まとめ
企業と顧客をつなぐ窓口として、重要な立ち位置にあるコンタクトセンター。
近年ではテレワークが普及してきたことに伴い、コンタクトセンターをオンプレミスからクラウドベースのものに移行しよう、という向きも増えてきています。『コールセンター白書2023』のアンケート調査によると、音声プラットフォームのクラウド化について「すでにクラウド化している」と回答したのが46%、「次のリプレースでクラウド化する予定」と回答したのが30%となっており、全体(回答数n=192)の7割がクラウド化に対して前向きであることがわかります。
出典:月刊コールセンタージャパン編集部(2023)/『コールセンター白書2023』/株式会社リックテレコム
本記事では自社のコンタクトセンターのリプレースを検討している方や、これからコンタクトセンターを立ち上げようと考えている方へ向けて、オンプレミス型のコンタクトセンターとクラウド型のコンタクトセンターはそもそも何が違うのか? クラウド型に移行することにどのようなメリットがあるのか? について解説していきます。
まずは、オンプレミス型とクラウド型、それぞれのコンタクトセンターの違いを整理してみましょう。
オンプレミス型コンタクトセンターは、一言で表すと「自社運用型」のコンタクトセンターです。
業務に必要なサーバーや回線設備を自社で購入し、そこにサービスを導入して利用します。システムについてはパッケージを購入して導入・運用するのが一般的となっています。
コンタクトセンターを構築するまでの全工程を自社で(場合によっては外部の開発ベンダーも加わって)担うため、導入には多くの初期コストと時間がかかります。一方で自社内のクローズドなネットワーク環境で運用できることから、セキュリティ面の安全が担保されているというメリットもあります。
クラウド型コンタクトセンターは、コンタクトセンター業務に必要となるツールやシステム、サーバーなどをネットワーク経由で利用する形態のコンタクトセンターです。
インフラ環境や必要なアプリケーションがあらかじめセットになっている外部のサービスを利用する形になるため、ハード面の設備を購入する必要がありません。オンプレミス型よりも短期間かつ低コストでコンタクトセンターを導入できます。
クラウドコンタクトセンターについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もご参照ください。
クラウドコンタクトセンターが広く普及している昨今。従来型として古いイメージを持たれがちなオンプレミスコンタクトセンターですが、事業の特性や特別なニーズからオンプレミス型を選ぶ企業も少なくありません。
またコンタクトセンターはもちろん、一般的な企業でも、電話機とコンピューターシステムをかけあわせた「CTI」を導入しているケースがほとんどです。特にオンプレミス型の場合、インターネットにはつなげずに顧客データベースとの連携をしているケースも少なくありません。
ここではオンプレミスコンタクトセンターのメリット・デメリットについてご紹介いたします。
オンプレミス型コンタクトセンターの最大のメリットとして、自社業務に必要な機能だけを備えたシステム開発を行えることが挙げられます。
開発を外部ベンダーに頼っている場合は改修に時間がかかってしまうこともありますが、すべてを内部で完結させられる場合には、自社に特化したコンタクトセンターを構築していけるでしょう。
システム開発の際にあらかじめ連携機能を要件として設定しておくことで、すでに使用していたCRMやMAツールなどの他システムとの連携を柔軟に行えます。
IVRやCTIなど、メジャーな機能であればAPIが提供されているため、クラウド型のコンタクトセンターでも対応できます。ただしその企業にしかない独自の既存システムがある場合には、オンプレミス型の方がスムーズに連携させられるでしょう。
オンプレミス型コンタクトセンターは、自社が保有しているサーバー上でサービスを構築します。クローズドのネットワーク環境で運用できるため、外部からの影響を受けにくく、強固かつ信頼性の高いセキュリティを担保できます。
