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IP-PBXとは?仕組みやクラウドPBXとの違いを比較

公開日:2021.06.14

更新日:2024.07.31

KDDIウェブコミュニケーションズ

IP-PBXとは?仕組みやクラウドPBXとの違いを比較

「IP-PBX」は現在もメインで活躍している、PBXの種類のうちの一つです。多くの電話機や端末を接続して発着信・転送・保留・内線通話などの便利機能を実現するコミュニケーションツールで、いまや多くの企業にとって欠かせないものとなっています。

本記事ではIP-PBXとは何か? という基本的な内容を解説するほか、昨今注目されているクラウドPBXとの違いや、それぞれを選ぶ際のポイントについても掘り下げていきます。

IP-PBXとは?

IP-PBXとは?

IP-PBX(Intenet Protocol Private Branch eXchange)はPBXの一種で、TCP/IPネットワーク上に構築された構内交換機を意味します。IP電話機とIPネットワークを接続することで、従来のPBXと同じような機能を利用できます。

そもそもPBXとは?

PBXは構内交換機(Private Branch Exchange)のことを指し、電話交換機とも呼ばれています。

主に事業規模の大きな企業・団体・コールセンターなどで導入されているツールです。音声通話によって業務効率を改善し、社内外の円滑なコミュニケーションを支える役割を担います。

PBXについて詳しく知りたい方は、『PBXとは?種類や活用方法、ビジネスフォンとの違いなど詳しく解説!』の記事をご参照ください。

IP-PBXの種類

IP-PBXの種類

IP-PBXは「ハードウェア型」と「ソフトウェア型」の2種類に分類されます。

ハードウェア型IP-PBX

オフィス内にIP-PBX専用主装置を設置して利用します。

ネットワークを組織内で管理するため、セキュリティ面の安心感や稼働の安定性を期待できるのが特徴です。また専用機器を設置して端末を接続し、ネットワークを整えるだけで使用できるなど、環境設定を短時間で完了できるところもメリットとして挙げられます。

ただし移転・レイアウト変更の際は専用機器を移動させる必要があるほか、利用端末や機能を増やす場合は専用機器の追加やそれに伴う作業が発生する場合もあるため、別途費用がかかる注意点もあります。

ソフトウェア型IP-PBX

ソフトウェア(IP-PBX機能)を自社サーバへインストールし、ネットワークを構築して利用します。

汎用性があり、移転や利用規模の拡大、機能の拡張などにも対応しやすいのが特徴です。またインストールしたソフトウェアをアップデートすることで最新の状態を保てるため、メンテナンス費用も削減できます。

ただしソフトウェア型の場合は自社サーバーの事前準備や、環境構築するための知識・技術を持つ人材が必要となり、構築完了までに時間を要します。またセキュリティ面に関してはハードウェア型に比べて注意が必要なため、導入時に信頼できる製品を見極めることが重要です。

IP-PBXの仕組み

IP-PBXの仕組み

PBXの主装置は大まかに「筐体(きょうたい)」と「パッケージ」という2つの構造に分けられます。外線や内線など各機能のパッケージごとの回路にデータ設定を行うことで、主装置によって専用の番号が割り当てられ、電話機同士がPBXを通じてつながる仕組みです。

構造 内容
筐体

パッケージを収納する箱のこと。

接続可能数は機種によって異なり、筐体を増やすことで容量も増やせる。

パッケージ

PBX内に実装する基盤のこと。

機能ごとに用意されており、設置先に応じてパッケージの組み合わせは異なる。

IP-PBXの仕組みは基本的に従来型のPBXと同じですが、独自の特徴として、電話回線ではなくIPネットワークを使用していることが挙げられます。

IP-PBXはIPネットワーク上でIP電話機同士をつなぎ、着信をはじめとする各種機能を制御しています。通話がIPネットワーク内で完結することで、安定した通話を実現できるのです。

なおIP-PBXには VoIP(Voice over Internet Protocol)と呼ばれる、ネットワーク上で音声を送受信する技術が必要です。VolPを使用することで、インターネットを介する音声のやり取りも可能になります。

録音・音声認識・IVRで通話をカスタマイズ可能。
電話対応もDX「Vonage Voice API」

クラウドPBXとの違い

compare-pbx

ここでは多くの企業で導入されているIP-PBXと、近年注目度が高まっているクラウドPBXの違いを「設置」「価格」「運用」「セキュリティ」の項目に分けて説明いたします。

設置

IP-PBX

ハードウェア型の場合は、オフィス内にIP-PBX専用主装置を設置します。電話回線の接続については、回線の種類によって用意された専用パッケージを利用するケースがほとんどです。

ソフトウェア型の場合は自社サーバーへソフトウェア(IP-PBX機能)をインストールし、ネットワークを構築して利用します。自社サーバーがない場合はあらかじめ用意が必要です。

電話回線については、アナログ電話網とIP電話網をつなぐためのVoIP-GW(ボイプ ゲートウェイ) や、IP電話サービス網へ接続するための SIP-GW(シップ ゲートウェイ) と呼ばれる専用装置を用意します。

