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世界大手CPaaS「Vonage」とは? 多彩な機能をまとめて紹介

公開日:2024.05.16

更新日:2024.07.31

KDDIウェブコミュニケーションズ

世界大手CPaaS「Vonage」とは? 多彩な機能をまとめて紹介

多種多様なデバイス・サービスが登場し、私達の生活に普及している昨今。コミュニケーション手段が多様化したことに伴い、多くの企業が顧客との接点を取りこぼさないよう、自社サービスのオムニチャネル化を急務としています。

その中で注目を集めているのが、電話/SMSやチャット、ビデオ、SNSなど、あらゆるコミュニケーションチャネルをゼロベースで開発せずとも導入できる「CPaaS」です。

しかしCPaaSと一口に言っても、扱われる分野や要素はさまざま。ひととおりのコミュニケーション機能を網羅して提供しているサービスもあれば、特定のコミュニケーションAPIに特化したサービスもあります。CPaaSの導入を検討する際には、自社が何の機能を・どの程度必要としているのか、はっきりさせておくとよいでしょう。

そこで今回はCPaaSの中でも、近年特に注目を集めている大手CPaaS「Vonage」をご紹介します。

そもそもCPaaSとは?

そもそもCPaaSとは?

CPaaSは「 Communications Platform as a Service 」の略語で、コミュニケーションに関するさまざまな機能を提供するクラウドサービスのことを指します。音声通話はもちろんSMSやビデオ会議、チャットボット、音声認識、IVRなど、連携させられる機能は多岐にわたります。

CPaaSを活用すれば、通信機能を1から自社開発する必要なく、コミュニケーションツールと既存サービスを連携できます。社内のシステムエンジニアの作業負担が軽減され、より重要な業務にリソースを割けるようになることで、業務効率や生産性の向上にもつながるでしょう。

CPaaSについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もご参照ください。

APIとは

CPaaSではこうした通信機能を APIで連携させる仕組みになっています。

APIは「Application Programming Interface」の略語で、他のプログラムやサービスのアプリケーションに備わっている機能やデータを、一定の規則に従って活用できるようにするためのインタフェース(接点)の役割を担うものです。

昨今では著名なサービスのAPIがインターネット上に公開されており、多くの開発者がその機能を自社サービスに組み込めるようになっています。サービス提供事業者側が用意している機能をそのまま利用できるため、開発者が自社で行う作業が減り、開発効率を高めることができるのです。

通信機能を提供しているAPIはコミュニケーションAPIと呼ばれています。本記事でご紹介する「Vonage」も数あるコミュニケーションAPIのうちのひとつです。

APIについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もご参照ください。

Vonageとは?

Vonageとは?

Vonageは、電話やSMS・チャット、ビデオといった、さまざまなコミュニケーションに関わる機能をAPIで扱えるCPaaSです。またコミュニケーション以外の、AIや認証といった機能も利用できます。

Vonageは国内外においてすでに12万社以上の企業で導入されているうえに、100万人以上の登録済みの開発者のグローバルなコミュニティを有しています。いまや世界的に注目を集めている大手CPaaSと言えるでしょう。

VonageのコミュニケーションAPIを導入することで、企業はWeb上での音声通話やSMSの大量一斉送信など、新しいコミュニケーション手段を顧客へ提供できます。ターゲットを絞って、最適なチャネルでタイミングよくコミュニケーションを取っていくことで、より多くのエンゲージメントを獲得できるでしょう。

またVonageはAPIだけでなく、 SNS上でEコマースを実現する、Jumper.aiテクノロジーを搭載したソーシャルコマースソリューションも提供しています。商品の認知から購買までをひとつのプラットフォーム上で完結できるため、利便性や売上の向上はもちろん、顧客満足度を高めることも可能です。

Vonage Inc.について

Vonage Incは米国ニュージャージー州に本社を置くCPaaS企業です。

元は IP 電話サービスをメイン事業として 2011年よりスタートした企業でしたが、 CPaaS企業のNexmoやWebRTC機能を提供するTokBoxなどを買収して、コミュニケーションサービス全般をサポートできる企業に発展しました。

現在はスウェーデンの大手通信機器会社エリクソン(NASDAQ:ERIC)の完全子会社となっています。

VonageおよびVonage Inc.は2022年のフロスト&サリバン・レーダー(Frost & Sullivan Radar)において、3年連続でCPaaS業界の成長と革新のリーダーとして評価されました。また2023年に米国の調査会社ガートナー社のマジック・クアドラント(Magic Quadrant)においてCPaaSのリーダーとして評価されたほか、2024年にはCXテクノロジー分野における最高の栄誉と称されている「CX Award」で複数部門での受賞を果たすなど、CPaaS業界で大きな注目を集めています。