インターネット回線を利用しているクラウド型では、通信環境によって通話の品質や安定性が左右されることがあります。
しかしオンプレミス型の場合は充分なスペックのサービスを用意することで、安定して高品質な通話を実現できます。
オンプレミス型のコンタクトセンターはサーバーを自社で購入する必要がありますし、サービス開発やセットアップにもそれぞれ費用がかかります。またそれらの設定にも時間を要するため、全体的に導入コストが高いと言えます。
またオンプレミス型の場合、サーバーのアップデートや運用監視なども自社で完結させなくてはなりません。対応できない場合は外部ベンダーに委託することになりますが、依頼のたびにコストが発生するため、運用コストも高額になります。
開発を外部のベンダーに頼っている場合、何か新しい機能を追加したり、実装されている内容を変更したりする際にも専任の業者へ作業を委託する必要があります。
ベンダーの都合によって改修のタイミングが後ろ倒しになってしまうこともあるため、PDCAを素早く回して積極的に業務改善を行いたい企業にとっては課題となるでしょう。
コンタクトセンターの規模が拡大・縮小したり、オフィス自体の移転があったりする場合、オンプレミス型のコンタクトセンターには席替えや引っ越しの手間もかかります。
PCやサブディスプレイ、書類などもある中で、電話機まで持っていくのはなかなか大変です。膨大な数の電話機の設定をし直したり、電話線を接続し直したりと、そういった作業だけで多くの時間を浪費してしまいます。
席替えやオフィス移転は会社の成長にあわせて頻繁に発生するものですが、その都度この作業が発生してしまうというのは、明確なデメリットとして挙げられるでしょう。
近年ではさまざまなクラウドコンタクトセンターが登場し、対応できる範囲も広くなってきました。また時流の後押しもあり、クラウド型を採用する企業も増えてきています。
ここではクラウドコンタクトセンターのメリット・デメリットについてご紹介いたします。
クラウドコンタクトセンターは、業務に必要なシステム・サーバー・ツールなどがひととおり揃っているサービスを導入して構築します。すべてをクラウド(ネットワーク)上に設置して利用するため、自社でサーバーを購入したりシステム開発したりする必要がありません。
また自社でサーバーを持たないため、障害監視やアップデート、トラブル対応のコストもかかりません。面倒な部分をすべてサービス提供者に任せられるため、運用コストも抑えられます。
近年では従量課金制を敷いているクラウドサービスも増えてきました。コンタクトセンターの規模や通話量によっては、クラウドコンタクトセンターの方が総合的に安く使える場合があります。
クラウドコンタクトセンターは先述のとおり、ネットワークを通じてコンタクトセンター業務に必要なシステムやサービスを利用する形態です。つまりインターネット環境さえあれば、すぐにでもコンタクトセンターを導入できます。
サービス提供者によりますが、申し込みから数日でコンタクトセンターを立ち上げられるケースもあります。
感染症の流行や自然災害の頻発により、昨今ではテレワークを取り入れている企業も増えてきました。従業員の働き方が多様化するのにあわせて、コンタクトセンターを在宅化したい、というニーズも高まってきています。
クラウドコンタクトセンターはインターネットさえあればどこからでも機能を利用できるため、オペレーターが在宅勤務をしていても、滞りなくコンタクトセンターを運用できます。
クラウドコンタクトセンターではPCに有線LANとヘッドセットをつなぐだけで電話として利用できるため、電話機が不要です。大きい電話機も、ごちゃごちゃしがちな電源ケーブルや電話線もすべてなくせるため、デスク周りを整頓できます。
クラウド型コンタクトセンターは提供されるサービスをそのまま利用する形態となっています。そのため内包されている機能などははじめからサービス提供者側が用意したものであり、自社でカスタマイズできないというのが一般的です。
ただし近年ではさまざまな機能をAPIで提供している事業者が増えてきているほか、企業のニーズに応じてカスタマイズやオプションサービスを提供するケースもあります。どうしても使いたい機能がある場合には、その機能を提供しているベンダーを探してみるのがよいでしょう。
