公開日:2021.06.21
更新日:2024.07.31
まとめ
公開日:2021.06.21
更新日:2024.07.31
KDDIウェブコミュニケーションズ
働き方の多様化が進む昨今。スマートフォンやPCといった、電話機以外のさまざまな端末を活用して柔軟なコミュニケーションを実現する「クラウドPBX」が注目を集めています。
そこで本記事では、利用する企業が増えつつある「クラウドPBX」について、導入するメリット・デメリットやオンプレミスPBXとの違いを詳しく解説します。
クラウドPBXはPBXの一種で、従来ならオフィスへの設置が必須であるPBX主装置をクラウド化することによって、インターネット経由でPBXの機能を利用できるサービスです。
最大の特徴は、インターネット接続があれば場所にとらわれず通話環境を構築できること。また管理画面から設定変更ができるなど、クラウドならではの便利機能を利用できるのもメリットとして挙げられます。
PBXは構内交換機(Private Branch Exchange)のことを指し、電話交換機とも呼ばれています。
主に事業規模の大きな企業・団体・コールセンターなどで導入されているツールです。音声通話によって業務効率を改善し、社内外の円滑なコミュニケーションを支える役割を担います。
PBXについて詳しく知りたい方は、『【PBXとは?】種類や活用方法、ビジネスフォンとの違いなど詳しく解説!』の記事をご参照ください。
PBXには大きく分けて、物理的な専用装置の設置が必要な「オンプレミスPBX」と、専用装置がなくとも利用できる「クラウドPBX」の2種類があります。
実際にどういった違いがあるのか、さまざまな角度から比較していきましょう。
オンプレミスPBXは、自社内に物理的なPBX専用主装置を設置し、IT環境を構築して独自の運用・管理体制をつくるタイプのPBXです。
初期導入時のカスタマイズが可能であるほか、自社保有・自社運用できるという点において、セキュリティ面での安心感があるとされています。
ただし導入時には主装置の設置や配線・機能設定などに関わる工事が必要です。また機能に関する設定変更や電話機の増設時にも、業者へ依頼しなければなりません。
クラウドPBXは物理的なPBX専用主装置を設置せず、その機能をクラウド化することでオンプレミスPBXに近い機能を利用できるタイプのPBXです。
導入に際して工事が発生しないうえ、機能の設定変更や追加も顧客側で対応可能なため、業者へ依頼する必要がありません。またサービス自体の運用・メンテナンスは各ベンダー側が行っていることから、運用に関わる費用や人的リソースを削減できるとされています。
オンプレミスPBXには「初期費用は高くなるが、月々のランニングコストを安く抑えられる」という特徴があります。基本的に月額利用料は不要なため、自社に合うサーバーを導入し、長期的に利用することで運用コストを抑えられます。
以下、想定される各コストです。
導入コスト |
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ランニングコスト |
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必要経費は事業規模によって異なりますが、オンプレミスPBXの導入に必要な費用の目安は数百万円から数千万円です。ただしリース契約をすることで、初期費用を抑える方法もあります。
またオフィスの拡張や移転時には、主装置を移動させる作業と電話環境の再設定が必要なため、各種工事費用が追加でかかります。
クラウドPBXには「初期費用を抑えて導入し、ランニングコストを支払って利用する」特徴があります。インターネット上にあるクラウドITサービスの料金を、利用した分だけサービス提供者(ベンダー)へ支払う仕組みです。
クラウドPBXは物理的なPBX主装置の購入・工事費用が不要であり、接続する端末も電話機に限らず幅広く利用できるため、オンプレミスPBXに比べると導入コストは安く済みます。
導入コスト |
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ランニングコスト |
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ただしクラウドPBXはユーザー・拠点ごとに料金が発生することから、利用規模によっては高コストになります。利用人数が多く、長期的に利用する場合は、オンプレミスPBXの方が割安になること場合もございます。
また基本プラン以外の機能を利用したい場合は、オプションの追加料金がかかります。基本プランの内容やオプションメニューについてはベンダーごとに異なりますので、しっかり確認しておきましょう。
オンプレミスPBXで利用できる回線は、アナログ回線・ISDN回線・IP回線です。
クラウドPBXはインターネット回線を利用します。
オンプレミスPBXでは、PBX専用電話機が必要です。家庭用電話機とは異なり、PBXを経由することでさまざまな機能を利用できます。
クラウドで使える電話機は主に以下の3種類です。
