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コンタクトセンターの主要なKPI 13項目|目標設定時のポイントを解説

公開日:2024.10.11

更新日:2024.10.18

KDDIウェブコミュニケーションズ

コンタクトセンターの主要なKPI 13項目|目標設定時のポイントを解説

コンタクトセンターの効率的な運用には、適切なKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)の設定が欠かせません。コンタクトセンターの代表的なKPIは全部で13項目あるため、自社の課題や先に決めたKGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)に沿って設定しましょう。

この記事ではコンタクトセンターにおける主要な13項目のKPIについて、各特徴を詳しく解説するとともに、目標設定時の注意点やその対策について紹介します。

コンタクトセンターにおけるKPIとは

コンタクトセンターにおけるKPIとは

KPIは「ゴールを達成するまでの途中目標」を指します。最終目標に到達するまでに必要なプロセスが、正しく行われていることを確認するための指標です。一般的には1つのKGIを達成するための中間目標として用いられます。

コンタクトセンターでは業務効率や顧客満足度の向上といった目標をKGIとして設定することが多いですが、これらは客観的な成果や達成度の算出が困難です。そのため、具体的な数値と指標を用いたKPIを設定し、目標と実績の差を可視化することで、目標未達成時の課題や解決策のヒントを探りやすくなります。

コンタクトセンターにおける代表的なKPI13項目

コンタクトセンターにおける代表的なKPI13項目

コンタクトセンターの運営における最適なKPIは、業務の種類や最終目標によって異なります。ここでは業務効率や生産性、応対品質や顧客満足度、マネジメントに関する代表的な13のKPIを下表に基づいて詳しく解説します。

課題に応じた適切なKPIを設定するためにも、それぞれのKPIが何を示しているのか理解しましょう。

業務効率や生産性に関するKPI

平均通話時間(ATT)

平均後処理時間(ACW)

平均処理時間(AHT)

CPH

応対品質や顧客満足度に関するKPI

平均応答速度(ASA)

応答率

放棄率

サービスレベル(SL)

一次解決率

顧客満足度(CS)

マネジメントに関するKPI

稼働率

欠勤率

離職率

業務効率や生産性に関するKPI

平均通話時間(ATT)

平均通話時間(Average Talk Time:ATT)は、オペレーターと顧客の通話時間の平均値です。この指標は純粋な通話時間のみを示すため、顧客履歴の入力など通話後の後処理時間は含まれません。

平均通話時間が短いほどオペレーターの業務効率は高まりますが、顧客を満足させるには、時間をかけて丁寧に説明した方がよい場合もあります

平均通話時間をKPIに設定する場合は、業務効率と顧客満足度のバランスを考慮することが大切です。

【平均通話時間(秒)の計算方法】

総通話時間 ÷ 総コール数

平均後処理時間(ACW)

平均後処理時間(After Call Work:ACW)とは、顧客との通話終了後、オペレーターが後処理にかかる時間の平均値を指します。この時間には、顧客情報や通話内容をシステムに入力して記録に残したり、注文などの手続きを行ったりする際の対応時間も含まれます。

後処理時間を減らすことで、稼働時間内のオペレーターの対応件数を増やせるため、この指標が高い場合は処理フローの見直しやリスキリングといった対策を用いて改善を目指しましょう。

【平均後処理時間(秒)の計算方法】

総後処理時間 ÷ 総コール数

平均処理時間(AHT)

平均処理時間(Average Handling Time:AHT)とは、平均通話時間と平均後処理時間をあわせたものです。つまり、顧客ひとりの対応全体に要した時間の平均値を指します。

平均後処理時間を改善することで、各オペレーターの生産性を高められ、人件費の削減にもつながります。

CPH

CPH(Call Per Hour)は、1時間当たりのコール対応数を表す指標です。ひとりのオペレーターが、1時間当たり何件のコールに対応したかを示します

CPHが低い場合、オペレーターの応答件数を増やすための改善が必要です。ただし単純に応答件数を増やすだけでは品質低下を招く可能性もあります。CPHが低い場合は、低下の要因を適切に判断し、組織内でマニュアルの整備やフローの見直しを検討しましょう。

【1時間当たりのコール対応数の計算方法】

1日当たりの対応件数 ÷ 1日の稼働時間

 

応対品質や顧客満足度に関するKPI

平均応答速度(ASA)

平均応答速度(Average Speed of Answer:ASA)は、着信が発生してから電話を取るまでの平均時間を指します。平均応答速度は秒単位で表すことが一般的です。

この数値が高いほど、顧客が電話口で長時間待つことを意味します。待ち時間が長いと顧客満足度の低下につながるため、ASAの指標が高いなら、KPIに含めることを検討しましょう。

