業務遅滞を最小限に抑えられる可能性も高まります。

例えば、顧客の声色や口調から感情を分析できるツールを導入することで、SVが適切なタイミングで介入することが可能です。その結果、カスハラの早期発見と迅速な対応が実現し、現場の負担軽減にもつながります。

参考記事はこちら:音声感情分析とは?コールセンターにおけるメリットやツールの選び方を解説

カスハラに対して毅然とした姿勢を示す

カスハラを受けた際には、企業としてのルールや方針に基づき、毅然とした対応を行うことが重要です。感情的に応じるのではなく、相手の主張に耳を傾けつつも「これ以上はお受けできません」と適切な線引きを行う冷静さが求められるでしょう

特に近年では、オペレーターをカスハラから守る手段として、AIによるバーチャルエージェントの活用も注目されています。ただし、無為にAI対応を続けると、顧客の怒りをあおる可能性もあるため注意が必要です。

とりわけ顧客の不満が高まりそうな場面では、即座にオペレーターや責任者に引き継ぐ体制を整えておくことが大切です。

情報の記録・共有体制を整備する

カスハラに適切に対応するためには、カスハラの事実を記録し、社内で共有する体制を整えることが重要です。例えば、通話録音は言動の証拠として法的にも有効であり、録音データを要約・分析できる仕組みがあれば、効率的に対応履歴を管理できます

また、記録をもとによくある悪質クレームやその対応例をナレッジ化することで、研修やマニュアルのブラッシュアップに活用できるため、対応力の底上げにもつながるでしょう。

参考記事はこちら:
文字起こしの自動化でコールセンター業務を効率化! AI導入のメリット、おすすめサービスをご紹介
コールセンターにおけるトーク分析とは?必要性や実施時のポイント、活用できるツールを解説

相談窓口を設置する

企業として、カスハラ被害を受けたスタッフが安心して相談できる窓口を設けることで、心理的安全性の確保につながります。被害の程度や状況の把握がしやすくなり、迅速な対応も可能となるでしょう。

社内に専用窓口を設置するほか、上司と気軽に連絡が取れるチャットツールの活用や、複数人で対応できるチーム体制の構築も有効です。さらに、悪質なケースに備えて警察や弁護士と連携できる外部の相談ルートを確保しておくと、オペレーターの安心感に寄与します。

厚生労働省の「あかるい職場応援団」では、各種ハラスメントの相談窓口一覧を公開していますので、一度確認してみてください。

参考:相談窓口のご案内|あかるい職場応援団 -職場のハラスメント(パワハラ、セクハラ、マタハラ)の予防・解決に向けたポータルサイト-

コールセンターにおけるカスハラ対策の事例

カスハラ対策の例

近年では、多くの企業がカスハラに対して具体的な取り組みを始めています。ここでは、コールセンターにおけるカスハラ対策の事例を2つご紹介します。

実際のカスハラ対策とはどのようなものか、順番に把握しましょう。

事例1

コールセンターのオペレーターが、顧客からの暴言・脅迫・個人情報の要求などによりメンタルヘルスの不調を起こし、約1ヶ月間業務に復帰できない状況に陥りました。

このような事態を受け、オペレーターを対象にアンケート調査を行ったところ、コールセンターで働くオペレーターの約8割がカスハラ被害を受けていることが判明したのです

また理不尽な要求や発言に対して、我慢している社員が多数存在していることも明らかになりました。これらの問題に対処するため、企業側は以下のような取り組みを行っています。

【企業の取り組み】

  • マニュアル整備:カスハラ対応マニュアルを作成し研修を行う
  • 相談窓口設置:専用相談窓口を設置し、社員からの相談を受ける
  • データの記録:カスハラ行為を伴うお客様の対応を記録し、社内データベースに登録することで、情報が全社で共有されどのコールセンターでも適切に対応できるようにする

事例2

サポートデスクで、担当者が長時間にわたり暴言を浴びせられるカスハラ被害を受けたと、社内の法務部へ相談がありました。

これを契機に本格的なカスハラ対策がスタートし、まずは社内アンケートを実施して現場の実態把握とデータ収集を実施しています。

厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を参考にしながら、対策の必要性を整理しました。その後、経営層への提言を経て、社内全体での取り組みが始まりました。

【企業の取り組み】

  • カスハラに対する姿勢の発信:カスハラに対する会社の考えをホームページにて社外に発信する
  • 相談窓口設置:カスタマーハラスメント専門チームおよび専門窓口を設置する
  • オペレーターのメンタルケア:カスハラ被害者がメンタリングを受けられる環境を整備する
  • ガイドラインの整備:社内向けにカスハラ対応ガイドラインを作成する