各クラウドPBXベンダーのサービス専用アプリをインストールすることで、インターネット環境下であれば利用できます。
これにより外出先や在宅ワーク中でも会社の代表番号で発着信できたり、内線通話が利用できたりと、昨今注目されているBYOD(私用スマホを業務利用すること)に対応できます。
パソコンへ専用のソフトウェアをインストールすることで電話環境を構築できます。
主に顧客情報を確認しながら通話を行うコールセンターなどで活躍します。通話の際は別途ヘッドセットの用意が必要です。
SIPとは「Session Initiation Protocol」の略語で、インターネットでデータの受け渡しをするルールの一つを指します。SIPはリアルタイムの通信に向いており、テレビ会議やメッセンジャーなどさまざまな製品で利用されています。
一般的によく使用されているのがIP電話で、通話の際にはLANケーブルと接続する必要があります。ただしクラウドPBXベンダーによって接続可能な機種が限られているため、事前に確認するようにしましょう。
クラウドPBXでは IPベースの連携が簡単になったことにより、従来のPBXの機能に加えて、より安価で利用できるように進化した便利機能があります。主な機能を紹介しましょう。
CTI(Computer Telephony Integration)はコンピューターと電話の機能を連携させた技術やシステムの総称を指します。主に「CRM連携機能」「ポップアップ機能」「通話録音機能」という3つの機能があり、顧客対応のクオリティを向上させることに役立ちます。
クラウドPBXの中にはCTI機能を利用できないサービスもあるため、導入を検討する際は注意が必要です。
CRM(Customer Relationship Management)は「顧客管理システム」の略で、顧客への過去の対応履歴(対応内容・担当者)などの詳細な情報を管理するシステムを指します。
このCRMとPBXが連携することにより、主にコールセンターなどで、担当オペレーターの適切な顧客対応をサポートできるようになります。
またCRMには過去の対応時に蓄積されたデータを分析したり、ターゲット化された情報を抽出したりと、効率よくマーケティングに活用できる機能も搭載されています。
なお昨今は電話・メール以外の多様なコミュニケーションツール(LINE・チャット・SNSなど)の対応履歴を一元管理することも可能です。
ポップアップ機能は顧客からの着信を受ける際、着信中の電話番号をもとに顧客の情報を検索し、担当オペレーターのパソコンに表示する機能です。通話中に必要な情報を検索・閲覧でき、スムーズな対応を行えるようになります。
通話録音機能は、顧客との通話の内容を録音しておくことで、必要に応じて”録音・再生・削除”が可能です。クレーム対応時はもちろん、オペレーターの電話対応技術向上のための研修にも利用できます。
UCとは「Unified Communication」の略で、さまざまな通信手段を連携させて1つに統合する機能を指します。これにより多様な連絡手段(通話・メール・チャット・ビデオ通話・WEB会議など)の中から最適なツールを複合的に使い分け、より円滑なコミュニケーションをとれるようになります。
またUC機能を導入することで、以下のようなメリットがあるとされています。
クラウドPBXにはさまざまなUC機能がありますが、ここでは主な5つをご紹介します。
社員間でコミュニケーションを取る場合、相手が対応可能な状況かどうかを表示できる機能です。最適なタイミングで社内コミュニケーションがとれるため、連絡の二度手間をなくして業務をスマートにできます。
FMC(Fixed Mobile Convergence)というサービスを利用することで、スマートフォンを内線化できます。
FMCのサーバーへ携帯電話情報を登録すると内線化できる仕組みになっており、固定電話と携帯電話の通信事業者を一つに統合できる利点があります。
スマートフォンの内線化が実現すれば、たとえば営業が外出中であっても、かかってきた外線をそのまま担当者のスマートフォンで受けるといったことも可能になります。
顧客や社員の情報を一元管理する機能です。情報の共有や閲覧が簡単になることで取り次ぎ回数を減らすことにもつながり、スムーズなコミュニケーションを実現します。
インターネット回線を利用するクラウドPBXなら、離れた拠点同士のコンタクトも容易です。WEB会議など映像を使ったFace to Faceのコミュニケーションが手軽にできます。
チャットやインスタントメッセージなど、テキストでのコミュニケーションには「素早いコミュニケーションが可能」「記録が残る」という大きなメリットがあります。クラウドPBXのデータベース上で構築すれば、堅固なセキュリティを実現できるため安心して利用できるでしょう。
従来のPBXに比べて便利な機能も増え、より使いやすく進化したクラウドPBX。ここでは具体的に、クラウドPBXを導入・利用するメリットについて8つご紹介します。