クラウドコンタクトセンターの場合、何かトラブルが起きた際に原因の特定がしづらいというデメリットもあります。自社のパソコン上で問題が生じているのか、ネットワーク環境に問題があるのか、それともクラウドシステム上の問題なのかの切り分けがしづらいことから、対応に時間がかかってしまうケースもあります。
近年ではメジャーなCRMシステムとの連携を標準でサポートしているクラウド型サービスも増えてきていますが、たとえば自社で独自に開発したシステムなどを既存で使用している場合、そうしたシステムとの連携が難しいケースがあります。
すべてのシステム連携に対応できるわけではない、ということに注意が必要です。
オンプレミスクラウドコンタクトセンターにもクラウドコンタクトセンターにも、それぞれに特長や課題点があります。その企業ごとの状況によって適している形態も変わるため、一概にどちらが優れている、とは言えません。
ここではそれぞれ、どちらのコンタクトセンターを選べばよいのか、一例をご紹介します。
オンプレミスコンタクトセンターの最大のメリットは、自社のニーズに合わせて細かなカスタマイズができる点にあります。自社業務に必要な機能だけを備えたシステム開発を希望していたり、自社の独自システムをすでに使っていて連携が必要だったりする場合には、オンプレミスコンタクトセンターを選ぶのがよいでしょう。
すでにコンタクトセンターを運用してきていて、どのような機能が自社に必要なのか?今の課題は何で、どうすればそれを解消できるのか?がわかっている企業におすすめです。
クラウドコンタクトセンターのメリットとして、迅速にスモールスタートを切れる点や場所を選ばずにコンタクトセンターを運用できる点が挙げられます。
インターネット環境さえあれば、基本的な機能がひととおり揃っているサービスを利用できるため、新規事業の立ち上げや事業拡大によって速やかにコンタクトセンターを立ち上げたい場合にはクラウドコンタクトセンターの方が向いていると言えるでしょう。
またオペレーターの働く場所を選ばずに利用できることから、在宅型のコンタクトセンターを構築したい場合にもクラウド型がおすすめです。
「ujet.cx」は、スマートフォンの普及によって大きく変わったコミュニケーション手段に適応する、スマートフォンの機能をフル活用できるコンタクトセンターソリューション(CCaaS)です。モバイル端末の機能を最大限に活用し、シームレスで優れたカスタマー・エクスペリエンスを提供します。
音声通話、メール、チャット、SMS、SNS(WhatsApp)などを利用したマルチチャネルに対応しており、消費者のニーズに合わせた自然なコミュニケーションを行えます。また自社で展開しているアプリにモバイルSDKを組み込むことで、スマートフォン側の動画/静止画を共有できるほか、スマートフォンが持つ生体認証機能や位置情報/OS情報なども取得・活用できます。これにより効率的な顧客応対を実現できるのはもちろん、スマホファーストのこの時代にマッチした、これまでにない新しい顧客体験を提供することも可能です。
そのほか、Google®が提供するコンタクトセンターに特化したAI機能(CCAI)を、完全なクラウド環境で1席から利用できる点も魅力として挙げられます。各種AIによって自動応答や通話内容のリアルタイムな文字起こし、自動要約が可能です。またカスタマーの問い合わせ開始時に待ち時間を自動算出し、混雑状況を知らせるといったこともできます。
まとめ
本記事ではオンプレミス型のコンタクトセンターとクラウド型のコンタクトセンター、それぞれの特徴やメリット・デメリットについて紹介しました。
国を挙げてのDX化が進められている背景もあり、近年ではクラウドコンタクトセンターの利便性や柔軟性が注目を集めています。しかしクラウド型にはクラウド型の魅力があるように、オンプレミス型にもオンプレミス型の魅力があります。
どちらがより自社の状況に適しているのか、すでに運用しているものからリプレースするべきなのかどうか、しっかりと見極めてみてくださいね。