クラウドPBX

クラウドPBXは、PBX専用主装置を設置せず、その機能をクラウド化してインターネット経由でPBXの機能を利用します。

電話回線については、クラウド事業者が用意したものを借りる形で利用するのが一般的です。

価格

IP-PBX

ハードウェア型

ハードウェア型の場合は初期投資として、専用主装置とIP電話機を購入する必要があります。

主装置の価格は1台数万円~数百万円と、搭載している性能や対応できる容量・規模によって大きく異なります。数千台を接続できるような高性能の主装置に至っては一千万円を超えることも。そのため、リース契約で初期費用を抑えて利用するというのも選択肢の1つです。

IP電話機の価格は一般的に1台2~5万円前後。ただし備品の購入以外に、主装置と電話機の設置・設定の作業費がかかることに注意しておきましょう。業者への依頼が必要なため、そちらも合わせて見積もっておく必要があります。

ソフトウェア型

ソフトウェア型の場合は、専用主装置の設置が不要のため、ハードウェア型に比べると低価格で導入できます。

ただし、前述したVoIP-GWやSIP-GWを新規購入する必要があります。こちらはおおむね数十万〜数百万円です。

クラウドPBX

物理的なPBX主装置をオフィス内へ設置する必要がないため、購入・工事費用がかかりません。また接続する端末も電話機に限らず、パソコンやスマートフォンなど幅広く利用できるため、初期費用を低価格に抑えられます。

導入時に考えられる費用としては、サーバー登録やネットワークの構築、電話機同士を接続するためのシステム設定などが挙げられます。また、あらかじめインターネット回線を契約しておく必要があります。

運用

IP-PBX

ハードウェア型

ハードウェア型は、セキュリティ面の安心感や安定稼働に定評があります。

ただしオフィスの移転時には主装置の移動作業が必要だったり、機能変更や電話機の増設時に機器の追加・交換が必要だったりと、運用についてはあらかじめ注意しておく点もあります。

なお経年劣化などによる主装置の交換は、導入時ほどではないにせよ高額な費用が掛かります。また管理・運用はベンダーに保守費用を支払って行うケースと、自社で行うケースがありますが、自社の場合は故障すると修理費用がかかります。

ソフトウェア型

ソフトウェア型は、ソフトウェアのアップデートを行えば常に最新の状態で運用できるのが特徴です。移転や利用規模を拡大する際も、サーバなどの機器と同じ運用方法で対応できます。

注意点としては、セキュリティ面の安全性を確保する必要があることが挙げられます。信頼できるベンダーの製品を選んだ上で、自社に合ったセキュリティ対策を検討し、万が一の事態に備えておきましょう。

クラウドPBX

初期費用を低価格に抑えられるクラウドPBXですが、利用には月額使用料がかかります。料金はベンダーによって異なるため、導入したい機能も含めて複数のサービスを比較検討しましょう。

またクラウドPBXの月額料金は、大抵の場合ユーザー数ごとにかかります。利用人数が多いと割高になる可能性もあるため、費用の全体像や事業展開を見据えた上での見積もりが必要です。

ちなみにクラウドPBXの保守・定期メンテナンスは各ベンダーが行います。運用に割く時間・コストが削減される点はメリットと言えるでしょう。

従来型PBXとの違い

ここではIP-PBXと従来型PBXの違いを比較し、それぞれの特徴や活用ポイントを紹介します。

※従来型PBXの詳細については、『PBXとは?種類や活用方法、ビジネスフォンとの違いなど詳しく解説!』の記事をご参照ください。

使用する配線設備

従来型PBXは電話用の配線設備を使用します。

IP-PBXはIPネットワークです。

設置

従来型PBXはオフィス内へ専用主装置の設置が必要です。

IP-PBXの設置はハードウェア型かソフトウェア型かによって異なり、ハードウェア型の場合は従来型PBXのように専用主装置を設置して利用します。ソフトウェア型の場合は自社サーバーへソフトウェアをインストールして利用します。

電話線

従来型PBXは電話線で電話機同士をつなぐため、導入時に配線などの工事が必要になります。

IP-PBXはPCと同じIPネットワークを利用するため、すでにPC用の配線環境が整備されている場合は相乗りできます。ただしVoIPをWi-Fiで利用するのはあまりオススメできないため、場合によっては有線のネットワーク環境が必要になります。

使用する端末

従来型PBXは、PBX専用の電話機のみ利用できます。

IP-PBXはIP電話機のほか、パソコン・スマートフォンと連携可能です。

コスト

従来型PBXは主装置の購入・設置が必要なため、初期投資が特に高額になりがちです。ハードウェア型IP-PBXも主装置を必要とするため、従来型PBXほどではありませんがコスト高な傾向があります。

一方ソフトウェア型IP-PBXは、自社サーバーがあれば低価格で導入できます。またソフトウェアをアップデートすることで最新の状態で運用できるため、メンテナンス費も削減可能です。

