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カスハラはどう対策する?対策の重要性や企業が取り組むべき具体例を解説

公開日:2024.08.07

更新日:2024.08.22

KDDIウェブコミュニケーションズ

カスハラはどう対策する?対策の重要性や企業が取り組むべき具体例を解説

昨今、顧客が企業に対して行うカスタマーハラスメント(カスハラ)が深刻な問題となっています。顧客からの理不尽な要求や暴言により従業員の業務パフォーマンスが低下したり、ストレスからメンタルヘルスの不調が引き起こされたりした結果、離職リスクの増加につながる恐れがあるからです。

人材流出は企業にとっても大きな損失となります。従業員を守って生産性を維持しつつ、健全な顧客関係を構築するためにも、具体的なカスハラ対策を講じることが必要です。

カスハラ対策の重要性

カスハラ対策の重要性

従業員の安全を確保し、企業の健全な運営を守るためにも、カスハラ対策は欠かせないものとなっています。ここではカスハラ対策がどうして重要なのか、カスハラによってどのような影響があるのかを見たうえで考えていきましょう。

従業員への影響

従業員への影響として、以下の3つが挙げられます。

  • 【業務効率の低下】精神的なストレスが集中力や判断力を低下させ、業務効率が著しく悪化する
  • 【健康被害】頭痛・睡眠障害・精神疾患・耳鳴りなどの症状が現れるなど、従業員の健康に影響を及ぼす可能性がある
  • 【離職リスクの増加】カスハラ被害を受けた従業員は、職場への恐怖や苦痛から、転職や退職を選択するケースもある

カスハラ被害による従業員の離職は、企業にとって貴重な人材の損失であり、長期的な成長を阻害する要因となります。

図:心身への影響(顧客等からの暮らしい迷惑行為経験頻度別)

出典:カスタマーハラスメント対策企業マニュアル|厚生労働省

厚生労働省による「職場のハラスメントに関する実態調査」でも、職場でのカスタマーハラスメントが従業員の心身へさまざまな影響を及ぼしている現状が明らかになっています。

企業への影響

カスハラは、企業全体にも多大な悪影響を及ぼします。具体的な内容は以下のとおりです。

具体例

概要

時間とコストの浪費

クレーム対応・社内調査・弁護士への相談など、カスハラ対応に莫大な時間と人材、費用を費やすことになります

業務への支障

従業員の対応に追われることで本来の業務が滞り、企業活動全体に悪影響を及ぼすケースが大半です

人員確保にコストがかかる

カスハラ被害を受けた従業員が退職してしまうことで、新規採用と教育に時間とコストを要します

金銭的損失

場合によっては、商品やサービスの値下げ、代替品の提供などを行わなければなりません

ブランドイメージの低下

カスハラによる風評被害で企業の評判が損なわれ、顧客離れや取引先との関係悪化につながる可能性が生じます

法的責任の発生

カスハラを受けた従業員に対して充分な対応を行えていない場合、企業は安全配慮義務違反※として、損害賠償責任を負う恐れがあります

※「労働者の安全への配慮」は労働契約法第5条で定められており、企業側の順守が欠かせません

利用環境・雰囲気の悪化

カスハラ行為を見聞きしたほかの顧客が不快な思いをしたり、店舗内が騒がしくなり落ち着くことができなかったりします

サービスの利用機会の減少

カスハラ行為によって業務が遅延し、ほかの顧客がサービスを受けられず、顧客満足度が下がります

企業が取り組むべきカスハラ対策

企業が取り組むべきカスハラ対策

カスハラ対策は企業全体で取り組まなければならない重要な課題です。従業員を守り、健全な顧客関係を構築するためには、具体的かつ効果的な対策を講じる必要があります。

ここでは、企業が策定すべき主要なカスハラ対策について詳しく見ていきましょう。

カスハラ対応マニュアルを作成する

カスハラ対応マニュアルを作成することで、カスハラ対策の基礎を固めることができます

マニュアルの例は下記をご覧ください。

概要

事例に基づいた

対応パターンを明確化

よくある迷惑行為・不当要求と、その適切な対応例を記載することで、従業員が迷わずに行動できるようなる

望ましい対応と

望ましくない対応を明確化

具体的な事例を通して、適切な対応と不適切な対応を明確にすることで、従業員の意識を高められる

記録方法を明確化

カスハラ被害を受けた場合は、日時・場所・状況・内容などを記録する必要がある

記録方法を明確にすることで、証拠として活用しやすくなるため、メモ・録音・写真撮影など、状況に応じて適切な方法を選択する準備をしておく

カスハラ対応の研修を行う

実際の現場では、マニュアルどおりにカスハラ対策をとることができない場合があります。そのため、カスハラ対応の研修を行うことが非常に重要です。

研修では、カスハラ事例に基づいた対応フローを学び、状況に応じた適切な対処方法を身につけるための実践的な訓練を行います。特に効果的なのは、ロールプレイングやケーススタディです。

