公開日:2024.09.09
更新日:2024.09.09
まとめ
公開日:2024.09.09
更新日:2024.09.09
KDDIウェブコミュニケーションズ
スマートフォンが広く普及し、さまざまなソーシャルメディアサービス(SNS)が台頭している昨今。もはや私達の生活とは切り離せない存在となったEC(電子商取引=インターネット上で商品やサービスの売買を行うこと)において、SNSの立ち位置も大きく変わってきました。
これまでは情報発信や広報を担うのみだったSNSが、決済機能を持ち、同一のプラットフォーム上で決済まで完了できるようになったのです。こうしたSNSを活用した新しいECのスタイルを「ソーシャルコマース」と呼びます。
本記事では「ソーシャルコマース」について、概要説明や既存ECとの違い、また魅力などについてご紹介していきます。
ソーシャルコマースは、ソーシャルメディアサービス(SNS)とECをかけあわせて商品を販売・促進を行うマーケティング方法を指します。
SNSにカート機能・決済機能を加えることで、従来なら顧客がECサイトに遷移してから行っていた商品の閲覧、選択、決済といった一連の購買行動をSNS上で実現できます。SNSアカウントがあれば、そのプラットフォーム上で、集客から商品の販売までを完了させることができるのです。
これまでのSNSは企業にとって、あくまで「周知」と「集客」を行うためのツールでした。自社アカウントを立てて情報を発信したりブランディング目的の投稿をしたり、また広告をSNS上に出稿することで、SNSユーザーを自社ECサイトや大手ショッピングサイトの出店ページへ誘導していました。
しかしソーシャルコマースを実施すれば、顧客が商品やサービスを認知してから購買するまでのプロセスを一元化できるようになります。あらゆるSNSが各ブランドの売り場となり、シームレスなショッピング体験の提供を実現できるのです。
近年、スマートフォンが広く普及し、またこれに伴ってさまざまなSNSが急伸しました。SNSは現代においてその存在感を強め、情報発信・情報収集を行ううえで欠かせない、重要なツールへと進化しています。ソーシャルコマースの台頭も、こうした背景を受けた結果と言えるでしょう。
従来のECサイトでの販売とは何が違うのか、具体的に見ていきましょう。
これまではSNSがECサイトに誘導するための集客ツールとして使われていました。SNS上に商品やブランドの魅力を伝える投稿をしたり広告を出稿したりと、商品を広く周知させることを目的として活用されていました。
あくまで商品情報を提供するプラットフォームとしてSNSを利用していたため、実際の販売はECサイトに移動して行う必要があります。
一方でソーシャルコマースは、SNS上で集客から決済までを完結できます。従来のECでも行っていた商品・ブランドの露出機会の創出はもちろん、ECサイトへの遷移の手間を省いてそのまま商品を販売できるのです。つまりソーシャルコマースではSNSをSNSとしてだけでなく、一種の売り場としても扱っているということになります。
一連の販売行動がSNS上でのみ完結するため、企業にとっても顧客にとっても手軽かつ容易に取引が行えるという魅力があります。
これまでは広告の出稿により顧客の目に留まる機会を増やし、そこから需要を想起させて購買行動につなげていくという導線が主流でした。広告をきっかけに興味を持った顧客が自分でその商品やブランドについて調べて、そのうえでECサイトに移動して購入する、というパターンです。
しかしこの場合、商品を知ってから購入に至るまでにいくつかの段階を経る必要があるため、その過程で購買意欲が減衰して離脱してしまう顧客も少なくありませんでした。
一方ソーシャルコマースでは、顧客が日常的に使っているSNS上で、企業のアカウントもまた商品やブランドに関する投稿をしています。普段から商品・ブランドの魅力を発信できるのはもちろん、SNSではインフルエンサーや一般の消費者による情報拡散・口コミなどもさかんに行われるため、ターゲットを絞っての広告よりもずっと幅広い潜在層へ興味を喚起できます。