音質

従来型PBXは電話回線を使用するため、高品質の音声通話が可能です。

IP-PBXはパケット通信で音声をやり取りするVoIPを用いるため、従来型 PBXと比較すると音質は劣ります。ただしVoIPで使われる通信帯域は比較的小さいため、ネットワーク機器による帯域制御などを活用することで、従来型PBXと比べても遜色のない品質を提供できます。

セキュリティ

従来型PBXはインターネット接続しないため、強度の高いセキュリティレベルを実現できます。ハードウェア型IP-PBXについてもハードウェアの自社設定ができるため、高いセキュリティレベルを保つことが可能です。

ただしソフトウェア型IP-PBXの場合は既存のOS上にソフトウェアをインストールして利用するため、通常のサーバー運用と同様のセキュリティ対策を講じる必要があります。信頼できるベンダーの製品を吟味して選びましょう。

在宅勤務にも適したPBXを選ぶポイント

在宅勤務にも適したPBXを選ぶポイント

近年は台風・地震といった自然災害が頻発したほか、新型コロナウィルスの影響により、多くの企業に「オフィスに行けない状況でも通常業務を継続できる」柔軟性のある職場環境づくりが求められるようになりました。

企業活動を支えるコミュニケーションツールであるPBXの選択には、こういった点を考慮する必要もあります。ここでは2つの項目に分けて、IP-PBXとクラウドPBX、それぞれの強みや選ぶ際のポイントを取り上げます。

PBXを選ぶポイント①在宅ワークに適応できるPBXか?

オフィスへ出向くことが難しい状況下であっても、在宅で通常業務にあたれる環境設定ができれば、大切な業務を円滑に進めることも可能です。

IP-PBXは社内に構築されたIPネットワークを使用するため、自宅から社内のIP-PBXへ接続できれば在宅ワークが可能になります。

一方クラウドPBXはインターネットに接続できる環境であれば利用できるため、IP-PBXと比べると在宅ワークへの切り替えがスムーズです。

PBXを選ぶポイント②セキュリティ対策ができるPBXか?

インターネットを介する通信は常にセキュリティ事故のリスクが伴います。在宅ワークの環境を整える上で、在宅勤務時にもオフィスと同様のセキュリティ対策を講じることは必要不可欠です。

ハードウェア型IP-PBXはハードウェアの自社設定が可能なため、セキュリティレベルを高く保つことが可能です。一方ソフトウェア型IP-PBXはネットワークへ接続された状態でソフトウェアをダウンロードして利用するため、セキュリティ対策を講じる必要があります。

またクラウドPBXはインターネットを介して利用するため、乗っ取り・なりすまし・情報漏洩などに注意が必要です。

  • どのような運用・サポートをしているのか?
  • セキュリティ対策に関して過去にどのような対処を行ってきたか?

という点を含めて複数のサービスを比較検討し、信頼できるベンダーを見つけましょう。

コミュニケーションAPIサービス
「Vonage」のご紹介

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Vonageは、電話やSMS・ビデオ・チャット・SNSなど、さまざまなコミュニケーションチャネルをWeb・モバイルアプリケーションやビジネスへ組み込めるクラウドAPIサービスです。自動電話発信や電話転送、対話型IVR、自動SMS通知や二要素認証など、多岐にわたるサービスを実現できます。

コミュニケーションに関わる機能を自社で1から開発するのには多大な工数がかかります。通信の暗号化といったセキュリティ対策など考慮せねばならない点も多く、そのために実装を諦めてしまう企業も少なくありません。

しかしVonage APIと連携すれば、それらの工数をすべてVonage側が担ってくれます。お客様側でのインフラ開発はもちろん、ネットワークの構築・維持コストも必要ありません。ただ数行のコードを書き加えるだけで、自社サービスをマルチチャネル化できるのです。

Vonage Voice API

Vonage Voice APIは録音や音声認識、IVRなど、通話に必要なあらゆる機能をプログラムでコントロールできるAPIです。

世界中の電話番号を用いたPSTN(公衆回線網)やSIP、Web RTCでの発着信機能を利用できます。また日本国内を含む約80カ国の電話番号を提供しており、ダッシュボード上から簡単に番号取得のお申し込みが可能です。

料金は通話秒数に応じた従量課金制です。また通話の録音・保存や日本語での音声認識、テキストの読み上げなどは無料で利用できます。そのため、不要なコストをかけずに音声通話のコミュニケーションチャネルを自社サービスに連携させられます。

まとめ

この記事ではIP-PBXについて詳しく紹介しました。

ハードウェア型とソフトウェア型の違いや、従来型PBX・クラウドPBXと比較することで、自社が求める機能や優先すべきポイントは何なのか? が整理できたのではないでしょうか。 

在宅ワークの必要性が高まる昨今の状況下で、環境設定を進める際に必要なポイントもあわせて取り上げています。新しい働き方にどうPBXを活用するのかをイメージして、より快適な職場環境を作り上げてくださいね。

執筆者情報

KDDIウェブコミュニケーションズ
KDDIウェブコミュニケーションズ
2013年に、日本ではまだ黎明期であったCPaaSの取り扱いを開始。CPaaSやCCaaSなどコミュニケーションのDXの専門家として、「コミュニケーションの多様性」を活用するための記事をお届けします。


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