これらの手法を通じて、従業員は実際の状況に近い形で対応を練習でき、実用的なスキルを得られます。

カスハラ対応していることを明文化する

企業のトップが自ら率先して「カスハラを許さない」という強い意志を現場に伝えることが、被害防止の第一歩となります。

具体的には、以下のようなメッセージを繰り返し伝えることが大切です。

  • カスハラは企業全体の問題と認識し、一丸となった対応を表明する
  • 従業員が安心して業務に取り組めるよう、社内体制の強化を約束する
  • 従業員がカスハラ被害を受けた場合、迅速かつ適切な対応を約束する
  • 顧客であっても、理不尽な要求や暴言は絶対に許されないことを明確にする
  • 繰り返し不当な要求を行う取引先には、毅然とした態度で取引停止を示す

これらのメッセージを明文化し、社内外に発信することで、企業のカスハラに対する姿勢を明確にできます

相談窓口を設置する

相談窓口の設置は、カスハラ対策において非常に重要な役割を果たします。カスハラの被害者が気軽に相談できる環境を作ることは、従業員の不安や悩みを解消することにつながるはずです。

また窓口により情報を集め、被害の程度や状況を正確に把握できれば、適切なカスハラ対策を講じられるようになります。

さらに社外の相談先として警察や弁護士と連携することで、不法行為を含む悪質なカスハラや、個々の具体的なカスハラにも適切に対応できます。

クレーム情報を共有できる仕組みを作る

クレーム情報を共有する仕組みを構築することは、効果的なカスハラ対策につながります。これにより、クレームの共通点や原因を分析し、再発防止策を講じられます

また情報共有の仕組みがあることで、担当の従業員がひとりで問題を抱え込んでしまう状態を防ぐことにもつながります。従業員の精神的な負担を軽減し、被害の拡大を抑えることも可能です。

企業と顧客が対等なパートナーシップを築く

近年、顧客と企業の関係性は大きく変化しています。かつての一方的な「お客様第一主義」ではなく、今では顧客と企業とで対等なパートナーシップを築くことが重要です。

このような関係性においては、一方的な要望や無理な要求を毅然とした態度で断ることが肝要です。同時に、企業としての立場や事情を丁寧に説明したうえで、顧客の理解を得る努力が欠かせません。

こうしたアプローチにより、顧客との間に相互理解と尊重に基づく関係を構築できます。カスハラのリスクを低減させることにもつながるでしょう。

AIを活用する

電話対応にAIを活用することも、効果的なカスハラ対策のひとつです。

よくある問い合わせやクレームに対してAIが自動的に応答することで、顧客対応時間の短縮が可能です。 人間のオペレーターがより複雑な案件に集中して対応できるようになるため、業務負担の軽減や生産性の向上にもつながります

最近では感情分析機能を備えたAIも登場しており、カスハラ対策にさらなる可能性をもたらしています。 顧客の声のトーンや話し方から感情を分析できるため、たとえばバーチャルエージェントにそのまま対応させて従業員に替わらないようにしたり、あるいは責任者に直接つないだりといったフローを組むことができます。これにより従業員の業務負担や心理的負荷を軽減できるでしょう。

電話対応に加えてメール・チャット・SNS・WEBフォームなど、さまざまな手段で顧客対応を行うコンタクトセンターでは、AIの重要性がますます高まっています。 AIの活用により多様化する顧客ニーズに効率的に対応しつつ、多彩な機能によって柔軟にカスハラ対策を講じられます。

コンタクトセンターにおいてAIがどのように活用されているか、ご興味がございましたら下記の記事もご参照ください。

AI導入によるコンタクトセンターの可能性とは?導入のメリットやポイント、活用事例を解説

カスハラ対策の例

カスハラ対策の例

業種や企業規模によって異なりますが、多くの企業がカスハラに対して具体的な取り組みを始めています。ここでは、コールセンターと小売業の事例を紹介します。

実際のカスハラ対策とはどのようなものか、順番に把握しましょう。

コールセンターの場合

コールセンターは、顧客との直接的なコミュニケーションが多いため、カスハラのリスクが高い業種のひとつです。

契機となる事案

コールセンターのオペレーターが、顧客からの暴言・脅迫・個人情報の要求などによりメンタルヘルスの不調を起こし、約1ヶ月間業務に復帰できない状況に陥りました。

このような事態を受け、オペレーターを対象にアンケート調査を行ったところ、コールセンターで働くオペレーターの約8割がカスハラ被害を受けていることが判明しました

また理不尽な要求や発言に対して、我慢している社員が多数存在していることも明らかになりました。これらの問題に対処するため、企業側は以下のような取り組みを行いました。