コールセンターにおけるカスハラ対策の重要性

コールセンターにおけるカスハラ対策の重要性

従業員の安全を確保し、企業の健全な運営を守るためにも、カスハラ対策は欠かせません。ここでは、コールセンターでカスハラ対策が必要な理由として、特に重要な2点をご紹介します。

オペレーターの心身に直接的な影響が及ぶ

measures-against-customer-harassment-9

画像出典:電話によるカスタマーハラスメントに関する調査レポート 暴⾔や⻑時間の電話|トビラシステムズ株式会社

コールセンターにおいてカスハラが生じた場合、最前線で対応するオペレーターには深刻な影響が及ぶ可能性があります。トビラシステムズ株式会社が実施した「電話によるカスタマーハラスメントに関する調査レポート」によると、カスハラを受けた従業員のうち、66.1%が「怒りや不安、不安感を感じた」と回答し、49.8%が「仕事への意欲が低下した」と回答しています。(重複回答あり)

こうしたストレスの蓄積は、頭痛や睡眠障害、耳鳴りといった健康被害に発展するケースも少なくありません。結果として、離職や長期休職といった深刻なリスクを引き起こす可能性もあるでしょう。

実際に、カスハラを受けたことで退職や入院に至ったという声も報告されており、企業にとっても見過ごせない課題となっています。

企業の経営資源損失・イメージ低下を招く

カスハラは従業員だけでなく、企業全体の経営資源や社会的信頼にも深刻な影響を及ぼします。

経営資源の損失

カスハラが発生すると、その対応としてクレーム処理、社内調整、法的措置の検討など、多くの時間や人員が必要になります。さらに、対応に疲弊した従業員が離職すれば、人材の再確保や教育にコストがかかります。

こうした人的・物的コストの増大を防ぐためには、カスハラの発生を未然に防ぎつつ、万が一発生した場合にも損失を最低限に抑えられるよう、適切な対策が必要です。

サービス品質・企業イメージの悪化

カスハラが発生すると、オペレーターは一人の顧客対応に多くの時間を割かれるため、他の顧客への対応が遅れ、顧客満足度の低下を招くおそれがあります。また、対応の様子がSNSなどで拡散されることにより、企業のブランドイメージが毀損されるリスクも高まるでしょう。

こうしたリスクは、顧客離れや取引先との信頼低下を招く要因となるため、早急かつ継続的な対策が求められます。

クラウドコンタクトセンター「ujet.cx」のご紹介

UJET.CX

「ujet.cx」は、スマートフォンの普及によって大きく変わったコミュニケーション手段に適応する、スマートフォンの機能をフル活用できるコンタクトセンターソリューション(CCaaS)です。モバイル端末の機能を最大限に活用し、シームレスで優れたカスタマー・エクスペリエンスを提供します。

「UJET」はGoogleが提供するコンタクトセンターに特化したさまざまなAI機能(CCAI)を搭載していますが、その中のひとつに、高度な自然言語処理を行えるバーチャルエージェントが含まれています。これによりカスハラを行う顧客に対してはバーチャルエージェントによる無人対応を徹底したり、もしくは顧客の音声から感情分析を行って責任者へ直通させるルーティングを組んだりといった対処が可能です。顧客対応を最低限に抑え、カスハラ対応をさせないようにすることで、オペレーターの心身の安全と健康を守ることができるのです。

また「UJET」では、顧客のスマートフォン内の動画/静止画や、スマートフォンが持つ生体認証機能や位置情報/OS情報なども取得・活用できます。この機能により応対を始める前から必要な前提情報を揃えておけるため、適切なサポート手法の提示とスピーディーな問題解決を実現でき、顧客満足度の向上につながります。

UJETの詳細を知りたい方は、ぜひ下記ボタンよりサービス紹介ページをご覧ください。

まとめ

コールセンターにおけるカスハラは、オペレーターのメンタルヘルスや業務パフォーマンスに深刻な影響を及ぼすだけでなく、企業全体の信頼性や生産性を損なうリスクもはらんでいます。組織としては、被害の記録・情報共有・社内体制の整備・毅然とした対応など、多角的な対策を講じることが不可欠です。

KDDIが提供するUJETを活用すれば、通話の録音・要約・感情分析機能によって、カスハラの検知から記録、分析までを一元的に行う体制を整備できます。さらに、バーチャルエージェントによる一次対応や、顧客の感情に応じたエスカレーション体制の構築により、現場の負担軽減にも貢献します。

従業員の安心と顧客対応品質の両立を目指す企業は、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。

執筆者情報

KDDIウェブコミュニケーションズ
KDDIウェブコミュニケーションズ
2013年に、日本ではまだ黎明期であったCPaaSの取り扱いを開始。CPaaSやCCaaSなどコミュニケーションのDXの専門家として、「コミュニケーションの多様性」を活用するための記事をお届けします。


「コールセンター」の最新記事 Related post