そしてソーシャルコマースであれば、顧客がその商品の投稿を見て「欲しい!」と思った気持ちのまま、すぐに購買行動に移れます。SNSのアプリを閉じてECサイトを開き直す、という手間もないため、熱量の高いままスムーズにSNS上で決済を終えることができるのです。
顧客はスピーディーかつストレスフリーな買い物ができるため、顧客満足度の向上にもつながります。また企業にとっても、購買意欲を抱いた顧客を逃さないという点で大きなメリットがあります。
世帯当たりのスマートフォンの普及率が年々増加している一方、パソコンの保有率は低下傾向にあります。ECにおいてもその影響が表れており、近年では物販、サービス、デジタルの各分野でスマートフォン経由の取引額が増えています。
経済産業省が発表している「令和3年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」 によれば、2021年の物販分野におけるBtoC-EC市場規模は13兆2,865億円。そのうちスマートフォン経由の BtoC-EC市場規模は6兆9,421億円で、全体の52.2%を占める金額となっています。
さらにスマートフォン経由の物販の BtoC-EC市場規模の推移を見ると、2020年から2021年までの間に市場規模が7,152億円(11.5%)増加していることがわかります。
出典:経済産業省「令和3年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」
さらに総務省の「令和4年通信利用動向調査の結果」 によれば、個人でのスマートフォンの保有割合は77.3%と年々増加傾向にあり、さらにSNSを利用している個人の割合は全体の8割を占めています。
SNSの利用目的としてもっとも多いのは「従来からの知人とのコミュニケーションのため」(88.6%)ですが、次いで多いのが「知りたいことについて情報を探すため」(64.5%)です。
つまり昨今の日本においては、
といった行動様式が広く浸透していると言えるでしょう。
こうした現状から、スマートフォンやSNSを活用したソーシャルコマースは今後も発展していくことが予想されます。
企業がソーシャルコマースを導入することにどのようなメリットがあるのか、見てみましょう。
ソーシャルコマースでは、商品情報の発信から決済に至るまでの一連の流れをSNS上だけで完結できます。SNSのアカウントをそのままプラットフォームとして活用できるため、ECサイトを構築する必要がありません。
各SNSで提供されているショップ機能を利用したり、SNSに特化したカート機能を追加したりするだけで、簡単にオンラインショップを開設してソーシャルコマースをスモールスタートさせられます。
また従来のECサイトの場合、集客のためにはSNSに限らず、さまざまな種類の広告を出稿する必要があります。またユーザーの流入数を増やすために、SEO対策などの施策も欠かせません。
しかしソーシャルコマースの場合、SNSを利用しているユーザーに絞って集客を行うことになります。膨大なユーザーを抱えているSNSのみに注力できる、という点で、業務負担の軽減につながるでしょう。
ソーシャルコマースでは商品の検索から購入までにページを遷移を必要とせず、決済をスムーズに行えることから、離脱率を抑えられるというメリットがあります。
一般的なECでは顧客が商品を見つけてから実際に購入に至るまでの間に、いくつかの工程が必要になります。それによって購買意欲が削がれて購入をやめてしまう、というケースが往々にしてあります。
しかしソーシャルコマースであれば顧客が「欲しい!」と思った気持ちを決済までの手間によって減衰させず、意欲の高い状態で購入を完了させられるため、売上を確保しやすいのはもちろん顧客満足度の向上にもつなげられるでしょう。
SNSは情報発信を主とするプラットフォームであるため、ECサイトありきの運用に比べて、より密接かつ身近なコミュニケーションを行えます。自社アカウントのフォロワーになってくれたユーザーに継続的に商品情報やブランドの魅力を発信し、愛着を持ってもらうことで、顧客を囲い込むことが可能です。
囲い込みが成功すれば、その顧客はリピーターとして再び商品を手に取ってくれる可能性が高まります。安定した利益が確保できるほか、リピーターによるファンコミュニティの形成にも期待できるでしょう。