クラウドPBXは主装置の設置や配線工事、機能設定に関わる作業が不要なため、従来のPBXに比べて短い期間で利用を始められます。申込から導入までに必要な日数はベンダーにより異なるため、事前に確認が必要です。中には最短3営業日で利用できるサービスもあります。
クラウドPBXでは電話機以外に、スマートフォンやパソコンといったさまざまな端末で通話できます。電話機以外の端末を使えるようになることでコミュニケーションの幅が広がり、場所を問わず業務できる環境設定が実現できます。BYOD(=個人の私物端末を業務用の電話として利用する)も可能です。
BYODを活用することで、会社として電話機を購入しなくても業務上必要な通話機能を確保できるようになり、経費の削減につながります。ただしBYODは端末の紛失や故障といったリスクとも隣り合わせなため、しっかりとセキュリティ対策や社員教育を行った上で導入するのが望ましいでしょう。
※スマートフォンを利用する場合は専用アプリのインストール、パソコンを利用の場合は専用ソフトウェアのインストールが必要です。
クラウドPBXを利用すると、世界・日本国内問わずすべての拠点を内線でつなぐことができます。インターネット環境下であれば内線通話を利用できるため、国内外に拠点数が多い企業やオフィス外で業務を行う社員が多い会社であれば、通信費用の削減が期待できるでしょう。
クラウドPBXの導入によって、以下のメリットが得られます。
これにより、「新しい生活様式」に合わせた在宅ワークへの移行を促しやすくなります。
従来のPBXは、各拠点ごとにそれぞれ管理を行う必要がありました。しかしクラウドPBXの場合は主装置の機能がネットワーク上で一箇所に集約されているため、すべてをまとめて一括管理できます。
また設定も、従来のPBXでは専門業者へ依頼する必要がありました。しかしクラウドPBXの場合はブラウザ上にあるユーザーの管理画面から行えるため、設定や運用に費やす労力を削減できます。
スケーラビリティと言われる拡張性の高さもクラウドPBXの魅力です。使用する電話番号の増減もユーザーの管理画面から変更できるため、事業規模の拡大に対応しやすくなっています。
またオフィス移転の際も電話番号を変更する必要がないため、 WEBサイトや会社案内などに記載する電話番号を変更する手間を削減できます。移転のための工事も不要で、移転先へ電話機を持参しインターネットを接続できれば、すぐに利用を再開できます。
クラウドPBXは物理的な主装置を設置する必要がないため、災害時などに「破損して使えなくなる」という心配がありません。また主装置を設置する場所の環境維持(温度・湿度管理や日々の掃除)も不要なため、メンテナンスが簡単です。
物理的な主装置の設置が不要であるクラウドPBXは、主装置や電話機の購入・設置、それに伴う工事や設定作業を業者へ依頼する必要がないため、導入時のコストを削減できると言われています。
一見すると従来のPBXより優れている印象を受けるクラウドPBXですが、デメリットがまったくないわけではありません。導入の際は特性をよく理解し、そのうえで活用することが大切です。
ここではクラウドPBXのデメリットについて5つご紹介します。
インターネットを介したサービスは、基本的にベンダーがセキュリティも含めた利用環境を構築しています。クラウドPBXの導入時は、強固なセキュリティが備わった信頼できるベンダーを選択する必要があります。
クラウドPBXの通信の安定性は、利用する通信環境によって大きく異なります。
たとえば動画を使用するWEB会議が行われる場合は大量のデータ通信量が必要なため、その他の通信手段を利用する業務に支障が出る可能性が考えられるでしょう。クラウドPBXを導入する際は、利用する環境の規模や想定される通信量に適した環境作りが必要です。
また外出先では通常の場合「モバイルデータ通信」や「公衆無線LAN」といったデータ通信へ切り替わります。場所によっては音声が途切れるなど円滑なコミュニケーションができなくなることも想定されるため、外出時の通信環境を考慮してあらかじめ対策しておくと安心です。
クラウドPBXはインターネット環境が必要なため、災害時などで停電するとサービスを利用できなくなります。導入の際は緊急時の対処法を設定し、もしもの場合に備える必要があります。
多くのクラウドPBXは緊急電話番号(110番・119番など)へ発信できません。
緊急通報は事件・事故が起きた際にすぐ対応できるよう、発信位置を通知することが義務付けられています。しかしクラウドPBXはインターネット回線を利用して電話を発信するため、正確な発信位置を特定できません。そのため、一般的にクラウドPBXでは緊急通報が利用できないのです。
導入の際は緊急時のフローについてマニュアルを作成し、しっかり対策しておくことをオススメします。
クラウドPBXは初期費用を抑えて導入できるメリットがある一方、利用人数や契約する回線の数によって運用コストが高くなるデメリットもあります。クラウドPBXの月額利用料はベンダーごとに異なるうえ、利用人数を増やしたりオプション機能を追加したりすると、月々の支払額も高くなるからです。
長期的に利用する想定で見積もると、オンプレミスPBXの方が低コストで利用できる場合もあります。そういった部分を加味してPBXを選ぶことも大切です。