Vonageの機能(API)

Vonageの機能(API)

それでは具体的に、VonageがどのようなコミュニケーションAPIを提供しているのか見ていきましょう。

Vonage Voice API

Vonage Voice APIは通話に必要なあらゆる機能(転送、録音、音声認識、IVRなど)をプログラムで制御できるAPIです。数行のコードを既存システムに組み込むだけで、PSTN(公衆回線網)や SIPでの発信・着信機能を利用できるようになります。また日本を含む約80カ国の電話番号を提供しており、購入した電話番号を自由に使うことができます。

たとえばVonageから電話番号を購入して自社サービスの問い合わせ先とし、顧客からの着信に対して音声認識を行い、その内容をもとにあらかじめ用意しておいた回答を合成音声で再生して自己解決を促す、といった一連の流れをVonage Voice APIだけで実現できます。

また有人対応が必要な場合にはオペレーターに電話を転送し、その内容を録音して、以降の応対に役立てることも可能です。

さらに後述する「Vonage AI Studio」を用いれば、そうしたフローをノーコード/ローコードで実現できます。

さまざまな機能をリーズナブルに利用できるため、スモールスタートがしやすいほか、組み合わせによって柔軟にニーズに寄り添う機能開発が可能です。

Vonage Messages API

Vonage Messages APIは、SMS送信を数行のコードで実現するAPIです。

国内通信キャリアとの直接接続による国内SMSと、世界200ヶ国・700キャリアの中から最適なキャリアを経由して送信する国際SMSの両方式に対応しており、高品質なSMSを低価格で送信できます。

また各国のコンプライアンスにも準拠しているため、面倒な手続きいらずで国外へSMSを送信可能です。

Vonage Messages APIの強みはほかにも、1秒間に最大30通の大量送信ができる点や、配信結果の即時フィードバックを行える点などが挙げられます。エラーコードも詳細に確認できるため、もし送信が失敗した場合でも、他チャネルとの連携でフェイルオーバーの仕組みを作って再送することも可能です。

さらに Vonage Messages API では、専用番号オプションも用意されています。

SMS送信サービスには、送信元として設定できる番号が2種類あります。サービス側であらかじめ用意して複数企業に提供している「共有番号」と、その企業だけに発行する「専用番号」です。

共有番号には低コストで利用できるというメリットがありますが、他社が同じ共有番号を利用していた場合、自社のSMSも他社のSMSも顧客目線だとまとめてひとつのスレッドに入ってしまうというデメリットもあります。

しかし専用番号を利用すれば自社専用のスレッドでSMSを送れるため、メッセージが届いた時点で顧客に「あの企業からだ」と気付いてもらえます。顧客へ安心感を与えられるうえ、企業のブランディングにも役立つでしょう。

なお、共有番号および専用番号が使えるのは国内SMSのみです。国際SMSの場合は送信元として電話番号を通知できないため、送信元は上限11文字の数字とアルファベットによるAlpha-Numeric Sender ID表記となります。

Vonage Video API

Vonage Video APIは、ブラウザやモバイルアプリ、PCアプリ上で動作するビデオ通話機能を実装できるAPIです。画面共有や画面録画などの機能が標準で備わっているほか、リアルタイムの文字起こしなどニーズに応じて柔軟に機能を追加実装できます。

また25名までの双方向ビデオ通話が行えるほか、大規模ライブ配信も可能です。1秒未満の遅延でのブロードキャストが行えるため、ライブ配信プラットフォームとしても活用できます。

Vonage Video APIの魅力は、既存のアプリケーションに依存しないビデオ通話を実装できる点にあります。たとえば市販のビデオアプリケーションで通話する場合、互いに同じアプリケーションをあらかじめ用意しておかなくてはなりません。

しかし Vonage Video API なら既存のWebサイトにビデオ機能を組み込めるうえ、それがブラウザ上で動作するため、顧客側にアプリケーションを導入してもらう手間が省けます。

また Vonageでは、さまざまな機能をフルカスタマイズ可能なVonage Video APIと、ローコードでビデオ通話機能を実装できる Vonage Video Expressの2種類が用意されています。企業の状況やニーズにあわせて選べるため、スムーズな開発が期待できるでしょう。

Vonage Verify

Vonage Verifyはワンタイムパスワードの生成から送付、正誤判定までをワンストップで提供する二要素認証APIです。API連携するだけで、Vonageの二要素認証システムを簡単に自社サービスに導入できます。自社で1から二要素認証の仕組みを用意する必要がないため、開発工数の削減やスピーディーなサービスリリースを実現可能です。

