半日がかりのアナログ架電業務を劇的DX!
30%の業務工数削減に貢献した
「V Callプラグイン for kintone」の魅力
公益社団法人シニア総合サポートセンター 様
事業推進本部 本部長 長谷川喜洋氏
サポート推進部 部長 東憲吾氏
公益社団法人シニア総合サポートセンター(以下、シニア総合サポートセンター)は、主に高齢者を対象として、共生・共助を理念として総合的な「終活」支援を行う公益法人です。全国に12ヶ所の拠点を置き、日々の生活支援や身元保証サポート、財産管理、遺言信託など、シニア層のニーズに広く応える事業を展開しています。
サービスの利用者が年々増加している中、同法人は従業員の負担軽減とより緻密なサービス提供を目的として、抜本的な業務効率化に踏み切りました。そこで導入されたのが「V Callプラグイン for kintone」です。
本記事ではV Callプラグイン for kintoneを導入するまでの経緯や、kintoneのシステム開発に関わるエピソードについて、開発を担当した株式会社ジョイゾーのSI統括マネージャー・大竹遼氏も交えて詳しくお伺いしました。

- 導入前の課題
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- 利用者への安否確認において、架電リスト作成から架電、ヒアリング後の記録業務まで、すべて手動で行っていた
- 膨大な数の架電を漏れなく実施する必要があり、リスト作成だけでも半日近くかかっていた
- 固定電話で通話をしながら手書きのメモを取っていたため、聞き取り内容の記録が曖昧になっていた
- 導入の決め手
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- PCからワンクリックで架電を行えるため、一連の業務をすべてkintone上で完結できる
- 秒単位の課金制により、コスト削減が見込める
高齢者の終活を法律の観点からサポート
Q:貴法人および展開サービスの概要を教えてください。
当法人は高齢者を対象に総合的な終活支援を行う、弁護士事務所を母体とした公益法人です。「認知症になったら自分の財産をどう管理すればよいか」や「自分が亡くなった後、誰がお葬式を挙げてくれるかわからない」といった、シニア特有のお悩みを寄せられる機会が増えてきたことをきっかけに、法律の観点から高齢者をサポートする団体として2014年に設立されました。
ひとり暮らしで頼れる家族が近くにいない方や、元気なうちにご自身の死後のことを決めておきたい方へ向けて、安否確認連絡などの生活支援から入院時・施設入居時に必要な身元保証人の代行、財産管理、遺言書作成に至るまで包括的にサポートしています。

高齢者支援事業に取り組む団体は20年前から数多く存在していますが、当法人のように弁護士事務所を母体とするケースは、いまだに数社ほどしかありません。
1日100件以上の架電をすべて手動で……のしかかる業務負担
Q:業務の効率化を考えるうえで、まず対象になったのはどのような業務ですか
さまざまな業務の中でも特に大きなウェイトを占めていたのが、会員様への安否確認連絡です。
当法人のサービスにご入会いただいた方には全員、電話で毎月1回の安否確認を行っています。各々のご都合にあわせて連絡頻度を落とすケースもありますが、会員様のご状況をリアルタイムで把握できるという点で、架電業務は当法人にとって欠かせないものです。この電話が、会員様と当法人をつなぐ重要な接点となっています。
しかし、安否確認の連絡業務は当法人の従業員にとって大きな負担となっていました。全国の会員様に対し、東京本部が地域の支部の分までまとめて架電業務を実施しているため、1日の架電数が膨大になっていたのです。