企業の取り組み

  • 【マニュアル整備】カスハラ対応マニュアルを作成し研修を行う
  • 【相談窓口設置】専用相談窓口を設置し、社員からの相談を受ける
  • 【データの記録】カスハラ行為を伴うお客様の対応を記録し、社内データベースに登録することで、情報が全社で共有されどのコールセンターでも適切に対応できるようにする
  • 【AI導入】AIの導入により、顧客との通話中に不適切な言葉や表現が使われた場合は、それらを自動で検出することで、組織的なサポートと迅速な問題解決を実現する

AI導入によるカスハラ対策として、「UJET」であれば、バーチャルエージェント機能の搭載によりオペレーターの対応を最小限に抑えられます。感情分析機能によって利用者の感情や状況からカスハラか否かを判断。カスハラの可能性が高い場合はオペレーターにつながず、じかに責任者へ接続することが可能です。

また顧客に合わせて有人・無人の切り替えもできるなど、オペレーターの負担を最小限に抑える機能が数多く備わっています。カスハラによる心理的負担を軽減することで、オペレーターの離職防止にもつながるでしょう。

さらに生成AIによる会話の自動要約やオムニチャネルの実現により、業務効率化と顧客満足度の向上が期待できる点もメリットです。

小売業の場合

小売業も、カスハラのリスクが高い業種のひとつです。

契機となる事案

「悪質クレーム」の基準が明確でないことや、接客マニュアルに労働者を保護する視点がないことから、企業に対策を求める声が上がっていました

従来の「お客様の声に何でも応える」という対処だけでは、従業員を充分に守れず、企業としての生産性も維持できないと考えるようになりました。

これらの課題を解決するため、企業側は、以下のような取り組みを行っています。

企業の取り組み

  • 【マニュアル整備】厚生労働省による指針労働組合のガイドラインに基づき、悪質クレームの判断基準や対応方法を明確にしたマニュアルを作成・配布
  • 【カスハラへの対応力の育成】マニュアルだけに頼らず、現場の状況に応じて柔軟に対応できるよう、従業員への研修を増強
  • 【警察組織との連携強化】日頃から店舗管理者が所轄警察署と連絡を取り合い、迅速な連携体制を構築することで、複雑な事案には総務部渉外が加わり、警察への相談や届け出などを行いやすくする

これらの対策により、小売業では従業員の安全を確保しつつ、顧客との健全な関係性を築けるようになっています。またこうした取り組みは企業イメージの向上にもつながり、長期的な企業価値の向上に寄与しています。

クラウドコンタクトセンター「ujet.cx」のご紹介

UJET.CX

「ujet.cx」は、スマートフォンの普及によって大きく変わったコミュニケーション手段に適応する、スマートフォンの機能をフル活用できるコンタクトセンターソリューション(CCaaS)です。モバイル端末の機能を最大限に活用し、シームレスで優れたカスタマー・エクスペリエンスを提供します。

「UJET」はGoogleが提供するコンタクトセンターに特化したさまざまなAI機能(CCAI)を搭載していますが、その中のひとつに、高度な自然言語処理を行えるバーチャルエージェントが含まれています。これによりカスハラを行う顧客に対してはバーチャルエージェントによる無人対応を徹底したり、もしくは顧客の音声から感情分析を行って責任者へ直通させるルーティングを組んだりといった対処が可能です。顧客対応を最低限に抑え、カスハラ対応をさせないようにすることで、オペレーターの心身の安全と健康を守ることができるのです。

また「UJET」では、顧客のスマートフォン内の動画/静止画や、スマートフォンが持つ生体認証機能や位置情報/OS情報なども取得・活用できます。この機能により応対を始める前から必要な前提情報を揃えておけるため、適切なサポート手法の提示とスピーディーな問題解決を実現でき、顧客満足度の向上につながります。

UJETの詳細を知りたい方は、ぜひ下記ボタンよりサービス紹介ページをご覧ください。

まとめ

カスタマーハラスメント(カスハラ)は、従業員の健康と企業の健全な運営を脅かす深刻な問題です。先述の事例からもわかるように、各業種に応じた具体的な対策を講じることで、カスハラのリスクを軽減し、従業員の安全と良好な企業運営を守ることができます。

特にコールセンターにおいては、カスハラ対応に時間を割くことで他の顧客の電話対応ができなくなったり、業務効率が低下したりする恐れがあります。このような課題に対しては、AIを活用したソリューションが効果的です。自社の状況と既存システムとの兼ね合いを考慮しつつ、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。

執筆者情報

KDDIウェブコミュニケーションズ
KDDIウェブコミュニケーションズ
2013年に、日本ではまだ黎明期であったCPaaSの取り扱いを開始。CPaaSやCCaaSなどコミュニケーションのDXの専門家として、「コミュニケーションの多様性」を活用するための記事をお届けします。


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