またSNSのブランディングにもつながるため、競合の多いEC事業においても、価格以外の部分で他社との差別化を図ることが可能です。
ECの発展形として多くのメリットを持ち、これからますます注目を集めていくであろうソーシャルコマース。しかし導入に際しては、注意しておかなければならない点もあります。どのような留意点があるのか、確認しておきましょう。
一連の購買体験がSNS上で完結するソーシャルコマースにおいては、一方向に購入の場を設けていた従来のECとは異なり、企業と顧客との間でより密接な関係を築くことが求められます。
より多くのユーザーにフォロワーになってもらうためにも、商品だけでなくブランドや企業そのものの魅力を伝えるような情報発信を日常的に行わなくてはなりません。また利用するSNSの特性によっては文章だけでなく、目を惹くような画像や動画が必要になることもあります。その場合はひとつの投稿に相応の工数がかかるでしょう。
ソーシャルコマースにおいて、フォロワーの獲得は重要な課題です。そのためには質の高い投稿をコンスタントに行ったり、広告を出稿したりといった施策が挙げられますが、いずれも短期間ですぐに結果を出せるものではありません。
商品やブランドの認知を広めて収益を得るまでには相応の時間がかかります。SNSにアカウントを開設したらすぐに売上が上がる、というわけではないことは注意しておきましょう。
「新しい販売チャネルを作って販路を拡大したい」「従来のやり方を変えて新たな販売方法に挑戦したい」といった企業であれば、ソーシャルコマースはまさにうってつけの手法と言えます。またECサイト構築の手間を省いてスモールスタートで商品を販売したい、という場合にもおすすめです。
また若年層をブランドのターゲットとしたい場合にも、ソーシャルコマースは向いています。
総務省が発表した「情報通信白書令和3年版」によれば、2020年時点でのSNS利用率は13~19歳で86.1%、20〜29歳で90.4%となっています。SNSは広い世代に活用されていますが、中でも若年層に広く普及しているとことが読み取れます。
つまり若者が多いSNSをプラットフォームとして、ソーシャルコマースを実施することによって、より若い世代に自社商品やブランドをアプローチしやすくなるのです。ブランドのリニューアルなどで若返りを図る場合には、有効な手法と言えるでしょう。
各SNSが用意しているショップ機能を利用することで、簡単にソーシャルコマースを始められます。ただし日本では未対応となっているケースも多いため、そうした場合はSNSとも連携できる、商品管理や決済機能を備えたソリューションを導入するのがおすすめです。
たとえば世界的CPaaS「Vonage」が提供している「Vonage Social Commerce」は、SNSやWEBプラットフォーム上で動作するエンドツーエンドの対話型コマースソリューションです。AIによるチャットボットや有人オペレーターによるライブチャットで、顧客への接客から購入決済までの一連の流れを、すべてそのプラットフォーム上だけで実現できます。
企業側が一斉通知でSNS上に公開した情報に対して顧客がコメントすると、 AIが即座にメッセージの意図を理解して、商品の詳細説明などを自動で応答します。そして顧客から購入の申し入れがあれば自動的にカートへ誘導し、決済完了までをサポートします。商品の認知から購入までがSNS上だけで完結するため、顧客の高まった購入意欲を維持したまま、快適な購入体験を演出できるのです。
まとめ
本記事ではソーシャルコマースについて、基礎的な知識からこれからの展望についてご紹介しました。
日本ではまだ対応しているサービスも少ないソーシャルコマースですが、海外ではすでに大きな盛り上がりを見せており、市場規模も年々拡大傾向にあります。日本においてもスマートフォンやSNSの利用が当たり前になっている昨今、ソーシャルコマースはこれからますます注目を集めていくことでしょう。
自社サービスでソーシャルコマースを始める際には、ぜひ高機能かつ扱いやすいソーシャルコマースのソリューションを探してみてくださいね。