また、その架電業務のフローにも問題がありました。架電リストの抽出・作成から架電、通話後の記録作成まですべて手動だったため、非効率であり、結果として架電業務にかなりの時間を取られてしまっていました。
従来の架電業務フロー
- 架電リストのCSVを抽出してExcelに取り込み、マスターリストと突合
- 見やすい形に整えてから紙媒体へ印刷
- 1件ずつ手動で架電、つながらなかった場合は時間をおいて再架電
- 通話中は手書きでメモを取り、通話終了後にヒアリング内容を入力
なお安否連絡は電話以外にメールも使用していますが、高齢の方にとっては電話の方が馴染み深いツールであるため、現状8割近い会員様が電話でのご連絡を希望されています。
Q:従来の架電業務フローにはどのような課題があったのでしょうか
架電リストの抽出作業から架電後の記録作業までをほとんど手動で行っていたため、主に2つの課題がありました。
シニア総合サポートセンター様の2つの課題
とにかく非効率で時間がかかる
- 抜け漏れのない架電リストを作る必要があり、半日近く時間を取られていた
- 100件以上の架電をたった3名の従業員が手動で行っていた
記録内容の正確性を担保できない
- タイピングに不慣れな従業員もいる中、ヒアリング内容をすべて入力していた
- 電話機に録音機能がないため、正確なヒアリング記録を残せていなかった
安否確認の連絡は健康状況やご要望のヒアリングも兼ねているため、1件でも抜け漏れがあれば重大な事故になりかねません。また電話のし忘れでクレームが発生すれば、当法人の信用問題に関わります。
そのため抜け漏れのない正しい架電リストを作る必要がありますが、リスト抽出からすべて手動のため、リスト作成だけで半日近くかかってしまっていました。非効率なのはもちろん、ミスが許されないことが従業員のストレスにもなっていました。
安否確認の連絡は会員様と当法人をつなぐ大切なコミュニケーションの窓口であり、杓子定規に質問して回答が得られたらすぐに通話を終える、といったものではありません。ちょっとした世間話や健康上のお悩み相談、将来に関するご要望など、さまざまな話題に耳を傾けて情報を取得しています。
しかしヒアリング内容が多くなればなるほど、その中から重要事項を抜き出すのが難しくなるものです。結果として、お聞きしたお話を要約できずにすべて入力している状況になっていました。会員数の増加に伴い架電数も増えてきている中で、記録作成が従業員にとって大きな負担となっていたのです。
また固定電話で架電をしていたため録音ができず、ヒアリングした情報が従業員の記憶と手書きのメモ頼りになってしまう点も問題でした。記録内容の正確性を欠いてしまうのはもちろん、会員様との間で「言った・言わない」のトラブルが起こりうるリスクもありました。
業務改善の光明となった「V Callプラグイン for kintone」
Q:V Callプラグイン for kintoneの導入を決めたきっかけについて教えてください
V Callプラグイン for kintoneのことは、「Cybozu Days(※)」で知りました。業務改善に役立てられそうなツールを探している中で、KDDIのロゴを掲げている展示ブースを見つけて立ち寄ったのがきっかけです。
ブースでは営業担当の方がV Callプラグイン for kintoneについてわかりやすく丁寧に教えてくださり、当法人の抱える課題を解決できるビジョンが明確に浮かびました。また必要なカスタマイズを安価で実現できる点も魅力的でした。
Cybozu Daysでは架電業務のDXツールについて3社ほど比較検討しましたが、他社製品ではどうしても物足りない部分や、自社で開発を担わなければならない部分がありました。