【平均応答速度(秒)の計算方法】

応答までにかかった時間の合計 ÷ コールの総数

応答率

応答率は、コンタクトセンター全体の着信に対して、実際に電話がつながった割合を示す指標です。着信を取り逃すと応答率が低くなることから、この数値によってオペレーターの人数が不足していることが読み取れます。

また、電話がつながらないと顧客満足度が下がる恐れもあります。応答率が低い場合は、業務の効率化や人員拡充を行い、100%に近い水準を保てるようにしましょう。

ちなみに応答率は、待ち時間がどれほど長くなったとしても、電話がつながれば高くなってしまいます。そのため平均応答速度など、他の指標と組み合わせて評価することが大切です。

【応答率(%)の計算方法】

応対件数 ÷ 入電件数 × 100

放棄率

放棄率とは、着信に対して電話がつながらなかった割合のことです。応答率の対(つい)となる指標に該当するため、仮に応答率が70%だった場合は、30%が放棄率となります。

放棄率の数値が高いほど、オペレーター不足や対応効率が悪いことが読み取れます。したがって、放棄率は0%を目標とすることが一般的です。

【放棄率(%)の計算方法】

放棄呼数 ÷ 着信件数 × 100

放棄呼(ほうきこ)とは、コールセンターにおいてオペレーターが対応する前に切断されたコールのことです。顧客自らが切っているケースと、コールの集中などが原因で機械的に切断されたケースがあります。

サービスレベル(SL)

サービスレベル(Service Level:SL)とは、設定した目標時間内に電話を取ることができた割合を表します。例えば、「コールから15秒以内」といった形で目標時間を定めて評価します。

100件のコールに対して15秒以内に応答した着信数が80件なら、サービスレベルは80%です。サービスレベルは、平均応答速度と同様に改善することで顧客の待ち時間が減り、満足度の向上が見込めます

【サービスレベル(%)の計算方法】

設定時間内に応答できた件数 ÷ コールの総数 × 100

一次解決率

一次解決率とは、一度の応答で顧客の問い合わせを解決できた割合を示す指標です。

たとえば問い合わせがあった際、別チャネルへ転送したりコールバックしたりせずに速やかに解決できれば、一次解決率が高まります。

一方、一次解決率が低いと、顧客・オペレーターともに時間を浪費している状態となり、CX(顧客体験)やEX(従業員体験)の低下につながります。

【一次解決率(%)の計算方法】

1回の電話で解決したケースの総数 ÷ 着信総数 × 100

顧客満足度(CS)

顧客満足度(Customer Satisfaction:CS)は、顧客がコンタクトセンターのサービスやオペレーターの対応にどのくらい満足しているかを示す指標です。顧客満足度が高ければ、企業イメージやリピート率の向上につながります。

ほかのKPIと違い計算式が存在しないため、アンケートなどを用いて顧客から直接意見を集める方法が一般的です。定期的に顧客満足度を測定し、改善点を見つけることで、サービス品質の向上も図れます。

マネジメントに関するKPI

稼働率

稼働率とは、オペレーターの勤務時間において顧客への対応時間が占める割合のことです。休憩や会議などで離席している時間を除き、入電の待機時間や対応時間、通話後の後処理時間などを含めて計算します。

稼働率は一般的に80〜85%くらいが理想です。この割合を超えているならオペレーターが不足しており、1人当たりの業務負担が重い状態であると考えられます。

【稼働率(%)の算出方法】

(入電待機時間 + 通話時間 + 後処理時間)÷ 給与支払い時間 × 100

欠勤率

欠勤率は、オペレーターの勤務日数に対する欠勤日数の割合です。勤務予定通りオペレーター全員が出勤している場合、欠勤率は0%となります。欠勤率が高いとオペレーターの人数が不足し、応答率やサービスの品質低下につながります。

【欠勤率(%)の計算方法】

(欠勤日数 ÷ 予定勤務日数)× 100

離職率

離職率とは、一定期間においてどれくらい退職者が発生したかを表す割合です。離職率が高いと人材が定着していない証明になるため、待遇や職場環境の改善を図る必要があります

また、離職率を低い状態で維持することは、経験豊富なオペレーターの確保や教育コストの削減にも効果的です。

【離職率(%)の計算方法】

1年間の退職者数 ÷ 常用労働者数 × 100

コンタクトセンターのKPIを設定する際のポイント・注意点

コンタクトセンターのKPIを設定する際のポイント・注意点

KPIを活用することで、目標の達成度を分析でき、効率性や生産性の改善に向けて取り組みやすくなります。適切な成果を得るためには、正しい方法でKPIを設定しましょう。