自社開発で二要素認証を新しく導入しようとすると、それ自体の開発工数はもちろん、さまざまなセキュリティ対策を含む管理・運用コストがかかります。さらにインフラプラットフォームの費用などもかかるため、費用的にも大きな負担となってしまいます。

しかしVonage Verifyを利用すれば、本来かかる多くの工数やセキュリティ対策をすべてVonage側が肩代わりしてくれます。コストをとことん減らしたうえで、高性能かつセキュリティ対策が施された二要素認証システムを実装できるのです。

またVonage Verifyはオムニチャネル対応のため、SMSだけでなく、電話やメールを組み合わせたフェイルオーバーの仕組みを構築可能です。SMSでの認証に失敗しても電話・メールでの通知が後続するため、ワンタイムパスワードの到達率をより高い水準で保てます。

Vonage SIP Trunking

Vonage SIP Trunkingを利用することで、既存のPBXをそのまま使って、世界各国と接続できるSIPベースの(=Vonage電話番号と直結した)通信環境を構築可能です。 Vonageがすでに世界中の通信事業者と接続しているため、面倒な契約手続きも必要ありません。Vonage SIP Trunking とつなげるだけで、簡単かつスピーディーに、自社の電話環境をグローバルに拡張できます。

また回線数を意識せずに利用できる点、Vonage Voice APIとの連携によって電話自体の機能を拡張できる点も、Vonage SIP Trunkingの大きな魅力と言えます。

Vonage AI Studio

Vonage AI Studioはローコード・ノーコードでコミュニケーションフローを構築できるビジュアルビルダーです。視覚的なドラッグ&ドロップ形式で、エンジニア・非エンジニアを問わずワークフローを作成できます。

Vonage AI StudioにはVonage独自の最先端AI(NLU=自然言語理解)エンジンが搭載されており、顧客からのメッセージを解釈して問い合わせ内容を分類したり、会話の文脈を把握して最適なオペレーターにつないだりといったことができます。これによりコミュニケーションフローをさらに最適化できるほか、TTS(音声合成)機能とASR(自動音声認識)機能を兼ね備えた高性能なバーチャルエージェントを構築して無人対応を任せることも可能です。

Vonage AI Studioを使えば、誰でも簡単に、顧客満足度に貢献するようなコミュニケーションフローを構築できます。

たとえばカスタマーセンターにおける「よくある質問」に対してバーチャルエージェントに回答させ、セルフサービスでの迅速な問題解決を促す流れを作れます。また店舗の来店予約などのフローも、従来の機械的なIVRではなく、自然な会話で対応できます。Vonage AI Studioを利用すれば、プログラミングの知識がない人でも、個々の状況に応じた最適なフローをカスタマイズできるのです。

Vonageの機能(eコマース)

Vonageの機能(eコマース)

VonageはAPI以外にも、主要なSNSやチャットサービス、Webプラットフォーム上でeコマースを実現できるソリューションを提供しています。

それが対話型ソーシャルコマース「 Vonage Social Commerce 」です。

ひとつのプラットフォーム上で、AIによるチャットボットや有人オペレーターによるライブチャットでの接客から購入決済のサポートまでの流れを実現できます。顧客目線では「SNSで気になった商品を、ページ遷移せずにその場で買える」という利便性がありますし、企業目線でも「顧客の購買意欲が高い状態を保ったまま決済までサポートできる」ため売上につながるというメリットがあります。

Vonage Social Commerceではプラットフォーム上での情報公開や、LINEやInstagramといった各SNSへの情報ポスト、SMSでの一斉通知を管理画面上から簡単に行えます。またその通知で商品を知った顧客からのメッセージをAIボットに自動対応させることも可能なため、オペレーターの負担を減らせます。

そしてカート管理から決済連携、発送通知までを一括で提供しているため、企業側で1からコマース機能を開発する必要がありません。

スマートフォンの普及に伴い、SNSの利用者も増加傾向にあります。これからはSNSを活用したソーシャルコマースがさらに存在感を増していくでしょう。

まとめ

今回の記事では、 CPaaS業界の中でも強い存在感を放っている大手サービス「Vonage」についてご紹介いたしました。

国を挙げてのDX化が推し進められている昨今。自社内での業務効率化を図るうえでも、対外的なサービスとして顧客満足度を高めるうえでも、CPaaSは企業にとってもはや無視できない存在となっています。 

これからCPaaSの導入を検討している方にとって、サービス選びの一助となっていれば幸いです。

執筆者情報

KDDIウェブコミュニケーションズ
KDDIウェブコミュニケーションズ
2013年に、日本ではまだ黎明期であったCPaaSの取り扱いを開始。CPaaSやCCaaSなどコミュニケーションのDXの専門家として、「コミュニケーションの多様性」を活用するための記事をお届けします。


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