しかしKDDIウェブコミュニケーションズであれば、トータルでの課題解決を実現するためのサポートを丸ごとおまかせできると思えたため、V Callプラグイン for kintoneの導入を決めました。
※サイボウズ株式会社が主催する、年に一度の大規模イベント。kintoneの活用事例紹介やDXに関するセミナー、パートナー企業製品のブース展示を行っている。
パソコンからワンクリック架電、30%の時間短縮を実現
Q:システム開発について、何か課題などはありましたか
kintoneにプラグインを連携させること自体は簡単にできますが、架電リストの作成から記録作成に至るまでの一連の業務をすべて効率化するとなると、そもそものシステムを1から作り直す必要があります。
kintoneはノーコード開発を謳っていますが、開発の知識がない当法人内だけで業務利用に耐えうるシステムを作るのはやはりハードルが高いです。そこでKDDIウェブコミュニケーションズにご相談し、開発会社である株式会社ジョイゾーをご紹介いただきました。
株式会社ジョイゾーはサイボウズの公式SIパートナーであり、kintoneを専門に扱うSIerです。「システム39」という、対面でのヒアリングを含めた複数回の来店型開発を定額サービスとして提供されています。
一般的な開発受託会社の場合、システムの仕様書を依頼者側が決める必要があります。しかしジョイゾーは当法人との打ち合わせ中にリアルタイムで設計図を組んでくれたり、当法人が求める機能を実現するために必要なものを細かく教えてくれたりと、親身に並走してくださいました。おかげでよりニーズに近いシステムができたと思っています。
また定額サービスであったため、予算を組みやすかったのもありがたいポイントでした。
Q:システム改修によって、業務はどのように変わりますか
現在はリストの自動抽出システムおよびV Callプラグイン for kintoneの導入が完了し、ほかの部分の開発を実施している段階です。本実装まではもう少し時間がかかりそうですが、今回の開発によって以下のような効率化が実現できる見込みとなっています。
システム改修後の効率化
ワンクリックで
その日架電するリストを自動で抽出
V Callプラグイン for kintoneで、
kintone上からワンクリックで架電可能
自動録音、自動文字起こし機能により
手書きメモが不要に
AIを活用することで、
文字起こししたテキストデータを要約可能
これらの改善により、架電リストが完成した瞬間からすぐに架電業務を始めることができます。また記録作成も録音・文字起こし機能があるため、従来に比べて30%近い業務時間短縮を実現できるのではないか、と考えています。
コスト面についても具体的な金額はまだ算出できていませんが、これまで固定電話から架けていた電話の通話料がV Callプラグイン for kintoneによって秒課金制の体系に変わったため、より安価に安否確認の連絡ができるようになります。今後さらに会員数が増え、架電量が増えていけば、より顕著なコスト削減効果が見込めるでしょう。
高齢者との接点を増やし、よりよい終活支援を目指す
Q:今後に向けての展望はいかがですか
現状、当法人では全国の会員様に対し、本部のみで安否確認の架電業務を行っています。
ゆくゆくは架電業務を各支部が担って、地域の会員様に対してより親しみやすく綿密なサポートを行っていきたいと考えています。
とはいえV Callプラグイン for kintoneによって架電業務の省力化に成功したため、このままの形で継続していくという選択肢もあります。当法人の業務のあり方について考えられるようになった、というのがまず大きな成果だと捉えています。
また現在では架電業務に関わるシステム開発をしていますが、今後もし音声だけでなく画像や映像を発信できるようになれば、会員様との接点をさらに増やしていけるのではないかと考えています。

今は年1回で会報誌を出していますが、今後はより高頻度にイベント情報を発信して、会員様とのつながりを強固にしていきたいです。
そのほか、新規展開という意味では、会員様が思ったことを気軽に書き込んで保存しておける「デジタルエンディングノート」のサービスを作りたいと考えています。
日々の安否確認の架電の中で、会員様からお葬式についてのご希望など、センシティブなお話を聞くことが多々あります。そういった会員様の思いを、インターネットを通じてリアルタイムで当法人に伝えていただくことで、自分ひとりで書くのは難しいエンディングノートの一助とできれば理想です。
もちろんエンディングノートの内容も会員様の大切な個人情報となりますので、実際にサービスとして提供するには、堅牢なセキュリティが必要になるなどハードルが高い部分もあるかと思います。しかしデジタルエンディングノートになるような高齢者の交流サービスは業界でもまだないので、今後はこういう面で当法人の独自性を出していきたいです。
取材協力
- 会社名
- 公益社団法人シニア総合サポートセンター
- 住所
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東京本部
〒105-0003 東京都港区西新橋1-20-3 虎ノ門法曹ビルB1F - 事業内容
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- 総合情報サービス企業
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本事例で導入されている
主なサービス・API - V Callプラグイン for kintone
開発を担当した株式会社ジョイゾー・大竹遼氏のコメント
電話機能を1から開発するのはかなりハードですが、V Callプラグイン for kintoneはその名のとおりプラグインという形で電話機能を提供してくれるため、アプリへの適用が簡単にできるというメリットがあります。また別のプラグインと併用することで、V Callプラグイン for kintoneの機能そのものを拡張できるのも魅力です。
そのうえで、実際の業務に照らし合わせた際に必要になる架電前後の機能(リスト作成・記録作成)についてトータルで開発を行うのが、当社の存在意義であると考えています。今後もV Callプラグイン for kintoneを活用しながら、さまざまな案件でシステム開発に臨んでいきたいと考えています。
会社名:株式会社ジョイゾー
住所:東京都江東区東陽4-10-4東陽町SHビル7階