ここでは、コンタクトセンターでKPIを設定する際の注意点と対策について解説します。

KPI設定の前にKGIを定める

KPIを設定する際は、最初にKGIから決めましょう。KPIはあくまで中間目標となるため、最終的なゴールであるKGIがあって初めて機能します

まずはKGIを定め、KPIは「それを達成するために何ができるか?」という視点で設定すると良いでしょう。例えば「顧客満足度の最大化」をKGIに設定した場合、顧客満足度を高めるためには、より多くの顧客に対して迅速かつ適切な対応を行う必要があります。

この目標が達成できているかを可視化するには、応答率や平均応答速度に関する項目をKPIに設定すると良いでしょう。また、KGIの設定で洗い出した行動指標は、優先順位を決めてKPIに落とし込むと、改善のアクションにつながりやすくなります。

SMARTの法則に基づいて設定する

KPIでは具体的な数値や期限を設定します。そのため達成が難しい水準で設定されていたり、目的と関係ない目標が設定されていたりすると、想定した成果が得られない場合があります。

KPIを適切に設定するには、SMARTの法則が効果的です。SMARTの法則とは、設定された目標の有効性を確かめる手段で、下記の頭文字から成り立っています。

Specific(具体性)

具体的かつ明確な目標か

Measurable(計量性)

目標は定量的に評価・分析できるか

Achievable(達成可能性)

実現可能性が十分考慮されているか

Relevant(関連性)

目標の達成がどのようなメリットをもたらすか

Time-bound(期限)

目標に明確な期日が定められているか

KPIはこれら5つの要素に従って検討しましょう。具体的かつ客観的で、現実性の高い指標を設定できます。

チャネル間のKPIを連携させられる仕組みを作る

コンタクトセンターでKPIを設定する場合は、チャネル同士でKPIを連携すると効果的です。特にコンタクトセンターは、顧客との接点の多様化に伴ってオムニチャネル化が進んでいます。

しかし現状では、呼量(単位時間当たりの通信回線の占有量)や放棄呼の低減を目的にチャネル数を増やしているケースも少なくありません。電話チャネル自体は減っているものの、他のチャネルで対応数が増えているといったことが起こりがちです。このように、チャネル別にKPIを設定すると部分最適になり、全体で見ると対応工数(人員)等が増えてしまうなど本末転倒な結果が生じます。

そのため、KPIはチャネル単位ではなく、コンタクトセンター全体で設定することが必要です。具体的には、電話以外のメールやチャットなど、エンドユーザに必要とされるチャネル同士をシームレスに連携させ、コンタクトセンター全体で業務効率および顧客体験を向上させる仕組みづくりを行います。

チャネルをマルチに整備するだけでなく、KPIをコンタクトセンター全体で設計するとともに、最適なチャネルへエンドユーザを誘導することで、コンタクトセンターの運営をより効率化でき、顧客満足度の向上にもつながるはずです。

また、チャネル間の連携によるスピーディな問題解決と高品質な顧客対応は、コンタクトセンター全体のEX(従業員体験)の向上にも役立ちます。

クラウドコンタクトセンター「ujet.cx」のご紹介

UJET.CX

「ujet.cx」は、スマートフォンの普及によって大きく変わったコミュニケーション手段に適応する、スマートフォンの機能をフル活用できるコンタクトセンターソリューション(CCaaS)です。モバイル端末の機能を最大限に活用し、シームレスで優れたカスタマー・エクスペリエンスを提供します。

音声通話、メール、チャット、SMS、SNS(WhatsApp)などを利用したマルチチャネルに対応しており、消費者のニーズに合わせた自然なコミュニケーションを行えます。また自社で展開しているアプリにモバイルSDKを組み込むことで、スマートフォン側の動画/静止画を共有できるほか、スマートフォンが持つ生体認証機能や位置情報/OS情報なども取得・活用できます。これにより効率的な顧客応対が実現可能です。

そのほか、Google が提供するコンタクトセンターに特化したAI機能(CCAI)を、完全なクラウド環境で1席から利用できる点も魅力として挙げられます。

まとめ

コンタクトセンターにおける代表的なKPIには、業務効率や生産性、応対品質や顧客満足度、マネジメントなどに関するいくつかの指標があります。これらは、KGIや自社の課題に合わせて設定しましょう。

また、KPIを設定する際は、まずKGIから明確にすることも大切です。特にコンタクトセンターはオムニチャネル化しやすいため、チャネル間同士でKPIが連携できるように設定することも意識しましょう。

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執筆者情報

KDDIウェブコミュニケーションズ
KDDIウェブコミュニケーションズ
2013年に、日本ではまだ黎明期であったCPaaSの取り扱いを開始。CPaaSやCCaaSなどコミュニケーションのDXの専門家として、「コミュニケーションの多様性」を活用するための記事をお届けします。


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