PBXは一度運用を開始してしまうと、たとえ不都合な点が見つかったとしても容易には乗り換えできないサービスです。クラウドPBXの導入を検討している場合は、事前に以下のポイントを確認しておきましょう。
より良い選択ができるよう、どのような点に注意すべきか確認していきましょう。
適切なサービスを選ぶためには、まずクラウドPBXを利用する組織について把握する必要があります。
以下の点を確認してみましょう。
また、上記とあわせて業種や業務内容も確認してください。
同じ組織の中でも部署ごとに業務内容が異なる場合もあるため、細分化して詳しく状況把握できると理想的です。また現状の確認だけでなく、事業規模の拡大や移転など、今後の展望も視野に入れて検討しましょう。
機能性は実際の使い勝手に直結するうえ、業務効率にも関わる大切な検討項目です。
クラウドPBXはサービスにより、基本プランの内容やオプションで追加できる機能が異なります。価格や便利な点ばかりに目を向けず、「自社が求める機能を提供しているサービスであるかどうか」を見極め、比較することが重要です。
拡張性とはスケーラビリティ(scalability)とも呼ばれ、導入する環境や機能性の部分に大きく関わる項目です。以下の項目をチェックする必要があります。
クラウドPBXはオンプレミスPBXに比べて拡張性が高いと言われています。しかしクラウドPBXのサービス内容はベンダーによって異なるため、「自社が求める拡張性を備えたサービスであるかどうか」を確認する必要があります。
クラウドPBXの導入・運用に関わるコストについては、長期的な使用期間で見積もり、費用的にベストな運用であるかどうかを確認する必要があります。
クラウドPBXは初期費用を抑えられると言われていますが、月額または年額の定期的な運用コストが必要です。また必要経費は利用人数によって変化するため、大企業の場合は割高になる可能性もあります。
組織によってはオンプレミスPBXの方が費用を抑えて利用できるケースがあるため、そういった部分を考慮し、サービスの比較検討をすると良いでしょう。
インターネットに接続している状態というのは、常にセキュリティの脅威と隣り合わせであることを意識しなければなりません。クラウドPBXを利用するうえで、下記のような懸念事項があることを把握しておきましょう。
PBXは組織の重要な情報を扱う手段となるものです。サービスを検討する際は、可能な限り強固なセキュリティを構築しているクラウドPBXのサービスを選ぶとよいでしょう。
以下のような点についてよく確認し、複数のサービスを比較検討することが大切です。
より強度の高いセキュリティを重視する場合は、独自の利用環境を構築できるオンプレミスPBXが現時点では最適と言えます。
Vonageは、電話やSMS・ビデオ・チャット・SNSなど、さまざまなコミュニケーションチャネルをWeb・モバイルアプリケーションやビジネスへ組み込めるクラウドAPIサービスです。自動電話発信や電話転送、対話型IVR、自動SMS通知や二要素認証など、多岐にわたるサービスを実現できます。
コミュニケーションに関わる機能を自社で1から開発するのには多大な工数がかかります。通信の暗号化といったセキュリティ対策など考慮せねばならない点も多く、そのために実装を諦めてしまう企業も少なくありません。
しかしVonage APIと連携すれば、それらの工数をすべてVonage側が担ってくれます。お客様側でのインフラ開発はもちろん、ネットワークの構築・維持コストも必要ありません。ただ数行のコードを書き加えるだけで、自社サービスをマルチチャネル化できるのです。
Vonage Voice APIは録音や音声認識、IVRなど、通話に必要なあらゆる機能をプログラムでコントロールできるAPIです。
世界中の電話番号を用いたPSTN(公衆回線網)やSIP、Web RTCでの発着信機能を利用できます。また日本国内を含む約80カ国の電話番号を提供しており、ダッシュボード上から簡単に番号取得のお申し込みが可能です。
料金は通話秒数に応じた従量課金制です。また通話の録音・保存や日本語での音声認識、テキストの読み上げなどは無料で利用できます。そのため、不要なコストをかけずに音声通話のコミュニケーションチャネルを自社サービスに連携させられます。
まとめ
「さまざまな端末を利用して多様なコミュニケーションができる」「導入時の費用・時間・労力を削減できる」など、クラウドPBXならではの魅力が注目を集めている昨今。新規導入や従来型PBXからの乗り換えを検討している企業も多いことでしょう。
しかし便利に使えるクラウドPBXにもデメリットはあります。またクラウドPBXと一口に言っても、内容や価格設定などはそれぞれのベンダーによってさまざま。自社に合うサービスを見極めるためには、日頃の働き方や求める機能をしっかり把握することが必要です。
用途や事業規模によっては、クラウドPBXよりもオンプレミスPBXの方が適している可能性もあります。中長期的な会社の展望を含めて、総合的に検討を進められるとよいですね。